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グローバル化する中で日本人はどのようにサバイバルすればよいのか。子ども×ICT教育×発達心理をキーワードに考えます。

Scratch(スクラッチ)とViscuit(ビスケット)で小さい子どもが楽しくゲーム・プログラミングできる

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まだ小さい子どもが楽しくゲームを作る事は可能なのか?

私は現在、月4回ほど、NPO法人で子供たちにパソコンを教えています。小学生から大学生に相当する年齢の方まで、幅広い世代の方が習いにいらっしゃいます。

ゲームを作りたいという方が多かったので、最初は子ども向けのプログラミング学習ソフトとして「Scratch(スクラッチ)」を活用していました。ステージにネコのイラストなどを置き、各オブジェクト(イラスト)ごとに命令を追加していきます。

参考:Scratch 創造・プログラム・共有
http://scratch.mit.edu/

教育用プログラミング環境「Scratch」は、命令文が書かれたブロックのようなものを処理の順番の並べていくと処理を実行できます。アルゴリズムを自分で考えるスキルは必要です。

とはいえ、英文でプログラミングをする必要がないので、子供向きではないかと考えました。Scratchでどのようにゲームなどの作品作成を行うのかは、以下の動画をご参照下さい。

公式サイトでは、Scratchで作成できる成果物はゲームだけではない、と説明しています。

Scratchは、対話的な物語やアニメーション、ゲーム、音楽、アートなどをあなた自身が簡単に作ることのできるプログラミング言語です。そしてそれらの作品はWebで共有できます。

子供たちがScratchの作品を作って共有する時、あるいは創造的に考え、体系的に推論し、協力して作業することを学ぶ間に、彼らは重要な数学とコンピュータのアイデアを学びます。
http://info.scratch.mit.edu/ja/About_Scratch より引用

Scratchでゲーム作成をすることができます。そして、以下のチュートリアルのように、アニメを作成することもできます。

例:TUTORIAL THE ANNA WAY.
プロジェクト本体は、http://scratch.mit.edu/projects/Palindromee/2565779からダウンロードできます。

英語でプログラミングを書くのには抵抗がある子も、スクラッチの画面に表示される命令文を選んで、アルゴリズムを組み立てる行為は楽しそうに見えました。

"本当の意味でコンピュータリテラシーがあるというのは、つまりプログラミングができるということだ"

@ITの記事によると、アラン・ケイ博士は、以下のようにおっしゃっているそうです。

本当の意味でコンピュータリテラシーがあるというのは、つまりプログラミングができるということだ――。"パーソナル・コンピュータ"という概念の生みの 親で、先進的なプログラミング言語「Smalltalk」やGUIというインターフェイスの開発者としても知られるコンピュータ科学者のアラン・ケイ博士 は、そう言い切る。コンピュータに囲まれて育ったわれわれの子どもたちは、コンピュータリテラシーを持つ初めての世代になるだろう、と。
http://www.atmarkit.co.jp/news/200801/17/mit.html より引用

日本では教育の基本として必須なのは、「読み・書き・そろばん」と言われていました。しかし、新しい技術だったプログラミングが、今は子どもが学校などで普通に行う時代に移り変わりつつあるようです。

Scratchの推進を行なっている、MITメディアラボのミッチェル・レズニック教授は、以下の様に述べています。

1月17日に東京で行われたMITメディアラボの研究成果発表の場に登場したレズニック教授は、現在教育が抱えている大きな問題の1つはカリキュラムや教材が前世紀初頭の古い社会を前提としていることにあると指摘する。現在、経済成長を支えているのは金融革命にしろITやバイオ、ナノテクなど技術分野にしろ、知的なイノベーションだ。しかし学校のカリキュラムは相変わらず知識偏重のままで、知的創造の訓練はない。むしろ、ブロックを組み替え、絵を描き散ら して遊んでいる幼稚園児たちこそが、理想的な学習をしているのだという。
http://www.atmarkit.co.jp/news/200801/17/mit.html より引用

私はレズニアック教授のご意見同様に、「知的創造の訓練」は必要と考えております。そのため、Scratchの活用は子供たちにとって良いのではないか、と考えていました。

しかし、小学生のなかでもScratchを楽しめるお子様と、難しいと諦めてしまうお子様と、両方タイプの方がいらっしゃいました。

小さいお子様も手で書いたイラストをデジカメで撮影して、自分でパソコンに取り込むことはできます。しかし、まだ小さい子供たちが自分で考えたゲームのストーリーをアルゴリズムに組み立て行く行為は、難しいご様子です。

筆者は「まだ小さいお子さんが、楽しくゲーム作成をすることはできないか。しかも、結果的にアルゴリズムを考える力も身につくと良いのだが。」と考えていました。

小学校低学年の子どもも「Viscuit(ビスケット)」ならばプログラミングで遊ぶことができる

2012年3月26日に行われた「デジ教研」では、筑波大学の久野靖 先生が様々な子供向けプログラミング言語の紹介をされていました。その中で紹介されていたのが、今回ご紹介する「Viscuit(ビスケット)」です。

