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正しい「危機感」の煽り方

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「我が社も海外での事業展開を考えていますが、まずは国内企業の海外進出を支援することからはじめようと思っています。」

「でも、同じようなことを考えている企業も少なくないと思いますよ。結局は地場の企業を顧客として取り込まなければ、海外事業は、頭打ちになるのではないでしょうか。」

「ええ、私達もそう考えています。でも当面は、仕方がないと思っています。まずは、進出して、走りながら考えて見ようと思っています。まあ、はじめてのことでもありますし、やってみなければ分かりませんよ。」

地の利も分からず、人脈がない状況にあっては、最初は仕方のないことだ。しかし、海外進出となれば、大きなリスクを冒しての先行投資。それが、「当面」の戦略だけで、実行に移していいのだろうか。いずれは訪れるであろう未来が分かっているにもかかわらず、当たって砕けるというようでは、なんとも心許ない話だ。

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まずはやってみるは、何も悪いことではない。ただ、「海外の顧客を取り込むためにこういうことをやる」という具体的イメージを仮説として持ち、本当にそのやり方が妥当かどうかを検証する。そうしなければ、情報も入ってこなければ、人のつながりも生まれないし、何が必要なのかも見えてこない。

  • 当面は日本企業の海外進出を支援し、3年後は地元企業の顧客比率を3割りまで引き上げる
  • 現在のパッケージ・ビジネスから、2年後にはSaaSビジネスへの転換を図る
  • 現在、グループ内企業の売上比率が8割りだが、5年後にグループ外の比率を8割に引き上げる

どのように実現するのか?

担当者曰く「そうでも言わなければ、上も納得しませんしねぇ。」

経営者曰く「それぐらいの高いハードルを掲げておかないと、何もやりませんよ。まあ、正直なところ、本当にできるとは思っていませんけどね」

なんて、本音が聞こえてきそうだ。

  • 海外顧客を取り込むための訴求点はなにか。どのような価値を地元企業に提供できるのか。なにが地元企業や他社にはない強みなのか。どのようにチャネルを開拓し顧客ベースを拡げるべきなのか。
  • SaaSシステムの具体的な機能やサービス内容のイメージは描けているのか。 SaaSとなれば、顧客ベースも収益構造も変わるが、現行のパッケージ・ビジネスから移行するシナリオは描けているのか。SaaSへの移行は、ひとつのプログラムをマルチテナント対応させなくてはなりませんが、それに伴う変更点や運用上のリスクを明確にできているのか。
  • いまはない顧客ベースを新規に開拓しなければならないとすれば、こういうことに取り組んだ経験は少なく人材もスキルも不足している。それをどうやって補うのか。自分たちにできないとすれば、外部との協業を模索しなければならないが、かれらが協業することにメリットを感じてくれなければうまくゆくはずなどないが、どのような協業のスキームを実現するのか。

「何をすべきか」

あるべき論の追求がないままに、「そうなったらいいなぁ」という「期待表明」が、いつの間にか事業戦略や事業計画という名前にすり替わっていることはないか。

戦略や計画は、まず「何をすべきか」を描くことからはじめる。つまり、何をゴールにするか、また、そこへ至る筋道を具体的に、鮮明に描いてみることだ。

「そんなことを言われても、新しいことですからねぇ。事業部としては収支が問われますし、無い袖はふれません。「何をすべきか」と言われても、現状を無視するわけにはゆきませんよ。」

現状の積み上げだけで、新しく掲げた事業戦略を本当に実現できるのか。正解のない問題に挑戦し、現実との妥協を積み上げ、気がつけば、できなかった理由で武装する、なんてことにならないだろうか。

現状を前提として、今の自分たちは「何ができるか」を議論すれば、発想は縮まり、お客様が求めるものからは、どんどんと遠ざかる。

じゃあ、どうすればいいのか。まずは現状を棚に上げ、理想のあるべき姿を描くことからはじめなくてはならないだろう。その上で、現状を棚から下ろし、そのフィット・アンド・ギャップを明らかにする。そこには、いろいろな課題があるはずだが、これをどうすれば埋められるかを実行計画として描き出す。たぶん、こういう手順が基本なのだろう。

走りながらゴールを求めるのではなく、仮のゴールを地図の一点に定め、そちらに向けて走り出すことだ。そうすれば、その過程で様々な情報が手に入り、目の前にあらわれた課題を解決すること、あるいは、ゴールそのものを変更しなくてはならないこともあるはずだ。それらは全て、ゴールに向かうからこそ、できることなのだろう。

変化のない時代など、過去にはなく、未来にも訪れることなどない。絶対の正解はないからこそ、まずは自分の正解を定め、それに向きあう必要がある。

ただ、そんな時代の流れの中でも、時に「時代の節目」と言われる大きな転換点が訪れることがあるが、いまは、大きな節目のひとつかもしれない。

「時代の節目」への対応は、これまでの常識の延長線上に求めることはできず、改善では限界がある。価値観、事業構造、収益モデル、テクノロジー、求められるスキルなど様々なビジネスの構成要素が、これまでの常識を大きく変えてしまう。

経営者は、こういう時代の節目に気付き、危機感を持てと言うが、その議論は精神論に終始し、現場にしてみれば、「そんなこと、わかってますよ。でもね・・・」と、現実感のないもやもやとしたフラストレーションだけが溜まってゆく。

「危機感を持て!」と経営者は言うが、現場にしてみれば、「そんなことは分かっていますよ。じゃあどうしろというのですか?」という堂々巡りなのではないか。

例えば、もはやクラウドの時代だから、われわれもそういう事業を拡大せよと言うが、そうすれば当面の売上や利益は減少することを共用しなければならない。しかし、売上や利益は対前年比プラスで、それで業績も評価するとなるとやる気など起こるはずはない。

危機感を持つとは、あるべき論を明確にし、次に現状を直視する。そして、両者のフィット・アンド・ギャップを具体的に描くことからはじめることだろう。そして、そのギャップを埋めようと計画を練ると、それが容易に解決のできないことに気付くはずだ。このような過程を経て、危機感ははじめて現実感となる。そして、それをカタチにして現場に伝えなくてはいけない。組織や体制、業績評価基準や報酬制度などが、危機感に裏打ちされた具体的なカタチでなくてはいけない。

変革を、お経のように唱えても実現することはない。上記のような行動があって、はじめて危機感は醸成され、行動を促す。それでも、行動が起こせないとすれば、これはかなり深刻な事態だと、考えなくてはならないだろう。

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