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誰のためでもない自分ために/今年も訪れた南三陸町

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2011年7月10日、はじめての被災地・宮城県南三陸町を訪れたときの写真だ。360度、見渡す限りの瓦礫と蒸せるような生臭い空気の中を蠅が群がっていた。あのときの印象は、未だ脳裏に焼き付いている。

あれから4年の歳月が流れ、土色の大地にトラックが走り回っている。あの瓦礫が散乱していた場所は、嵩上げ工事で、土がそびえるように積み上げられ、景色を一変させていた。復興とは、こういうことなのかと、考えさせられる。

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いずれは、この土色の光景も緑に包まれ、新しい街が生まれるのだろうが、それまではしばらく、この光景の中で人々は暮らすことになる。その覚悟を決めた人たちが、いま前を向いて動き始めている。

私が、関わっているボランティア団体「ITで日本を元気に!」は、ここ南三陸町を中心に、物資の提供、PCやインターネットの導入といった活動を行ってきた。そして、今年で4年目になる被災地の定点観測ツアーを毎年実施している。そして、地元の人たちの声を聞き、それを発信する活動を行っている。

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今年もそんな彼らと話をする機会に恵まれた。彼らは、この街の現実に覚悟を決めて、自分の力で未来を切り開こうとしている。そして、着実に前へ進んでいる。今年もまた、そんな彼らに接し、大いに励まされることとなった。

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地元で水産加工会社マルアラを営む及川吉則さんは、5つあった工場のうち4つを流されてしまった。残った1つも背丈を超える水につかり操業できない状態となってしまった。それでもそこを復旧し、いち早く仕事を再開したひとりだ。

震災の半年後の9月にはじめて彼と会ったが、自分が受けた被害も「しかたがないこと」と淡々と語り、未来を語ってくれたことを覚えている。そして、いま、自分の仕事だけではなく、観光協会の会長や地元産業団体の代表をつとめるなど、町の復興に尽力されている。

「たのまれると断れないですから。」

苦笑いしながら、これからの南三陸町についての想いを語ってくれた。

「今年は、正念場です。」

5年間の復興予算が、1年後には、大幅に削減される。それまでに自立できるまちづくり、そして、ひとづくりをしなくてはならない。かれが、観光や産業の団体の要職をうけたのもそんな想いだったのかもしれない。

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「どうやって雇用を増やすか。その考えは、いまも変わりません。」

地元で菊の農家をしていた小野政道さんは、震災後、「小野花匠園」という会社を立ち上げた。

「震災後、自分に何が出来るのか、ものすごく考えました。たどりついたのが、残された農地を利用し仕事を失くした人達が働ける場を作りだしたい、という想い。一人雇用出来れば、その先にいる大切な家族が、そして、また一人増えればまたその家族が、少しずつ安心して暮らせるようになる、そんな想いでした。」

小野花匠園のホームページには、こんな説明がある。

「花をおいてくれる店が、4つ増えるごとに1人を雇えるんです。」

そんな想いでコンビニやスーパーを自分の足で開拓し、20人近い雇用を生みだした。いまでは、口コミで顧客も広がり、自分で営業をすることも少なくなったという。

「忙しいときは、地元のばあちゃんたちにも手伝ってもらっています。」

「雇用を生みだすことが、会社を作った目的」という彼の言葉は、いまもぶれていない。少しでも人を減らしたいという企業もある中で、彼の言葉は、経営者とは何かを改めて考えさせてくれる。

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「"夜釣り"じゃあ若い人なんかこないです。だから、"ナイトクルーズ"にしようと思っています(笑)」

地元養殖漁師で金比羅丸の船長、高橋直哉さんは、笑顔でそんな話をしてくれた。また、自らも設立に関わった若手漁師集団「Fisherman Japan」についても熱く語ってくれた。石巻界隈の若手漁師が、お互いに協力し合い、販路を広げていこうという取り組みだ。

「これまでは、同じ浜の漁師はライバル。浜が違えば、もう大変です(笑)。」

そんなこれまでの常識を覆す若手漁師達の集団は、共にお金を出し合って組織を作り、ネット販売や海外への販路拡大をすすめよとしている。

「石巻のスーパーで、自分で獲ってきたものを説明しながら売っています。お客様が何を喜んでくれるのかを肌で感じるようになり、モノではなく、食品なんだという自覚を持てるようになりました。だから、これまでに無く意識して、丁寧に収獲するようにしています。」

売上も大きく伸ばしているという。もはや商品が足りない状態で、他の浜から仕入れることも考えているという。終始笑顔の彼の語り口には、昨年以上に自信が感じられた。

ところで、若手漁師集団「Fisherman Japan」が、かっこいいプロモーション・ビデオを公開している。1分半ほどなので、是非ご覧頂きたい。きっと、あなたも「漁師になりたい!」と思うはずだ(笑)。

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「この町には、いい森があります。でも、この森は手を入れなければ、廃れてしまうんです。だから手入れをして森を元気にし、ここの木を使って、この町に住宅を建てます。そして、廃材はペレット・ストーブの燃料にします。」

そんな循環型の新しい産業「森林業」を立ち上げようとしているのは渡辺啓さんだ。

彼と初めて出逢ったのは、冒頭の写真を撮った2011年7月10日だった。かれが、避難所のリーダーをしているときだった。彼は、首都圏で住宅関係の仕事をしていたのだが、震災を機に休暇を取ってこの街でボランティアをはじめた。

その後、ボランティアを続けたいと会社に休職願いを出したところ、「復興で住宅の需要が増え仕事も増えるので、そんなことは許可できない」と言われたので、退職して再びボランティアとして戻ってきた。

「千年に一度の出来事なのに、何もしないではいられません。」

地元の方と結婚し、いまでは「森林業」で町興しをと張り切っている。また、先に紹介した、小野さんや高橋さんなどと地元の自然を売りにしたツアーも考えているという。

毎年、この時期を迎えると、どうしてもこの町を訪ねたくなる。それは、誰のためでもない、自分ためだ。彼らのたくましさと行動力を感じ、励まされたいからだ。今年もまた励まされて帰ってきた。

自分は、この震災によって沢山の学びの機会を与えられてきた。せめて、そんな彼らに報いられるとすれば、こうやってそのときのことを発信することくらいだろう。それもまた、自分のためでもあると感謝しなければならない

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