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「今日の受講者は態度が悪い!」のは講義がつまらないから

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「この講義内容で、"自分事(じぶんごと)"にさせることができるだろうか?」

講義を準備しながら、こんなことをよく考えます。

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講師は、相手に自分の知識を伝えられればそれで良いというものではありません。それだけのことであれば、本やネットで十分です。私は、学ぶことの意義を悟らせ、成長の実感を与えることが、講師の務めなのだろうと思っています。

もちろん限られた時間の中で、講師が受講者を「成長させる」ことなど、おこがましい話です。成長するかどうかは、受講者本人の問題です。ただ、受講することが自分にとって役に立つものだということを納得させ、講義内容が自分の成長にどのように結びつくのかを考えさせる機会提供することは、講師の努めだと思っています。

「今日の受講者は受講態度が悪い。真剣みにかけている・・・」

そう嘆く講師を見掛けることがありますが、その多くは、「講義がつまらないから」です。受講者が講義内容の価値を理解できず、自分の成長にどう役立てれば良いかが分からないからなのです。

「上司から言われたので」、「必修の研修なので」などの理由で受講する人も少なくはありません。そういう人にも講義の意義を得心させ、自分の成長と結びつけて考えさなければなりません。それが講師という仕事なのだとおもいます。

それを怠り、自分の知っていることを語るだけで、挙げ句の果ては「人の話を真剣に聞きなさい」と怒鳴っているようでは、プロの講師ではないでしょう。

じゃあ、どうすればいいのでしょうか。ポイントは、講義が「他人事」ではなく「自分事」であると考え、気付かせる機会を講義の中に持ち込むことだろうと思います。具体的には、次のようなやり方がなかなか効果的です。

事前課題

講義内容に関わる事前課題をやって来てもらうことです。講義の目的にもよりますが、選択問題やキーワードの説明などではなく、「調べても分からない」あるいは、「自分の意見や価値観を問われる」課題がふさわしいと思っています。例えば、ITトレンドの研修では、こんな事前課題を出したことがあります。

「クラウドの普及は、コンピューターと企業、人との係わり方を大きく変えようとしています。どのような変化が、これから起きるのでしょうか。具体的な事実や可能性を3つ以上書き出して下さい。」

「アジャイル開発が注目されています。それはどのような理由からでしょうか。従来までの開発と何が違うかを交えて、その理由を説明して下さい。」

「ハードウェアやライセンス販売、工数提供のビジネスは、今後収益を拡大することは難しくなるだろうと言われています。その理由を3つ以上述べてください。」

正解はひとつではありません。また、自分の価値観や仕事の内容によっても答えは変わってくるでしょう。

「分かっていたつもりでいましたが、文章にしようとすると簡単じゃありませんね。」

そんな感想を伺うことがありますが、まさにそのとおりで、「文章にすること」が大切なのです。文章にするためには、言葉を知らなければなりません。また、その意味を知っていなければなりません。そして、文章を論理的に組み立てなくてはなりません。かなり、ハードルが高い課題です。しかし、このような課題を通じて、自らの不足や曖昧を実感できれば、それを満たすことへの意欲、すなわち、講義を「自分事」として受け止めてこの不足や曖昧を解消したいという意識を持つことができるようになります。

事前課題ができない講義では、講義の冒頭にこのような内容で「事前テスト」を行ったり、グループワークで答えを考え発表して頂いたりといったやり方もあります。講義時間に食い込むので話せる内容が少なくはなりますが、知識を押しつけることに時間を費やすよりは、遥かに研修効果は期待できます。

講義目標の設定

事前課題や事前テストを行い、そこで得た気付きを踏まえ講義に期待する成果を書き出してもらうことも効果的です。

言葉に表出することで、自分自身に改めて言い聞かせることは、コーチングでも「オートクライン効果」といって重要な要素と位置付けられています。この言葉は、もともとは生理学用語です。「細胞が出したホルモンがその細胞自体に作用する自己分泌(オートクライン)」という意味でコーチングでは、このホルモンを言葉にみたて、「自分で話した言葉が自分自身に作用すること」として使っています。例えば、「よし、今日はこれをやろう」などと、自分で言葉を発し、それを自分で聞くことで、自らを納得させたり意識を高めたりと言ったことを私たちは普段でもやっています。また、言葉にすることで、自分の考えを整理し新たな気づきを得ることができます。こういう効果を「オートクライン効果」と呼んでいるのです。