プログラムは難しい英文で書かれているのが一般的ではないか、と私見では思います。そのため、英語の理解は伴わなくても「この言葉はこの命令を実行できる」と文の意味を理解しながら命令を入力する必要があります。

日本語でプログラミングが可能な言語として、「なでしこ」が存在します。ですが、基本的には英文でプログラミングする言語が多いのではないでしょうか。

一方、Viscuitは「めがね」のイラストの中に絵を描き、実行するだけで様々な処理を内包したアニメーションを作成できます。

開発者の原田さん(NTT研究所)は、Viscuitについて以下のようにご説明をされています。

ビスケットとは

コンピュータは、プログラムで動いています。普通、プログラムは難しい文字で書かれているので、文字―つまりコン ピュータ用の専門の言語を覚えないと作れません。ビスケットは絵でプログラムを作り、実行すると絵が動きます。難しいことを覚えなくても、プログラムの楽しさを知ることができるのです。ビスケットを使うと、アニメーション、ゲーム、動く絵本などを簡単に作ることができます。

「めがね」がプログラム (車が前に進む,という意味)の基本となり、「変化」の仕方をコンピュータに教えます。ビスケットは基本的にこのめがねで全ての動きをつくります。一見単純そうなうごきしかできないように感じますが、実はいろいろな動きをつくる事が可能で、無限の可能性を秘めているツールなのです。
http://www.viscuit.com/index.php/___1/about/ より引用

一見アニメを作っているだけのように見えます。しかし、実はプログラミング言語です。

3/25の,「みんなのデジタル教科書教育研究会」で,久野さんにビスケットを紹介していただいた.その中のスライドの一部分.

素朴な疑問:これ(ビスケット)がプログラミング言語と言えるのか?

YES.プログラミングの本質は「ある規則に従って自動実行」であり,ビスケットの「めがね」がやっていることはまさにそれ

この説明は,非常に正しい.しかし,僕はここでもう少しつっこんでこれを議論したい.
http://blog.goo.ne.jp/viscuit/e/94e5c25fc6aab6f988d56eb4104ea976?fm=rss より引用

日本人がScratchに匹敵する教育用プログラミング環境を開発していたのは、嬉しい驚きでした。

私見ではviscuitの特色である

  • アニメーションを作成することがプログラミングにつながっていること
  • 低年齢の児童にもプログラミングが可能なこと

は、アラン・ケイ博士が発言された「コンピュータリテラシー」を高めるために、必要な要素を備えているのではないか、と考えました。そこでViscuitについて、別記事でさらに考察をしたいと思います。

>>「小学生教育とビジュアルプログラミング言語「Viscuit(ビスケット)」の可能性 入門編」に続く


編集履歴:2012.12.5 0:14 題名を「小さいお子さんでも大丈夫! たのしくプログラミングできる「Scratch(スクラッチ)」と「Viscuit(ビスケット)」」から「Scratch(スクラッチ)とViscuit(ビスケット)で小さい子どもが楽しくゲーム・プログラミングできる」に変えました。2013.12.20 20:51 記事の後半部分を別記事「Scratch(スクラッチ)とViscuit(ビスケット)で小さい子どもが楽しくゲーム・プログラミングできる(後編)」として公開しました。題名に(前編)を付けました。2015.6.15 23:01 前編・後編に分割した記事を再統合。本文から、「>>「Scratch(スクラッチ)とViscuit(ビスケット)で小さい子どもが楽しくゲーム・プログラミングできる(後編)」に続く」「Scratch(スクラッチ)とViscuit(ビスケット)で小さい子どもが楽しくゲーム・プログラミングできる(前編)」の続きです。」「ませ」「特に低学年の子どもになりますと、短冊状の命令文を並べてアルゴリズムを組み立てる事はまだ難しいようです。」「以前、ご紹介したアルゴロジックのように、青少年の世代のロジカルシンキング、アルゴリズムを考える力を育てるゲームがあることもすごい時代になったと思います。加えて、」「男性の場合は、自分でゲームを作りたいと言うご希望が非常に多いです。就職を考えている方はWordやExcelの資格取得を目指されます。ですが、趣味・居場所として遊びにパソコンを習いに来ている方のほうが多いかもしれません。」「、かつては」、題名から「(前編)」を削除。句読点を追加。「が、」→「ですが、」、「なんです」→「です」、「は」→「が」、「場合」→「の」、「にも」→「が」、「筆者」→「私」、「あるのではないでしょうか」→「あります」、「されていたことも」→「していたのは」に、「ですが、」→「しかし、」修正。本文に「プログラミング言語として」を追加。同日23:50 見出し「"本当の意味でコンピュータリテラシーがあるというのは、つまりプログラミングができるということだ"」、本文に「例:」を追加。

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