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マネージャーの嘆き、部下の落胆

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「なんで、俺のいうことが、わからないんだ!」と部下の不出来を嘆くマネージャー。「なんで、俺のいうことをわかってくれないんだ!」と落胆する部下。

この案件を何としてでも獲りたい、営業目標を達成したい、このお客様で提案のきっかけをつかみたいなど思いは同じはずなのに、なぜか通じ合わない。そんな現場に出会うことがある。

一体誰が悪いのか、どこに問題があるのかと考えてみるのだが、どちらにも言い分がある。これぞという正解を見出すことは、難しい。とはいうものの、嘆いているだけでは、改善の糸口も見つからない。 

すこし冷静になって考えて見ると、マネージャーは、部下との関係において、次のような課題を抱えている。

  1. 部下の仕事の状況が、見えない
  2. 自分を基準に部下を評価し、指示を与えてしまう
  3. 自分ではわかっているつもりだが、それを部下にうまく伝えられない

こういう課題に対処できれば、すこしはうまくいくのではないだろうか。

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1.部下の仕事の状況が、見えない

同じ単語であっても、それが意味するところが、微妙にずれていることはよくある。また、ボキャブラリーの貧弱、結論を先に言わず、くどくどと状況説明を始めてしまい、いったい何が言いたいのかとイライラしてしまうこともある。勢い、「で、結論は、どうなんだ?」、「だから、どうしたいんだ!」と威圧的に詰問してしまう。すると、相手の頭は、真っ白になってしまい、何をどう話していいのか、いや、いままで何を話していたのかさえ、どこかへ飛んでしまう。

こんなことを言われるくらいなら、説明などしたくない、めんどくさいとなり、十分に情報は伝わらない。こういうことには、なっていないだろうか?

SFAを導入した。目的は、営業活動の状況や進捗を把握し、迅速な意思決定を下すためであるはずだった。しかし、結果は、部下にとっては、むしろお荷物であり、余計な仕事を増やされたという、被害者意識へつながってしまってはいないだろうか?

当然である。部下からの一方通行。何のレスポンスもない。いったい何のためにインプットしているのだろう。たまにレスボスが返ってくることがある。しかし、「了解」、「頑張ってください」では、自分にとって何の役にも立たない。システムがあれば、情報は集まるというが、仏を作っても魂を入れなければ、日報清書システムであり、清書された日報も電子紙屑入れに放り込んでいるのと変わりがないではないか。これでは、何のためのSFAなのか、目的のない、ただ義務だけの仕事に仕事の意義を見いだせないのは、当然といえるだろう。

2.自分を基準に部下を評価し、指示を与えてしまう

初めからマネージャーとして優秀なものなどいない。優秀なプレーヤーだったから、マネージャーになることも多い。しかし、プレーヤーとマネージャーとでは、役割が違う。認められるスキルも違う。それが、部下の育成だ。

プレーヤーであれば、自分の成長は、自分の責任だ。しかし、マネージャーは、自分ではなく、他人の育成に責任を負わされる。自分のことなら見えるが、他人のことは見えない。だから、報告や説明を求めるのだが、稚拙な説明に「なんでもっとうまく説明できないんだ」といら立ちを感じる。

自分ならもっとうまくできる。当然のことだ。優秀だからマネージャーであり、未熟だから部下なのだ。しかし、優秀である自分の成功体験や手法を基準にし、部下を見てしまうと「なんで、できないんだ、なんでわからないんだ」となってしまい、自分のやり方を押し付けてはいないだろうか?

