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40年前の先端技術を教える新入社員研修にもの申したい

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7月17日に開催した「新入社員のための最新ITトレンド・一日研修」には100名を越える人たちが参加してくれた。今年の開催は、あと1回、8月20日のみとなった。

私がこのような研修を始めたのは「基礎は教えても最新を教えないままに実践の現場に送り出すこと」への問題意識からだ。

社会やビジネスにおけるITの役割や価値が明らかに変わりつつある。サイバーフィジカル・システムやデジタルトランスフォーメーションという言葉に代表される変革がこれまでの常識を置き換えようとしている。AIやIoTがこれほどまでに日常で会話されているのに、ITに関わる仕事をしようとする企業の新入社員が、それが何かを知らないままに現場に送り出されようとしている。

システム開発や運用管理の現場は、クラウドがもはや前提となり、コンテナやマイクロサービスがそんなクラウドの価値を引き出してくれるにもかかわらず、その仕組みや価値を教えないままでいいのだろうか。

40年も前から変わらないコンピュータの5大機能、バッチやオンラインを教え、セキュリティやネットワークの最新事情も教えないのでは、彼らも現場に出て戸惑ってしまうだろう。いや、戸惑うだけならまだしも、あまりの現実とのギャップに心が折れてしまい、会社やこの業界に不安や不信を持つようになった新人たちも目にしてきた。

これではいけないと、はじめたのがこの新入社員研修だ。

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社会人として、あるいはIT業界人として、厳しいことや頑張らなくちゃいけないことも伝えなくてはならない。でも「ITは楽しい」と思えてこそ、困難を乗り越える力が生まれてくる。

  • ITって凄い
  • ITの仕事はこんなにも可能性があるんだ
  • この業界に入って本当に良かった

この研修を終えて、受講者にそう思ってもらえることが目標だ。

そんな研修では次のようなことを教えている。

最新のこと

「情報システムの基礎」として、情報システムの仕組みや原理を教えている企業も少なくない。しかし、その内容の多くが40年以上も前のメインフレーム時代の内容だ。メインフレームがいまのコンピューター・システムの原理原則を築いたことは紛れもない事実だから、それを教えることが間違っているというつもりはない。しかし、それに留まってしまい、新しいことが何も語られていないのはいかがなものだろう。また、最新のITトレンドといいながら、「昔の最先端の教科書」に新しい言葉を継ぎ足してきただけの教科書をそのまま使っているといったことも多く、あまりにも中途半端だ。

例えば、仮想化は「サーバー分割の技術」程度にしか教えず、クラウド・コンピューティングも「昔のクラウド・コンピューティング」であって、いまの常識が語られていない。AIやIoT、アジャイル開発やDevOpsなど、もはや常識になろうとしていることなどひと言も語られていない。コンテナやマイクロ・サービスなんておくびにも出てこない。

「仕事で必要な知識は実践で身につければいい」というが、古い知識と古いやり方を守ろうとする現場が、新しいことを学ぶ「実践の機会」を彼らに与えてくれるはずもなく、結局は古いやり方がそのまま伝承され、新しいことを学ぼうという意欲を押さえ込んでしまう。

広い視野と未来を彼らに見せることだ。それが、若い人たちに次代を託す力を与えることになる。そうやって、若い人たちに一歩先を歩ませることが大切だ。

勉強の仕方

「毎朝1時間、自分のために勉強の時間を作ることです。夜は残業もあるでしょうし、疲れてもいます。自分でコントロールすることが難しい時間帯です。しかし、朝なら誰に邪魔されることもなく、好きな勉強ができるはずです。何を勉強するかは気にする必要はありません。そういう習慣を作ってから、あとで考えれば良いのです。まずは、形から入ることです。そうすれば、その時々で、何をすべきかを考えなくてはなりません。そういう、時間を持てるかどうかで、人生は大きく変わります。」

新入社員研修で必ず伝えるメッセージだ。残念ながら、これを続けられる人は決して多くはない。しかし、何年か経てこれを実践し続けている人たちに再び合うと、その価値がよく分かったと言ってくれる。

また、社内外の学びの達人たちを招いて話を聞いたり、ディスカッションしてみたりというのも良いかもしれない。朝活や勉強会を定期的に開いてもいい。学ぶことの大切さと楽しさを伝えたい。

何を勉強するかは人それぞれであり、その時々によって変わってゆく。しかし、勉強をし続けることの大切さと、そのやり方を身につけさせることができれば、個人の自律的な成長を促すことができ、組織を成長させる基盤にもなる。

つながることの大切さ

オンラインやオフラインに様々なコミュニティが存在する。テクノロジーやビジネス、ワークスタイルなど、様々なテーマで議論されている。そういうコミュニティの存在を伝え、参加することを奨励している。

様々な価値観を持ち、実践している人たちにつながることで、視野を広げ、多様性を学ぶことができる。また、最先端がコミュニティから生みだされていることも知るようになる。「仕事にすぐに役立つ」ことばかりでなく、広い視野に立って、面白いと思えるコミュニティに参加することの意味を伝えている。

