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「共創」や「コンサルティング営業」などとかっこいい言葉をお題目に掲げても営業力は強化できない

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「うちの社員は、競合のことを意識していないし、知らなすぎる。それではいい提案などできるはずがない。」

あるITベンダーの経営者から営業研修のご相談を頂いたとき、こんな話しをされた。かれは、競合を知れば、それを参考により魅力的な提案ができるはずだと主張する。これに、私は次のように申し上げた。

「競合を知ることは大切ですが、それは戦術の話しです。それ以前の話しとして、その提案そのものが、お客様が是非とも採用したいと思わせる内容なのかどうかが大切ではないでしょうか。」

彼らの提案を拝見したのだが、書かれているのは機能や性能の説明であり、何ができるかしか書かれていない。コスト削減や人件費の削減といったありふれた効果の説明でしかない。確かにこのような提案であれば、競合他社の提案を知り、それよりも安い見積をつければ採用されるかも知れないが、それでは利益も出ないし、なによりもお客様の信頼を得ることは難しい。

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昨日、あるイベントでRPAの提案事例について話しを聞いた。発表者は大手スーパー・マーケットを担当しており、毎週11万枚の大量の手描きによる書類を手作業で入力していたのだが、これをOCRで読み取ってRPAで入力することで、膨大な時間をかけていた作業を半分に短縮できることを実証実験の成果として報告した。そして、これを大成功と思っていたら、結局は採用されなかったという。それは、現場の反対だった。

自分の仕事がなくなることややり方が変わることへの不安、そして、どうせ半分程度の削減なら、いままで通りのやり方でもたいして変わらないという理屈だった。

その時の反省を踏まえ、同じ会社でのリベンジ提案をしたという。この会社では毎週の発注に必要な紙の伝票の入力作業に500時間ほどかかっていたという。そこでOCRとRPAで時間短縮を図ろうというわけだ。しかし、同じ失敗は繰り返すまいと、時間を短縮することを目的とするのではなく、その結果、どのようなビジネス価値が産み出されるかをお客様と議論し追求した結果、発注サイクルを週次から日次に短縮することができれば、欠品率が削減できるはずだという見通しを立てた。欠品率の削減は、この会社にとっても大きな課題であり、お客様の満足度や利益に直結する。

そして、実証実験に取り組んだ結果、500時間を数分にでき、発注を週次から日次に変更することで、欠品率も8パーセントから2パーセントへと大幅に削減することができたそうだ。お客様も大満足で採用されたという。

機能や性能の説明、あるいは価格の安さではない。お客様の求めるビジネス価値は何かを、お客様と一緒になって追求し、これができれば採用したいと言わしめた成果であろう。このような取り組みに競合が入り込む余地はない。

決して、競合を知らなくてもいいと言っているわけではない。ただ、それ以前にお客様に徹底して寄り添い、お客様のあるべき姿を一緒になって見つけ出し、それを合意することが、ビジネスの成果につながることを忘れてはいけないだろう。

「共創」や「コンサルティング営業」などとかっこいい言葉をお題目に掲げても、お客様に寄り添うという基本動作ができなければ、ビジネスのチャンスは生まれない。その本質に立ち返ることこそ、営業力強化の原点ではないか。

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