「そういわれても・・・」という部下の思い。言葉では分かっても、腑に落ちない。

「だからだめなんだ!じゃあ、俺がやる!」となり、プレーイング・マネージャーと称して、自分の行動を正当化する。しかし、その本質は、マネージャーとしての責任放棄だ。

3.自分ではわかっているつもりでも、それを部下にうまく伝えられない

マネージャーの成功体験や武勇伝は、時に気持ちを鼓舞されるものだ。自分もああなりたい、そんな仕事をしてみたいと意欲を湧き立たせることもある。

しかし、では、どうすれば、そんな成功ができるのか?その方法や手順を教えてほしいと願っても、「あきらめない気持ちが大切だ!」、「とにかく、お客様に食らいつけ!」、「毎日やるべきことをやればいいんだ。」という、精神論、根性論を語られるにすぎない。ありがたいお言葉だが、では、具体的にどうすればいいのかが、とんと見えてこない。

「そんなもものは、盗むものだ!自分で経験して、見つけ出すものだ!」という言葉もわからないではない。しかし、これは、単に自助努力を求めているにすぎない。確かに、ほっておいてもその勘所を見出して、成長するものもいるだろうが、これは、博打である。組織全体としての計画的、効率的な底上げには、結びつくことはない。

根性も大切であることはわかる。しかし、部下が求めているのは、具体的な手順であり、方法である。素晴らしい精神論もいいが、それは目標であって、過程ではない。知りたいのは、過程なのである。

 

このような3つの課題を解決する手段は、あるのだろうか。そのいくつかを考えてみようと思う。

まず、マネージャーは、自分なりに身につけた「成功する営業活動」を分析的に整理する必要がある。つまり、感覚的にとらえている成功の体験をプロセスとして、具体的な「行動」に置き換えて考えてみる必要がある。自分がこなしてきた仕事の手順を整理してみることだ。これを、営業活動プロセスという。

営業活動プロセスは、お客さまの開拓や案件の発掘、そして、受注に至る一連の仕事を進めてゆくためには、何をしなければならないかを体系立てて整理したもの。

これを組織で共有する。その基準をたよりとして、営業活動の状況や進捗を部下と共有することができる。いうなれば、状況を整理整頓するための枠組みである。感覚として、状況をとらえるのではなく、進捗や活動状況に枠組みをかぶせ、ひとつひとつの項目化された行動毎に状況を確認し、課題や対策を議論する。これが、営業活動プロセスだ。

次に必要とされるのは、「セーフティネット」。人は、他人に、やらされることには、抵抗する。また、学ばせようとすると学ばないのも人間の性だ。だから、自発的に行動し、自発的に学ぼうという意欲を引出し、これを維持することだ。

マネージャーにとって、もっとも大切な仕事は、このような部下の意欲を高め、維持すること。そのためには、言われたからやるのではなく、とにかくやらせてみること。そして、失敗をさせることだろう。ただし、大きな失敗やつまずきの前に、それを見つけ、適切な方向に導く仕掛けも必要だ。これが、セーフティネットだ。いつでも相談できる、話を聞いてもらえる。そんな安心感を与えることだ。コーチングもまた、このような状況を作り出す有効な手段となる。

コーチングとは、「答えは本人の中にある」ことを前提とし、それを引き出すためのテクニックだ。自分の答えは、他人からの指示ではない。自分の意思に基づく行動は、意欲が高い。そんな自発的な行動とそれを支えるセーフティネットにより、人は自らの力で、成功のきっかけを手に入れることができる。

もうひとつが、「スポンサーシップ」だ。部下の自発的行動は、成功のきっかけだが、結果までの道のりは遠い。だから、部下の成功のためにできることはなにかを真剣に考える必要がある。チェック・アンド・レビューではなく、レポート・アンド・サポートの精神で、部下の主体的行動を見守り、必要な支援を与えること、そして、組織のビジョンや方向をわかりやすく伝えることが、マネージャーの役割だろう。

営業活動プロセス、セーフティネット、スポンサーシップは、先にあげたマネージャーの3つの課題を解決するための基盤を提供してくれるはずだ

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目次

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  • 第1章 クラウドコンピューティング
  • 第2章 モバイルとウェアラブル
  • 第3章 ITインフラ
  • 第4章 IoTとビッグデータ
  • 第5章 スマートマシン

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