グローバル化する中で日本人はどのようにサバイバルすればよいのか。子ども×ICT教育×発達心理をキーワードに考えます。

子供たちが使う「学習者用デジタル教科書」の機能とは

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当「教育ICT研究室」では、教育現場でご活動なさっているみなさまに役立つ情報を提供したいという想いがあり、理科を担当されている望月陽一郎先生(中学校教諭)に「主体的・対話的で深い学び」を実現するための取り組みを取材しています。

いよいよ6月になりました。だんだん蒸し暑くなっている中、小・中・高等学校では運動会(体育大会)の準備でお忙しいのではないかと思います。今回(第22回目)は教育ICTの原点に立ち返り、

  • 学習者用デジタル教科書にあるとよい機能
  • 学習者用デジタル教科書に必要な機能

を中心に伺ってみたいと思います。

【望月陽一郎 先生・略歴】
大分市 中学校教諭(理科担当)。大分県教育センタ- 情報教育推進担当主事、指導主事、大分県主幹等を経て、現職。https://www.facebook.com/yoichiro.mochizuki/aboutを参照。

●英語教室(English Class)の補足について

-前回の英語教室については全国的に反響がありました。読者のみなさまに追加でお話しいただけることがありましたら教えてください。

【参考】
▼英語教室(English Classroom)の設置とICT活用
http://blogs.itmedia.co.jp/kataoka/2017/05/english-classroom-ict.html

望月先生:英語教室の掲示物(たとえば世界地図や世界各地の旅行パンフレットなど)や新しい機器(短焦点プロジェクター)をそろえていっています。理科室に理科に関するものを掲示したりするのと同じですね。こういうところは共通するものです。

教室既設のスクリーンに提示しやすくする(子供たちの席の間にプロジェクターを置かなくてよい)ための「短焦点プロジェクターの使い方」は、他の学校でも参考になるかと思います。使い始めたら紹介しますね。

-なるほど。英語教室の環境整備が進むと、子供たちも英語の授業に行くのが楽しくなっていきますね。

望月先生:また、先日のインタビュー記事「英語教室の設置とICT活用」についてのリンクを、CONTETでも紹介しました。ポータルに参加している先生はそこで感想をいただけるとありがたいですね。

▼CONTET 教育情報共有ポータルサイト(全国の先生方をつなぐポータルサイト)
https://www.contet.nier.go.jp/

望月先生、補足とまとめをありがとうございます。CONTET(教育情報共有ポータルサイト)にいろいろな情報があるのですね。

●学習者用デジタル教科書とは

-さて、今回のメインテーマである「学習者用デジタル教科書の機能」についてお話しいただけますか。

望月先生:まず、混同されている方や勘違いして記事を書かれる方がいるので整理を

・指導者用デジタル教科書・・・提示用の「デジタル教材」。有償で数万円ほど。いわゆる教科書のことではない。PCやタブレットから大型テレビやプロジェクターに投影して使用する。

 必要なもの・・・デジタル教科書のライセンスやデータ
         インストールするためのPCやタブレット
         大型テレビやプロジェクター
         (クラウド型であれば、有線・無線LANからインターネット接続環境)

・学習者用デジタル教科書・・・子供たちが「教科書」の代わりとして使用するもの。これからは紙の教科書(国が買い上げ無償給付)と併用することができるようになった。デジタル教科書は有償(自治体などが負担とされるようである)。個人ごとのPCやタブレットにインストールなどして使用する。

 必要なもの・・・デジタル教科書のライセンスやデータ
         インストールするためのPCやタブレット
         (クラウド型であれば、有線・無線LANからインターネット接続環境)

 これまでは、学校ごと・自治体ごとに「指導者用デジタル教科書」を購入し授業で使っているものの、すべての学校で使われているわけではなく、どちらかというと少数の学校で使用され改良が進められてきた感じです。

 「学習者用デジタル教科書」を使うには、子供たち一人一人の端末が必要なこともあり、全国的に見てもまだ実験・試用段階に近いといえますね。

-確かにこの違いを踏まえてから話を始めないといけませんね。

●紙の教科書の使い方からデジタル教科書を考える

望月先生:デジタル教科書について考えるには、紙の教科書について考えていかなくてはなりません。理科の授業で子供たちがどう使っているかを見ていくと、

タブレットから大型テレビに提示して大切なところを説明する場面
 ・・・子供たちは自分の紙の教科書にチェックを入れている。
 ・・・ところが、「どのページにチェックを入れたのか」それを探すのに困っている
子供が少数見られる。

