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仕事に絡んだ四方山話などを徒然にと思いつつも、読んで興味深かった本ネタが多くなりそうでもあります。

【ブックトーク】本の読み方、、徒然に。/『読書の技法』

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 ちょっと前に「読書の成果」についてなんとなく考えてみましたが、今回は「読書の仕方(本の読み方)」について徒然に。私自身「本を読む」のは好きですが、ジャンル的なこだわりは無く、ビジネス書から小説、ノンフィクション、マンガ、写真集等々、なんとも乱読な感じです。

 そんな状態なこともあってか、今までは「本の読み方」についてあまり意識したことはなかったのですが、、この雑然とした読書習慣に一石を投じてくれたのが、こちらになります。

 『読書の技法』(佐藤優/東洋経済新報社)

 月間平均で300冊、多い月は500冊以上の「本」に目を通されるという元外務省情報分析官・佐藤優さんが、ご自身の読書術についてまとめた一冊です。“本書を通じ、読者に、読書の有用性について訴えたかった。”とされて、自分にとっての利益(功利)となる「情報」を得るための技法を丁寧に述べられています。

 「読書」の目的は、好きだから、調べることがあるから、暇つぶしの一つ、話のネタに等々、様々あると思います。ところが、今までの私はどんな本であっても同じような読み方で、その目的まではあまり意識していませんでした。

 こちらを読んで、確かに目的によって“読み方”を変えていかないと時間がいくらあっても足りないな、と目からウロコでした、、どうにも積読本が溜まるわけです(汗

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※ウチの積読本です(2013年8月15日時点)

 で、その技法、具体的には「超速読」、「速読」、「熟読」の3つに分け、限られた時間を有効に活用するように使い分けていくことが大事としています。個人的には、その先にある「教養」を持つことの大事さまでも感じさせてくれるのが、さすがだなとも。

 貧乏性な私はどうしても全てを目に通したくなるのですが、この3つの切り分けはとても興味深く、いい刺激になりました。佐藤さん曰く“そこそこに読解力のあるビジネスパーソンであっても、月に熟読できるのは精々3-4冊とのこと”で、こうなると精読する対象は自然と絞っていかざるえなくなります。

 まずは「自分にとっての重要性を判別するための“超速読”(5-10分)」で自分にとって有益かどうかを判断し、その上で「概要だけ抑えればいいとのであれば“速読”(30-60分)」、反対に「自分にとっての「基本書」になる一冊であれば“熟読”(3-10日)」と進めてはどうかと提案されています。

 私自身、ここ最近は情報サービス学に関連する学術系の書籍を読む必要も増えていて、とても参考になりました。全てをコッテリと読んでいたら、とてもではないですがアウトプット(論文等)まで持っていけないなくなってしまいますから。

 もう一つ興味深かったのは、どのような形であれインプットした「情報」について、“テーマを決め、週に1回書評の会合を行う”とアウトプットする事を推奨されている点でしょうか。一冊の「本」に対する解釈を比較してもいいでしょうし、一つの「テーマ」に対するアプローチを様々な本を題材に比較しても面白いでしょう。また、日々の生活の中で感動した本をネタにふんわりと「雑談」するのも、楽しそうです(というか楽しいです)。

 これは私自身も、普段お世話になっている「東京朝活読書会(通称・エビカツ読書会)」などで「成果」として実感していることで、「読書へのモチベーションの維持」「プレゼンテーション能力の向上」「コミュニケーション能力の向上」などの効果が得られているなぁ、とも。

 自分の頭の中ではモヤっとしているコトも、外に伝えようと意識するだけで、意外なほどに整理されていくと思います。佐藤さんの言葉をお借りすれば“(知識が)発酵されてインテリジェンスになる”といった感じでしょうか。そしてそれらを支えるのは「教養」であるともおっしゃっていて、これまた納得です。

 そして「優れた情報専門家はすべからく読書好き」とのトピックも印象的でした。ビジネスの延長で雑談をするには、専門分野とは全く別の“歴史書や哲学書、さらに小説など、意外な本を挙げる必要がある”そうです。その上で、この意外な「本」がどこかで仕事につながることもあるとかないとか、、

 本棚を眺めれば持ち主の人柄を推し量れるとも言いますし、そうやって「深いつきあいができるかどうかの判断材料」にしてるのでしょう。確かに「座右の書」は、その人の心根を投影していると感じることも多く、今後の人間観察の技法の一つにしてみるのも面白そうですね、なんて。

 そんなことを考えると、この先ますます広がっていくグローバル社会に適応していくには、自分の軸(プリンシプル)となる「教養(liberal arts)」を身につけることは必須になるんだろうなぁ、と思います。そして、それらを涵養する手法として「読書」もまた、どの世界に身を置いても大事になってくる習慣であり、技法となってくるのではないかと。

 「本を読む」のは思ったよりも「体力」がいります、精神的に肉体的にも。しかしその積み重ねを続けることで、知識は知恵として昇華され、佐藤さんが言うところのインテリジェンスとして醸成されていくのでしょう。もちろん、世界観にたっぷりと浸りこんでいく「楽しい読書」も大事ですし、「読み進める力」を育てるのには乱読も必要になると思います。

 それでも、本を読む目的に沿って読み方をイロイロと変化させていきましょうというのは、思った以上に新鮮でスルッと入ってきました。今後、自分の外の世界と伍していく力を身につけるにはどうすればよいのか、そのためのヒントをくれる、そんな一冊です。

【あわせて読んでみたい、かもな一冊。】
 『子供の教養の育て方』(佐藤優&井戸まさえ/東洋経済新報社)
 『本の運命』(井上ひさし/文春文庫)
 『寝ても覚めても本の虫』(児玉清/新潮文庫)
 『母なる海から日本を読み解く』(佐藤優/新潮文庫)
 『現代語古事記』(竹田恒泰/学研)

【補足】
 こちら、実は前にまとめたものの改訂となりまして、オルタナへの応募用原稿の一つとしても使ったものになります。せっかくですのでリサイクルしようと思い、若干手を入れて再掲してみました。私自身、本を読むことは日常の習慣化にもなっていて、大体月平均で30-40冊ほどは手に取っていますが、、月で500冊は文字通りに目が点になりました。。

 本の読み方を題材とした「情報」の取り方と、そこからのインテリジェンスへの昇華の仕方へとつなげていくのは、まさしく「自己を構築」していくための技法の一つと思います。そして、そうして得た情報のアウトプットの場で日常では接点の少ない異業種・異業界の方と触れ合うことは、自分とは違った価値観を知ることができるとの点でも魅力的です。

 そこからの「自己の考え方の深更」「他者の考え方の吸収」「多様性の再認識」との効果は、自己の成長を促してくれるでしょうし、そういった意味では「生涯学習」の発露でもあって、教養の涵養ともつながっていくのかなと。なお、教養は“地頭”との言葉で読み変えることもできると考えています。

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