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デジタル・トランスフォーメーション時代に求められる能力

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デジタル・トランスフォーメーションとは、「合理化や生産性を支える」ためにICTを使うのではなく、企業の存続と競争力を維持するためにICT(デジタル・テクノロジー)を駆使して、伝統的な事業活動や経営のあり方を転換することを意味する言葉です。当然、求められる人材も、これまでとは違ってきます。

■変革のリーダーシップを発揮する

「お客様が何をしたいかを聞き出し、要件をまとめ、それをシステムに仕立て上げる」ことではなく、「お客様の未来のあるべき姿を描き、自らがテーマを設定し、仮説検証を繰り返して変革のリーダーシップを発揮することです。

そのためには、めまぐるしく進化するテクノロジーがもたらす価値や可能性を正しく理解し、それを経営や事業に活かすために何をすべきかを自ら組み立てられる能力が必要になります。

テクノロジーの進化は、社会のあり方を大きく変えようとしています。お客様はこの変化にどう対処すればいいのかを図りかねています。

これまでの仕事のやり方を改善し、生産性を高めてゆけば何とかなるわけではありません。「お客様のお客様」のライフスタイルや価値基準が、テクノロジーによって変わりつつあるいま、お客様もまたこれまでの延長線上ではないイノベーションを起こさない限り、生き残ることができないことに気付かれています。デジタル・トランスフォーメーションとは、そのための取り組みです。

この状況で、お客様の課題は何かと探ってみても、何が課題なのかをお客様自身が明確にできていないのです。だから解決策を提案しようがありません。ならば、お客様にイノベーションの筋道を示し、行動を促すしかありません。

そんな取り組みを通じて、様々な課題が明らかになるでしょう。当然、そこにソリューションが必要となります。ビジネスのチャンスは、そんなお客様への積極的な働きかけから生まれてくるのです。

そのためには1つの専門領域にこだわるのではなく、広い知見でお客様と対話できなくてはなりません。アジャイル開発やDevOps、IoTやAI、クラウドやブロックチェーンといったテクノロジーについての知見だけではありません。経営や事業、政治や経済も含めた広い視野で、お客様と対話できる能力です。

なぜなら、デジタル・トランスフォーメーションは、テクノロジーを駆使し、経営や業務、組織のあり方、ビジネス・プロセスなどを根本的に変えてしまおうという取り組みだからです。

もちろん自分の専門領域は大切です。しかし、それだけではなく、広範な知識を土台に全体をつかみ取る直感力が必要なのです。それが、変革のリーダーシップを発揮するための原動力となるのです。

■共創を推し進める

既存の業務を改善することであれば、前提となる業務やシステムがあり、どう改善すればビジネスに貢献できるかの判断をお客様自身に求めることができます。しかし、テクノロジーを活かして、新しいビジネスの仕組みを生みだすことが求められるとすれば、正解は誰にも分かりません。だからその正解をお客様と一緒になって見つけなくてはなりません。「共創」とは、そのための取り組みなのです。

業務のプロであるお客様と、テクノロジーのプロである私たちが、一緒になってビジネスの最適解を創り出す取り組みです。そのために私たちは、テクノロジーだけではなくお客様の業務を理解し、その業務のどこがテクノロジーに置き換えられるのか、あるいは、テクノロジーによってビジネス価値をどのように転換できるかを理解できなければなりません。また、お客様にそのことを理解させ、同じ理解を共有しなければなりません。

■お客様の教師になる

お客様の期待に応えることではなく、お客様の期待を裏切ること

それが、これからの私たちに求められることです。お客様の常識的発想を追認し、その期待に応えることではなく、お客様のあるべき姿を予見し、そこに向かうことの大切さと道筋を示し、お客様のありきたりの期待を裏切って、より大きな価値をお客様にもたらしてこそ、私たちは役割を果たせるのです。

