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【図解】コレ1枚でわかるシェアリング・エコノミー

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需要と供給を仲介者なしで直接結びつけてしまうことで、これまでには無かったビジネスが登場しています。

タクシー業界を破壊する配車サービス

Uberと言う配車サービスがあります。スマートフォンにUberのアプリを入れておき、車が必要な時はアプリのボタンを押すだけで、近くにいる自動車を呼び出してくれます。そんなことができるのは、スマートフォンに組み込まれたGPS(位置情報を取得するセンサー)の情報を使っているからです。

タクシーと違うのは、それが個人所有の自動車であるということです。そして支払いもアプリに登録しておいたクレジットカードから自動的に支払われ領収書も自動でメールに送られてくるので、降車時に利用者の手間はありません。また、料金も一般のタクシーよりも安く、個人の所有物であることからキレイな車が多いようです。

普通のタクシーであれば相当数の自動車をタクシー会社が所有しなければなりません。しかし、Uberは自動車で移動したいヒトと個人の自動車+運転手の空いている時間をマッチングしてくれるだけなのでタクシーという物理資産を持つ「タクシー会社」は必要が無く必要経費は少なくてすみます。一方、乗車時間、稼働状況をリアルタイムで捉えそのデータを分析してマッチング精度を高め稼働率を上げてくれるので、運転手にとってはタクシー会社に勤めるよりも収入が増えるといった恩恵も得られます。そんなこともあって、東京を含めて世界409の都市で利用可能(2016年4月)となっています。

一方でUberの登場は、これまでのタクシー業界を破壊しています。事実、サンフランシスコ最大のタクシー会社であったイエローキャブ社はUberやLyftなどのサービスにより顧客を奪われたこと、そしてドライバーがこれらのサービスに移ってしまい確保できなくなってしまったことを理由に破産申請を出すことになってしまいました。

ホテル業界を破壊する宿泊仲介サービス

異業種の参入による新たな競合の登場はタクシー業界に限った話ではありません。例えば、宿泊仲介のAirbnbは、2008年8月創業以来、個人宅やお城などの世界中のユニークな宿泊施設をインターネットで紹介し、スマートフォンやPCから予約できるサービスを提供しています。現在その規模は、世界190ヶ国34,000以上の都市に拡がっています。

先に紹介した配車サービス同様に、個人所有の部屋や建物の空き状況を共有し、そこに泊まりたいヒトとの仲介を、ネットを介して行っています。

Airbnbの従業員は数百人程度だそうですが、数万人の従業員が働く世界的な大手ホテル・チェーンよりも多くの客室を提供しています。しかし、建物や施設の保有や維持の経費もかかりませんし、警備や清掃のための従業員を雇う必要もありません。そのため比較的安い料金で泊まれることも多く、1400以上のお城も登録されているなど普通のホテルでは味わえないユニークな体験を求める人たちに利用者を拡げています。また、自前の設備を増やさなくても商品である宿泊場所を拡大できるといった特長を活かし、事業を拡大しています。

Airbnbのような宿泊したい個人とお客様を泊めて収入を得たい個人を直接結びつけるサービスは、既存の大手ホテル・チェーンや旅行会社にとっては大きな脅威と受け取られています。

需要と供給を直接つなげるシェアリング・ビジネス 

ラスクルは、印刷会社が所有する印刷機の空き時間と印刷したい人たちの需要を直接結びつけることで安価な印刷ができるようにしました。印刷機は置いておくだけではお金は生みだしません。ならば使っていない時間に安くても使ってもらえれば助かります。印刷したい人にとっては安く印刷できるならありがたい話です。この安く使いたい需要と安くても使わせたい供給を、インターネットを介して直接結びつけようというのです。ラスクルは、印刷機以外にも同じような考え方で配送会社のトラックの「荷台の空きスペース」を共有し、スマートフォンのアプリから予約できるサービスも提供しています。

ほかにもレンタルスペースを紹介し予約できるSheeps、自宅の駐車場を貸し出してくれるakippa、個人のレジャー用ボートを貸し出すためのBoatbound、クローゼットにしまい込まれているドレスなどの衣服を貸し出すためのStyle Lendなど、個人の小さな需要と供給を直接結びつけるサービスも続々と登場しています。また、先ほど紹介したUberやLyftなどの配車サービスで運転手として仕事がしたいが、自動車を持っていないという人のために、個人自動車の貸し出しを仲介してくれるサービスBreezeといったサービスも登場しています。

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スマートフォンの普及により、どこにいてもインターネットを使えるようになりました。同時に、個人のITリテラシー(ITを使いこなす能力)も高まりました。そのおかげで、企業だけではなく個人にかかわる需要と供給を直接結びつけることもできるようになったのです。このようにサービス・製品・設備などの有形無形のものを共有し、利用者が必要な時に利用してもらう経済の仕組み「シェアリング・エコノミー」が広がりを見せ始めています。