そこで今年度当初から始めてみたのが、「付箋」を使うポートフォリオです。
・「付箋ポートフォリオ」・・・理科室のグループ机ごとに付箋を配布。
            ・・・どこにチェックしているかわかるようにしたいとき付箋をつける。
最初は私が付箋を配布していましたが、最近では「付箋配ります」授業終わりには「持ってきました」と、授業の中で定着したのがわかります。

「紙の教科書の使い方」で有効であれば、こういう機能が将来的に「学習者用デジタル教科書」にあるとよいということになると思うのです。

-付箋はアナログ(物理的に存在する紙の付箋)だったのですね。デジタル教科書内の付箋のことかと思っていました。

望月先生:リフレクションシートの感想からは、

  • もう少し太いほうがよい(細めの付箋なので)。書き込みもできるから。
  • もっと別な色があるとよい。
  • かわいい付箋がよい。やる気が出そう。
  • 紙の付箋よりプラスチックの付箋がよい。紙だとちぎれてわからなくなることがあるから。

などがあり、子供たちがいろいろなアイデアを出してくれました。

授業の様子を整理すると、

  • 教科書画像を拡大して大切なところを示す。
    (ポイント1:子供たちの手元にあるものを示すとよい)
  • 板書はまとめ・構造化するところだけにする。
    (ポイント2:考える時間の確保ができる)
  • 教科書のどこにチェックしたか、付箋をつけさせる。
    (ポイント3:付箋を自分でつけることで、見直しできるようになる)

提示(デジタル)、チェック(アナログ)、付箋(アナログ)というハイブリッド活用です。こうして見ていくと、単に「動画を組み込める」とか、「意見を共有できる」とか従来から言われているいかにもデジタルという機能でなく、子供たちが「自分で教科書を活用できる」機能を学習者用デジタル教科書に装備できると思います。

子供たちが使いやすい教科書の使い方から考えた「学習者用デジタル教科書」に必要な機能

・先生が提示するものと自分が持っている教科書画面が「同じ」であること。
・大切なところに「マーキング(線を引いたり、囲んだり)」できること。
・どのページに大切なことを書き込んだか、「付箋をつける」ことができること。
 ・・・いろいろな色、付箋に書き込み、かわいいキャラクター

これらがあると、紙の教科書と同じように使える「学習者用デジタル教科書」になるのではないかと思うのです。

-追加の解説をありがとうございます。とても助かります。以前、望月先生にお話を伺いました「教育現場における『提示の工夫』」「板書・教材提示のバランス」(リンク参照)とも関連する内容ですね。

---以下以前の記事より(抜粋と望月先生の補足修正)

-iPadを使って、どんなものを見せているのか、教えていただけますか?


望月先生:特別なデジタル教材は使っていませんし、作っていないのです。これがポイ
ントですね。ICTを活用するのに時間がかかるという誤解を受けやすいのは「デジタ
ル教材の作成は大変」というところから来ていることが多いのです。

私は、教科書・ワークシートの拡大(ハンディスキャナでなぞったりそのまま撮影
したりした画像)を主に使っています。以前紹介したEpson iProjection(現在はPanas
onic wirelessPJ) というアプリで画像さえあれば書き込みができますから。その場で
撮影してもすぐ使えます。

なぜ教科書の画像を使うかというと、子供たちは現在タブレットやデジタル教科書
を持っていないので、「特別な教材を準備」するよりも、子供たちの手元にあるものを
大きく映して教材として使う方がとてもよいようです。授業のリフレクション(振り返
り)でもよくこのことを書いてくれますね。

-なるほど。「子供たちの手元にあるものを大きく映して教材として使う」のが、子供
たちにとってよい理由がわかりました。時間をかけて細かく作られたデジタル教科書や
アプリ、動画などがよいと思っていました。

望月先生:動画は教科書にはないものですし、べつに映して見せた方がよいと思います
よ。
※以上、http://blogs.itmedia.co.jp/kataoka/2015/01/post.html を補足修正

