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高校卒業直後にアメリカの全寮制高校に飛びこみ、文化、言語、価値観、人間関係、そして勉強で七転八倒しつつ適応していった、5年間の留学生活から学んだレッスンを、具体的エピソードを交えて紹介。

留学生が陥りやすい、「自分探し」トラップの発生メカニズム

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「自分探し」


賛否両論ありそうな単語のひとつですが、みなさんの反応はいかがですか?
外国は母国より自分が見つかりやすい場所なのでしょうか、留学中、年間2~3名ほど実践中の人に出会うことがありました。


私はどちらかというとネガティブな反応をしてしまうのですが、自分探しをしたくなる心理は痛いほどよくわかります。なぜなら、私も探したく感じたことが、何度かあったから。特に海外で生活していると、その誘惑は強烈です。



今回は過去の記憶をさかのぼって、「自分探し」の発生メカニズムについて書いてみます。


自分探しは、(たぶん)こんな感じで発生します。

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1.環境を変える(とくに住環境)
2.刺激が増す
3.自分の深層心理とか潜在パワーだと思い込んでいる何かと刺激が化学反応を起こす
4.想像を越えたすばらしい化合物ができあがる
5.探していた自分の誕生
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しかし、経験上わかったことですが、落とし穴が2つあります。



1.刺激は最初だけ
新鮮な海外生活も、目新しいのは3ヶ月まで。でもって、お客さん扱いをされるのは2週間まで。映画のようなハプニングの連続はないし、衣食住もすぐ慣れます。ブロンド美女(or イケ面)だってそうそういない。日々の生活を粛々と行っているのは日本も異国も同じ。つまり、時間が経てば経つほど刺激が薄れる寸法です。



2.ポテンシャルの過大評価
自分を含め、人間誰しも自分を過大評価する一面があると思うのですが、根拠なく「オレ(ワタシ)はすごいポテンシャルがある」と思い込むフシがあります。僕はアホなので、そう思うときがあります。ポテンシャルという言葉は甘美な響きがあり、心をゆだねたくなりますが、あまり過信しないほうがいいと思います。



誤解を恐れずに言えば、「自分探し」はつまるところ、積極的な逃避、あるいは活動的な時間稼ぎでしかないです。


留学時の経験で話すと、自分探ししている人って傍から見るとすげー大変で、いばらの道を歩んでいるようで、実は苦しくもなんともないんです。むしろ、楽しくてラクな行為なんです。そういう人は例外なく目がキラキラ輝いていて、こっちの心が弱いときにそういう人に会うと、心底うらやましくて、「オレもなんかよくわからないけど、なんかをどこかで探してぇ・・・こんなクソ田舎の学校とっととオサラバしてぇ・・・!」という衝動に駆られるのです。


「自分探し」に時間制限はないし、目標成果はないし、若干羨望のまなざしを受けて気持ちいいし、なんといっても「大義名分」があるから誰にも批判されない。だから厄介。

自分探しトラップの怖さは、そんなとこにあるのではないかと思うわけです。


ちなみに、その後探していたものが見つかった報告は一件もありません。



じゃあ、トラップを避けるにはどうするかって話ですが、それはまた別の機会に。


つづく



代表 中山順司
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