そのためには、自分の関わる商材や関連するテクノロジーだけではなく、お客様の業務やテクノロジーの大きな流れ、ビジネスや社会の方向を語れなくてはなりません。いわば、お客様の教師でなくてはならないのです。

■問いを発し続ける

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近い将来、テーマと手順を決めれば、AIが結果を出してくれるようになるでしょう。そうなれば、人間の役割は、テーマを作る、課題を見つけることへと役割をシフトしてゆかなければなりません。

「マシンは答えに特化し、人間はよりよい質問を長期的に生みだすことに力を傾けるべきだ。」

"これからインターネットに起こる『不可避な12の出来事』"の中で、ケビン・ケリーが述べた言葉です。

工数や物販は、AIや自動化、そしてクラウド・サービスに置き換えられてゆきます。例えば、銀行の窓口で応対していた行員がATMに置き換わったように、駅の改札で切符を切っていた駅員がICカードのタッチに変わってしまったように、そして、近い将来、コンビニの店員がレジからいなくなるように、やり方が決まっている仕事は機械に置き換わってゆくのは自然の摂理です。

一方で、「何に答えを出すべきか」を設定し、それを実現するプロセスを描くことが人間に求められます。「どうすればお客様のビジネスの成果に貢献できるのか」、「どのようなビジネス・モデル、ビジネス・プロセスにすれば成功するのか」、「現場の要請にジャスト・イン・タイムでサービスを提供するにはどうすればいいのか」といった問いを発し続けることが私たちには求められるのです。

AIが進化するほどに、人間には多くの問いが求められます。AIはその問いを短期間で解決し、さらなる問いを人間に求めます。そんな仕組みを使いこなして、継続して答えを産み出してゆくことが人間の社会や知性を進化させてゆきます。そんな能力が求められています。

藤井聡太・四段が中学生でありながらベテラン棋士をなぎ倒し快進撃を続けられたのは、AI将棋で繰り返し練習したことも1つの理由だと言われています。このことは、伝統的な棋譜というこれまでの常識あるいは先入観を越えて将棋に新たな可能性をもたらしただけではなく、スキルを磨くためには時間がかかるという常識がもはや時代遅れであるという現実を突きつけたとも言えます。

また、ゴールドマン・サックスのニューヨーク本社では600人ものトレーダーがいたそうですが、2017年現在で本社に残っているトレーダーはわずか2人で、200人のITエンジニアによって運用されている『自動株取引プログラム』が、かつての彼らの仕事を行っているそうです。時間をかけて積み上げた経験値が、価値を失ってしまったことを、これらの事例は示しています。

「時間をかけて積み上げた経験値」があるという事実で満足するのではなく、その経験値から得た気付きを問い、もっとお客様や自分たちの価値を高めるための新たなテーマを創り出すことが、求められているのです。

テクノロジーの進化がこれまでの人間の仕事を奪うのは、もはや避けられない現実です。だからこそ、問いやテーマを作る力が求められているのです。そして、テクノロジーを駆使していち早く最適解を求め、次のテーマを生みだし、新しい答えを導くことで、新しいビジネスが生まれます。私たちは、そうやってテクノロジーと共存することで、さらに豊で魅力的な社会を作ってゆくことができるのです。

ビジネス・エグゼクティブのためのIT戦略講座

ITに詳しくない経営者や事業部門のトップが、ITのトレンドや価値、それをビジネスに活かす方法について理解を深めてもらおうという内容です。
講師には、私だけではなく、デジタル・ビジネスの実践を支援し、グローバルに活躍している方やデザイン思考のプロを招き、単なる知識ではなく、実践的なノウハウも合わせて提供しようと準備しています。
先般承りましたご要望を全て満たすものではありませんが、事業会社の経営の現場で役立てていただける実践的な知識やノウハウを身につけて頂けるものと確信しています。