補足いただき、ありがとうございます。以前紹介した子供たちのリフレクションシートでの感想にも、関連するものがありましたね。以下、リストを再掲します。

【子供たちの感想(多い順)】

・教科書を大きく映して、大切なところを示してくれわかりやすかった。【教科書】
・教科書をズームしてくれたのでわかりやすかった。【拡大】
・ 印をつけてくれたりしたことで、後からでも振り返りやすかった。【振り返り】
・ただ言葉で聴くだけではわかりにくいので、画面があってよかった。【理解】
・理科室の後ろからでも見やすかった。【見やすさ】
・図形などで説明してくれたのがよかった。【図示】
・画面に集中できた。【集中】
・短時間で説明してくれたのがよかった。【効率化】
・実験の説明のとき、道具の写真に直接書き込んで説明してもらえるのがよかった。【
説明】
・教科書以外の資料も見やすかった。【資料】
・その場で写真を撮って見せてくれたのがわかりやすかった。【撮影】
・教科書・ノートに記録しやすかった。【記録】
・苦手なグラフが、画面だとわかりやすかった。【グラフ】
・オシロスコープの大画面がわかりやすかった。(アプリ)【表示】
・前で先生がやっていること(実験)が見やすかった。【距離】
・画面が明るく見やすかった。【見やすさ】
・いつも出してくれている大きな時計(アナログ)が便利だった。【時間】
・授業がスムーズに進んだ。【スムーズ】
※以上、http://blogs.itmedia.co.jp/kataoka/2017/03/presenting.html より引用。

-実際に使う子供たちの活動から、「紙の教科書の使い方、よいところ」を学習者用デジタル教科書に活かしていけると、さらによいデジタル教科書ができてくるとうかがわれます。今回もお忙しい中、ありがとうございました。

●おわりに

今回は、前回の「英語教室(English Classroom)」についての補足と「デジタル教科書にあるとよい機能」についてのお話を伺いました。

デジタル教科書が導入され始めた当初は、iBooks上などで動画を組み込んだデジタル教科書が注目を浴びていた時期もありましたね。私もデジタル教科書のメリットは、たとえば展開図を動的な表現で説明できるなど、アニメ的なところが良いのかしら?と思っていたことがありました。

5月から6月は体育大会が開催される学校が多いのではないかと思います。暑い中、体育大会練習のために一日中野外でご活動されている先生方は肉体的にも精神的にも大変だと思います。厳しい気候の中、インタビューにお答えくださった望月先生、記事を読んでくださった皆さまに感謝の気持ちでいっぱいです。大変ありがとうございました。

●参考記事

先導先生 - DiTT(デジタル教科書教材協議会)
※望月先生の45の取組みが紹介されています。

教育情報共有ポータルサイト
※[片岡による補足] Contet(コンテット/教育情報共有ポータルサイト)では、幼稚園から高等学校・特別支援教育に加えて、キャリア教育や学校経営・教員の資質の向上まで幅広い情報が公開されています。

●まとめ記事

今までに取材した「授業でのICT活用のポイント」「学校でICT機器を活用する時のポイント」「教材作成時に気をつけたい著作権の問題」などについては、以下の記事にポイントをまとめました。ぜひご参考にされてくださいね。

第16回~20回目のインタビューは下記のURLからご覧いただけます。

▼アクティブ・ラーニング(子供たちが学びに向かう姿)の視点からの授業改善(その1)
https://blogsmt.itmedia.co.jp/kataoka/2016/06/active-learning.html

▼アクティブ・ラーニング(子供たちが学びに向かう姿)の視点からの授業改善(その2)
https://blogsmt.itmedia.co.jp/kataoka/2016/07/active-learning.html

▼アクティブ・ラーニング(子供たちが学びに向かう姿)の視点からの授業改善 学期末の子供たちの感想編
http://blogs.itmedia.co.jp/kataoka/2016/08/active-learning.html

▼リフレクションシートから見る「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」の視点
http://blogs.itmedia.co.jp/kataoka/2017/01/reflection-sheet.html

▼「主体的・対話的で深い学び」を促すための「板書・教材提示のバランス」
http://blogs.itmedia.co.jp/kataoka/2017/03/presenting.html

▼英語教室(English Classroom)の設置とICT活用:教育ICT研究室
http://blogs.itmedia.co.jp/kataoka/2017/05/english-classroom-ict.html

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