シェアリング・エコノミーが拡がる背景には、以下のような「ミクロな供給」が潜在的にあるからです。

  • 店舗や飲食店などの駐車場は、営業日にはいっぱいでも定休日は使っていない。
  • 個人所有の自家用車は、平日は駐車場に置いたままで使っていない。
  • お気に入りのイブニングドレスなので手放したくはないが、いつも着るものではないので箪笥に眠っている。
  • 3日間クルマで出かけるので駐車場がその間空いている。
  • 企業の会議室は、平日は仕事で使っているが、休日は誰も使わないので空いている。

スマートフォンやインターネットが普及していなければ、こんな「ミクロな供給」を共有し、需要と結びつけることは不可能でした。ITの進化が新たなビジネスを生みだした好例です。さらに「消費は美徳」の時代から省エネや省資源を美徳とする社会感情の変化もシェアリング・エコノミーを拡大させる大きな要因となっています。

「自分のモノは自分のために」といったこれまでの常識から、「自分のモノは他人とも分かち合う」といったこれからの新しい常識が、経済のひとつのメカニズムとして定着しようとしています

【最新版】最新のITトレンドとビジネス戦略【2016年5月版】

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*** 全て無償にて閲覧頂けます ***

【大幅改訂】新入社員研修のための「ITの教科書」

最新版【2016年5月】をリリースいたしました。

今月の目玉は「新入社員のための研修教材の追加」と「IoTや人工知能についての資料を大幅に追加」したことです。ご活用下さい。

【新入社員研修教材「最新のITトレンド」・2016年版】

最新のITトレンドについての新入社員向け研修教材として作成致しました。内容は、月次に更新している「最新のITトレンドとビジネス戦略」からの抜粋です。

加えて、以下のドキュメントもダウンロード頂けるようにしました。

  • 事前課題(Word形式)
  • 理解度テスト(Excel形式)
  • 最新ITトレンドの教え方(PPTX形式/解説をノートに記載)

本教材の各ページには、できる限り解説を併記しています。ただ、未記入のものもありますが、今後の更新にて順次追加致します。

【最新のITトレンドを理解するための基礎知識】

主に新入社員を対象に、最新のITトレンドを理解するために知っておくべき基礎知識を改定しました。プレゼンテーションに加え、解説文(教科書)も合わせて掲載いたしましたので、自習にも役立ちます。

【インフラ&プラットフォーム編】(266ページ)

  • サービス編と重複する内容を削除すると共に、全体の順序を変更しました。
  • 「クラウドによる新しい組合せ」を追加すると共に、解説文を掲載しました。p.27
  • 「ASPとPaaSの違い」を追加しました。p.58
  • 「マルチテナント効果」を追加しました。p.59
  • 「Oracle 12cのマルチテナント・アーキテクチャ」を追加致しました。p.60
  • 「Amazon API Gateway」を追加致しました。p.63
  • 「ITで変わる働き方」を追加しました。p.178

【サービス&アプリケーション編】(224ページ)

IoT

  • 「モノのサービス化」を新規追加し、解説を加えました。p.27
  • 「製造業のサービス化」を新規追加しました。p.31
  • 「IoTで変わるビジネス価値」を新規追加し、解説を加えました。p.32
  • 「ビジネス価値の進化」を新規追加しました。p.33
  • 「機器のイノベーションとビジネス戦略」を新規追加しました。p.41
  • 「CRMとトータル・エンジニアリング・サービス」を新規追加しました。p.55

スマートマシン

  • 「人工知能と機械学習」を改訂し、解説を追加しました。p.144
  • 「人工知能の4レベル」を改訂し、解説を追加しました。p.145

【ビジネス戦略編】(92ページ)

  • 「戦略・作戦・戦術とIT」を改訂しました。 p.12
  • 「商品としてのITの作り方」を追加しました。p.13

閲覧は無料です。ダウンロード頂く場合は会員登録(500円/月)が必要となります。
http://libra.netcommerce.co.jp/

まずは、どのような内容かご覧頂ければ幸いです。

「ポストSIビジネスのシナリオをどう描けば良いのか」

これまでと同じやり方では、収益を維持・拡大することは難しくなるでしょう。しかし、工夫次第では、SIを魅力的なビジネスに再生させることができます。

その戦略とシナリオを一冊の本にまとめました。

「システムインテグレーション再生の戦略」

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  • 歴史的事実や数字的裏付けに基づき現状を整理し、その具体的な対策を示すこと。
  • 身の丈に合った事例を紹介し、具体的なビジネスのイメージを描きやすくすること。
  • 新規事業を立ち上げるための課題や成功させるための実践的なノウハウを解説すること。

また、本書に掲載している全60枚の図表は、ロイヤリティ・フリーのパワーポイントでダウンロードできます。経営会議や企画書の資料として、ご使用下さい。

こんな方に読んでいただきたい内容です。

SIビジネスに関わる方々で、

  • 経営者や管理者、事業責任者
  • 新規事業開発の責任者や担当者
  • お客様に新たな提案を仕掛けようとしている営業
  • 人材育成の責任者や担当者
  • 新しいビジネスのマーケティングやプロモーション関係者
  • プロジェクトのリーダーやマネージャー
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