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マーケティングのはじめの一歩は消費者を理解することから。変化する消費者動向をとらえるためには仮説が大事。このブログでは消費者理解のための様々な仮説をデータに基づいてご紹介。商品開発・ブランディングのコンサルタントとして、あらゆる市場のイノベーションを目指して日々格闘している大久保惠司がお届けします。

「iPadおやじ」の研究 -データから見るペルソナ図鑑(8)-

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 先日発売された新しいiPad。「発売開始から最初の週末で300万台売れた」と言って話題になってました。iPadは全世界で5800万台以上も売れているヒット商品です。これだけ爆発的に普及した背景には、幼児から老人まで使えてしまうインターフェースの革新性があるのだと思います。でも、iPadを使っているシニア層ってどんな人なんだろうと思い、今回は50歳以上の男性iPadユーザーについて調べてみることにしました。(実は自分もその1人なんですけどね...)

【ホントにシニア層がiPadを買ってるの?】

 クラウド型消費者分析ツール「ぺるそね」でiPadユーザーを検索してみると、iPadとiPad2を併せて598人いらっしゃいます。「ぺるそね」の全サンプルが29,093ですから、約2%程度ということになります。ちなみにiPhoneユーザーは1,604人いらっしゃるので、だいたいiPhoneユーザーの三分の一というところですね。

 本当にシニア層が買っているのかを調べるために、iPhoneユーザーと年齢層の比較を行ってみました。50歳以上の比率を見てみると「iPad」が32.8%、「iPhone」が20.5%と、明らかに「iPad」の方がシニア層の比率が高いのがわかります。

 iPadとiPhoneユーザーの年齢層の比較
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 それでは分析のセグメントを決めましょう。iPadユーザー全体で598人のうち50歳以上は196人。男女比は男性が61.7%で121人、女性が38.3%で75人です。ちょっと数は少ないですが、50歳以上男性のiPadユーザー、121人を「iPadおやじ」としてアンケートデータから見ていきたいと思います。


【iPadおやじってどんな人?】

 職業は会社員がトップで28.9%。でも、会社役員は13.2%で男性全体の3.7倍、自営業は19.2%で1.8倍、自由業は6.6%で1.9倍です。この三つを併せると38.8%で会社員よりも多くなります。大企業の管理職というよりも自分の裁量で仕事をすることができる人達のようです。

 iPadオヤジの職業 
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 約78%が既婚で平均世帯年収は838万円。男性全体の611万円を大きく上回っています。ちなみに50歳以上男性の平均は682万円で、これも大きく上回っています。4人に1人が世帯年収1000万円以上という所得の高い層です。

 買い物はデパート、百貨店を利用し、家電量販店にはよく行きます。男性全体と比較し倍率の高い趣味は、「写真(2.1倍)」「海外旅行(2.3倍)」「D.I.Y(2.2倍)」「料理(1.8倍)」「園芸・ガーデニング(1.5倍)」「アート鑑賞(2.7倍)」「コレクション(2.2倍)」「音楽演奏(1.6倍)」。

 プレイするスポーツはウォーキング、ゴルフ、水泳、サイクリングと続きます。年齢からか、ジョギングをする人の比率は低くなります。男性全体と比較し特に高いのは「水泳(2.1倍)」「テニス(2.2倍)」「スキー(2.2倍)」です。テニス、スキーは若い頃から馴染んできたスポーツかも知れません。

 休日には自宅で手の込んだ料理を作り、ちょっとした運動もかねて、デジタル一眼のカメラを持って散歩したり、昔のバンド仲間と集まって往年の名曲をライブで演奏する、なんていう生活が見えてきそうです。

 ソーシャルメディアを利用している人の割合はだいたい半数です。この人達の中で最も利用されているのは「facebook」でした。「facebook」は男性全体と比較し2.5倍の利用率です。「Twitter」「mixi」は男性全体と大きく違いはありませんでした。


【その消費行動は?】

 消費価値観は「できるだけ周りの人とは違うものを持ちたい」と思い、「新しく出た商品は実際に買って、いろいろ試したい」と考えている人達です。だから、情報にも敏感で新商品の情報はまめにチェックしています。当然iPadはそのおめがねにかなったということですね。

 目指すセルフイメージは「品性がある」「自由な」「粋な」「信念がある」「飾らない」などが目立ちます。関心のあるカテゴリーは「デジタル家電」が最も高く、「携帯電話」「自動車」などが続きます。逆に「ファッション」への興味は全体よりも低く出ています。よく行くお店は「ヨドバシカメラ」「ビッグカメラ」「東急ハンズ」「コーナン」「カインズホーム」などが特徴的です。

 所有している携帯電話ですが、「iPadおやじ」の4人に1人が「iPhone」ユーザーです。これ、多いのか少ないのか悩むところです。半数が「iPhone」ユーザーと言われても不思議はないのですが、そこまで高くはありませんでした。むしろ3人に1人が持っている「iPod Touch」の方が高くなっています。

 写真が趣味という人が多い中、デジタルカメラはどうでしょうか。全体と比較し3倍以上の機種を挙げると「Dシリーズ/ニコン(3.1倍)」「ライカ(8.9倍)」「オリンパス・ペン(3.6倍)」などが目立ちます。

 クルマは「プリウス」がダントツです。以下「レクサス」「フィット」「ティーダ」「オデッセイ」「ゴルフ」「エクストレイル」「ノート」と続きます。「レクサス」を除くと高級車志向は見られません。この人達はクルマで威張るということを考えない人達です。もしかするとテクノロジー志向が高いのかもしれません。私見ですが、電気自動車がもう少し一般化してくると、この人達が真っ先に購入する可能性が高いような気がします。

 それほど関心が高くないファッションですが、若い頃からの定番をベースに選択されているようです。「バーバリー」「ラルフローレン」「リーバイス」「リーガル」などがお気に入りです。また、「ノースフェイス」や「エディーバウアー」などのアウトドアブランドも好みのようです。バッグは「吉田カバン」時計は「G-Shock」「タグホイヤー」「オメガ」などが上位に来ています。いつものようにペルソナ・イラストをアップしますので、ご参照下さい。

 ペルソナ・イラスト
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 50歳以上の男性iPadユーザーをデータから見て参りましたが、年齢層の割にはデジタルに対する興味が高く、相当な情報通である印象を受けました。今後、若い人よりもデジタルに詳しいオヤジたちが増える前兆かもしれませんね。年収や地位が高い割にはあまり威張ったところがなく、多趣味で、興味を持ったモノやコトに対して入れ込んでいくところがあるようです。そうそう、付け足しになってしまいますが、この人達のお気に入りの女性タレントは「黒木メイサ」さんがダントツでした。ランキングではトップで男性全体と比較し支持率が2.4倍でした。なんとなくわかるような気がします。

さて、「iPadおやじ」いかがでしたでしょうか?次回はもう一回アップルネタで行きたいと思いますので、どうぞお楽しみに...


*データは全て2011年9月「ぺるそね」調べ。n=29,093
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