小さな子どもに食べるもので何が好きかと聞くと「カレーの王子様」と答えるように、自分の見聞きしたことが狭いままでは発想も貧弱だ。大人になれば、もっと美味しいカレーが世の中にはいっぱいあることに気付く。仕事に関係する知識しかなく、会社の同僚とお客様としかつながりがないという狭い視野のままでは、良い仕事などできるはずはない。

新人だからといって自社の仕事にだけに専念させるのではなく、つながりを広げる機会をつくり、そういうことに参加することを奨励することも大切だ。

残念ながら、そういうことに興味がないひともいる。誰もが、すすんで参加することはないし、主体性のない人たちはコミュニティでも役割を果たすことができず、参加しても学ぶことはできない。だからこそ、その意義を伝え、少しでも多くの人たちに「つながり」の大切さに気付かせたい。

「新人たちで会社を変える」

この研修にはそんな想いを込めている。もはや、旧態依然とした価値観に支配され変えようとしない『ロートル(中国語で年寄り・老人という意味の"老頭児"が語源と言われている)』に未来を期待することはできない。だからこそ、新しい価値観と常識を持った新人たちに会社を変えてもらおうではないか。

参加費は1万円にした。これなら会社が費用を出してくれなくても自腹でも参加できるはずだと考えたからだ。詳しくは、こちらをご覧頂きたい。

【募集開始】ITソリューション塾・第29期 10月10日より開講

デジタル・トランスフォーメーションへの勢いが加速しています。クラウドはもはや前提となり、AIやIoTを事業の競争力の源泉にしようと取り組んでいる企業は少なくありません。ITを使うことは、もはや「手段」ではなく「目的」であり「本業」へと位置づけを変えようとしています。このような取り組みは内製となり、これまでの工数を提供するビジネスは需要を失い、技術力を提供するビジネスへの需要は拡大しつつあります。

この変化の道筋を見通し、先手を打つためにはどうすればいいのかを、学び考えるのが「ITソリューション塾」です。次期より講義内容を刷新致します。

最新のトレンドをわかりやすく体系的に整理することだけではありません。アジャイル開発やDevOps/デジタルトランスフォーメーション、新時代のサイバーセキュリティなどについては、それぞれの最前線で活躍する講師を招いて、その感性と実践ノウハウを学びます。

日程 :2018年10月10日(木)〜12月19日(水)
回数 :全11回
定員 :80名
会場 アシスト本社/東京・市ヶ谷
料金 :¥90,000- (税込み¥97,200)

参加登録された方はオンラインでも受講頂けます。出張中や自宅、あるいは打ち合わせが長引いて間に合わないなどの場合でも大丈夫。PCやスマホからライブ動画でご参加頂けます。

詳しくは、こちらをご覧下さい

ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA

LiBRA 7月度版リリース====================
ITソリューション塾・第28期の最新教材を掲載
メモリー・ストレージ関連のチャートを拡充
AI専用プロセッサーについてのチャートを追加
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ビジネス戦略編
【新規】デジタル・トランスフォーメーションの定義 p.22

インフラとプラットフォーム編
【新規】メモリーとストレージの関係 p.216
【新規】速度と容量の違い p.217
【新規】ストレージ構成の変遷 p.217
【新規】新章追加・不揮発性メモリ p.238-242
メモリ階層
コンピュータの5大機能
記憶装置の進化
外部記憶装置が不要に!?

サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT
【新規】IoTビジネスとはどういうことか p.43
【新規】IoTビジネス戦略 p.45

サービス&アプリケーション・先進技術編/人工知能とロボット
【新規】AIやロボットに置き換えられるものと残るもの p.111
【新規】皆さんへの質問 p.131
【新規】求められる人間力の形成 p.132
【新規】新章の追加・AI用プロセッサーの動向 p.133-146
急増するAI 専用プロセッサ
人工知能・機械学習・ディープラーニングの関係
深層学習の計算処理に関する基礎知識
AI = 膨大な計算が必要、しかし計算は単純
学習と推論
GPUはなぜディープラーニングに使われるか
データセンター向けGPU
GoogleがAI 処理専用プロセッサ「TPU」を発表
TPUの進化
クライアント側でのAI処理
Apple A11 Bionic
ARMのAIアーキテクチャ

開発と運用編
【新規】VeriSM p.6
【新規】早期の仕様確定がムダを減らすという迷信 p.13
【新規】クラウド・バイ・デフォルト原則 p.17

クラウド・コンピューティング編
*変更はありません

サービス&アプリケーション・基本編
*変更はありません

テクノロジー・トピックス編
*変更はありません

ITの歴史と最新のトレンド編
*変更はありません

【ITソリューション塾】最新教材ライブラリ
第28期の内容に更新しました。
・CPSとクラウド・コンピューティング
・ソフトウェア化するインフラと仮想化
・クラウド時代のモバイルデバイスとクライアント
・IoT(モノのインターネット)
・AI(人工知能)
・データベースとストレージ
・これからのアプリケーション開発と運用

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