内容:全3回の講義と演習/受講者と講師のコミュニケーション


2月14日(水)よりスタートする次期「ITソリューション塾・第27期」の受付を開始致しました。

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日程 2018年2月14日(水)~4月25日(水) 18:30~20:30
回数 全11回
定員 80名
会場 アシスト本社/東京・市ヶ谷
料金 ¥90,000- (税込み¥97,200) 全期間の参加費と資料・教材を含む
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【お願い】早期に定員を超えると思われますので、まだ最終のご決定や参加者が確定していない場合でも、ご意向があれば、まずはメールにてご一報ください。優先的に参加枠を確保させて頂きます。
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第27期は、これまでの内容を一部変更し、AIやIoTなどのITの最新トレンドについての解説と共に、そんなテクノロジーを武器にして、どうやって稼げばいいのかについて、これまで以上に踏み込んで考えてゆこうと思います。また、働き方改革やこれからのビジネス戦略についても、皆さんに考えて頂こうと思っています。

SI事業者の皆さんには、これからのビジネス戦略やお客様への魅力的な提案を考える材料を提供します。
情報システム部門の皆さんには、自分たちのこれからの役割やどのようなスキルを磨いてゆく必要があるのかを考えるきっかけをご提供します。

講義で使用する500ページを超える最新のプレゼンテーションは、オリジナルのままロイヤリティ・フリーで提供させて頂きます。お客様への提案、社内の企画資料、イベントでの解説資料、勉強会や研修の教材として、どうぞ自由に活用してください。

古い常識をそのままにお客様の良き相談相手にはなれません。
「知っているつもりの知識」から「実践で使える知識」に変えてゆく。そんなお手伝いをしたいと思っています。

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2018年1月版・改訂/追加リリース

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  • 開発と運用について大幅に追加改訂しました。
  • デジタル・トランスフォーメーションについての解説を増やしました。
  • 量子コンピュータについての記述を追加しました。

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追加・更新の詳細は以下の通りです。

ビジネス戦略編
【改訂】デジタル・トランスフォーメーションの意味 p.5
【新規】デジタル・トランスフォーメーションとは p.11
【改訂】デジタル・トランスフォーメーション実践のステップ p.12
【新規】デジタル・トランスフォーメーション時代に求められる能力 p.14
【改訂】SIビジネスのデジタル・トランスフォーメーション p.15
【改訂】共創の3つのタイプ p.82

サービス&アプリケーション・先進技術編/AI
【新規】深層学習が前提となったシステム構造 p.68

開発と運用編
【新規】開発と運用:従来の方式とこれからの方式 p.15
【新規】アジャイル開発の基本構造 p.16
【新規】アジャイル開発の目的・理念・手法 p.23
【新規】スクラム:特徴・三本柱・基本的考え方 p.25
【新規】スクラム:スクラム・プロセス p.26
【新規】スクラム:プロダクト・オーナー p.27
【新規】スクラム:スクラム・マスター p.28
【新規】スクラム:開発チーム p.29
【新規】エクストリーム・プログラミング p.30
【新規】これまでのソフトウェア開発 p.58
【新規】これからのソフトウェア開発 p.59
【新規】Microsoft Azureによる予測モデルの開発方法 p.60

インフラ編
【新規】ストレージ・コストの推移 p.215

テクノロジー・トピックス編
【改訂】ソーシャル・グラフ 解説文・追加&改訂 p.4
【改訂】CSIRT解説文・追加&改訂 p.6
【改訂】3Dプリンター 解説文・追加&改訂 p.7
【改訂】RPA 解説文・追加&改訂 p.17
【新規】量子コンピュータがいま注目される理由 p.73
【新規】D-Waveとは
【新規】量子ゲート方式の限界と可能性 p.82

ITの歴史と最新トレンド
*追加・変更はありません。

サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT
*追加・変更はありません。

サービス&アプリケーション・基本編
*追加・変更はありません。

クラウド・コンピュータ編
*追加・変更はありません。

【講演資料】量子コンピュータ 
【新規】量子コンピュータがいま注目される理由 p.73
【新規】D-Waveとは
【新規】量子ゲート方式の限界と可能性 p.82

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