講義の中に、このオートクライン効果を持ち込もうというのです。講義の規模や受講者数、同じ会社かそうではないかなど、考えなくてはなりませんが、それを書き出してもらい、あるいは、発表してもらい、ホワイトボードに書き出して、再確認するというやり方はなかなか効果的です。

また、事前課題のひとつとも言えますが、新入社員研修の場合は、新入社員に上司をインタビューさせて、一緒になって講義の目標を考え、書き出してきてもらうこともあります。自分だけで考えるのではなく、上司の期待や自分の位置づけを客観的な視点で捉え、冷静に考えて目標設定できることは、講義を自分事と捉える上で極めて効果的です。

自分の仕事と結びつけて考えさせる質問

講義によっては、そこで話した話題について、「自分たちの仕事にどんな影響が出ると思いますか?」、「これを仕事に使うとしたらどのように使いますか?」などと質問を投げかけてみるのもいいかもしれません。

教養としての知識ではなく、自分の仕事に関連づけて考えて頂くことで、自分事として受け止めることができます。また、私が行っている「営業研修」では、研修内容に即したチェックリストを用意し、それを自分の仕事に即してチェック頂くことで、第三者的目線で自分の仕事のやり方を見直すことができるようにしています。

グループ・ディスカッション

自分の考えていることや理解したことを言葉にし、声に出して相手に伝えようとするとき、言葉や論理を整理しなくてはなりません。その機会を与えるのが、グループ・ディスカッションです。

また、自分がこうしたいなどと言う態度の表明の場合には、オートクライン効果が働きます。他人に約束するのではなく、自分に言い聞かせる行為としての役割を果たしてくれるのです。また、他人の意見や解釈を聞くことで、視野を広げ新たな気付きを得ることも少なくはありません。

長時間である必要はありませんが、4〜5人程度のグループデ、10分程度を数回、講義の中に組み込むことは、自分事としての意識を高めると共に、緊張をほぐす効果が期待できます。できれば、立ったまま、あるいは、席を移動するなど身体を動かす行為と共にディスカッションできれば、リラックス効果が高まります。

振り返りのテスト

成績をつけることではなく、自分が目標を満たすことができたかどうかを確認するためのテストです。例えば、当初の事前課題と同じものをそのまま使うというやり方もあるでしょう。講義の前と講義の後でどう変化したかを実感させることが大切です。

講義後のアンケートにそのような役割を果たさせることも可能です。単に講義の評価としてではなく、講義に参加したことへの内省を促すような質問を行うことも効果的です。

全ての講義でこのようなことが全てできるとは限りませんし、うまくいかないこともしばしばです。でも、「自分事」として捉えられるように講義を演出する努力は、講師の務めとして怠るべきではないと思っています。準備に手間はかかりますが、講義に時間を割きお金を払って頂くわけですから、それに見合う「満足」という結果を返さなくてはなりません。またビジネスである以上、受講者や講義主催者にリピートを望まれる結果を出さなければなりません。

まあ、こうやって偉そうなことをいってはいますが、結局のところ、自分の「企み(たくらみ)」が、果たして思惑通りの結果になるかどうかの「わくわく感」を楽しみたいだけなのですが(笑)。

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【テクノロジー編】(379ページ)

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【ビジネス編】(67ページ)

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目次

  • 第0章 最新ITトレンドの全体像を把握する
  • 第1章 クラウドコンピューティング
  • 第2章 モバイルとウェアラブル
  • 第3章 ITインフラ
  • 第4章 IoTとビッグデータ
  • 第5章 スマートマシン

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