オルタナティブ・ブログ > ITソリューション塾 >

最新ITトレンドとビジネス戦略をわかりやすくお伝えします!

「ソリューション」の本当の意味、「ソリューション」という商品のかたち

»

「ソリューションとはどういう商品ですか?それはどんな形をしているのでしょうか?」

今から20年ほど前、メインフレーム全盛に陰りが見え始めていた頃、ミニコンやオフコン、パーソナルコンピューターへのダウンサイジングが、大きな潮流となっていた。

高価なメインフレームに対する安価な小型のコンピューターの出現は、情報システム部門に頼ることなく、業務部門個別のニーズに短期間で対応できる魅力からどんどん普及していった。その結果、ひとつの会社が、様々なメーカーのコンピューターを多数所有するようになった。

確かに、コンピューター単体の購入コスト(TCA: Total Cost of Acquisition)は劇的に下がった。しかし、その一方で、データの互換性を保つことやネットワーク接続によるシステム間の連携、トラブルへの対応、システム間の整合性を保証した上でのバージョン・アップやパッチ対応などは、メーカー個別に対応しなければならなくなった。メインフレーム時代は、メインフレーム・メーカーが保証してくれていた「組合せ」は、マルチベンダー化によって、ユーザー企業側に大きな負担を強いることになった。

また、分散するコンピューター・システムのバックアップ・リカバリー、ライセンス管理、トラブル対応などの運用管理はメインフレームのように集中で行なうことができない。そのため、会社全体のコンピューターを所有することに伴うコスト(TCO: Total Cost of Ownership)が急増していった。

それでも、業務ニーズへの迅速な対応が優先された結果、マルチベンダー化は急速に拡大、部門最適化された個別システムが増殖することとなった。

そんな時代、世界最大のメインフレーム・メーカーであるIBMの業績が伸び悩んでいた1993年4月、IBM初となる外部招請の会長兼最高経営責任者(CEO)に就任したのが、ルイス・ガースナー(Louis V. Gerstner, Jr.)だ。

かれは、マルチベンダーシステムの組合せが、お客さまの大きな負担になっている現実に直面し、これまでのIBM純血主義を転換して、マルチベンダー・システムの組合わせを一括してサポートすることを表明した。当時、私はIBMで現役の営業をしていた。そのころの私は、「他社製品との組合せを保証できませんからIBM製品で統一しましょう」と売り込んでいたわけで、これはもう青天の霹靂だった。

彼は、「マルチベンダー製品も含むお客さまのシステム全体を一括してサポートする」ことを「ソリューション」と表現した。そして、このソリューションを提供するサービスを「システム・インテグレーション」と説明したのだ。

「ソリューション」という言葉は、既に1980年代頃から使われていた言葉だ。当時のソリューションは、「プロダクトよりレベルの高い仕事をしていますよ」というための言葉であり、各社各様の定義のもと、キャッチフレーズ的に使われてきた言葉だった。また、「我が社のソリューションは・・・」というので話を聞くとパッケージソフトウェアやハードウェアであったりすることも少なからずあった。

ソリューションという言葉が各社各様に使われていた当時、IBMが示したこの定義は、時代の要請に応えるものだった。そして、この考え方が、IBMをハードウェア・メーカーからサービス事業者へという事業構造の転換を促す礎となった。

つまり、ソリューションという商品は、特定の商品を意味する言葉ではなく、「お客さまの課題を解決することであり、それはマルチベンダーを前提とした手段の組合せの提供を含むものである」ということになる。

では、このソリューションという商品は、どんな形をしているのだろう。

答えは、「提案書」という形だ。

20141019_81431


ソリューションには形がないという人がいる。しかし、形のないものに人はどうやって対価を支払えばいいのだろうか。お客さまが稟議の手続きを進めようとされるとき、何を対象として検討し、判断すれば良いのだろうか。

形のないものは売れない。形にしなければならない。つまり、ソリューションという商品の形は、提案書ということになる。そこには、お客さまが意志決定するために必要な様々な情報が必要十分に盛り込まれていなければならない。なぜ必要なのか、目的は、手段や体制は、費用や期間は・・・それを見て、なるほどこれは欲しいと思わせることができなければ、お客さまに買って頂くことはできない。

当然、商品である提案書は美しくなくてはならない。誰が、汚い商品を買いたいと思うだろう。

内容がよければそれで十分という人がいる。私は、そうとは思わない。美しいとは、人にわかりやすく、確実に伝えたいという「思い遣り」のカタチだ。コミュニケーション能力の高さを表しているとも云える。ビジネスはコミュニケーションの産物であり、そこが確実にできないとうまくゆかない。提案書が汚いと言うことは、その能力の欠如を示している。そんな会社とはつきあわない方が良い。

提案書を受け取った相手は、どう思うだろう。自分の伝えたいことは書き込んだ。それで満足し、相手の知りたいことや相手がどう見てくれるかといったことへの気遣いがない。相手の思考フロセスを想像することもなく、ただ伝えたい内容を満たしたことに満足する。

伝えたという自分の満足ではなく、伝わったという相手の真実が大切だ。それを突き詰めれば、提案書は結果として、美しくなる。

ソリューションという商品は、お客さまの課題を解決することであり、自社の商品やサービスのことではない。ソリューションという商品の形は、美しい提案書だ。ソリューション・ビジネスとは、この当たり前の上に成り立っていることを忘れないようにしたい。


うまくいかないOJT、その原因と対策

OJT真っ最中の会社も多いのではないでしょうか。でも、なかなかうまくいかない、どうすれば良いか迷っている・・・そんな方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今週のブログでは、迷える育成担当上司の皆さんのために書かせていだきました。

みなさんは、 LiBRAをご存知でしょうか?

このブログでも時々紹介しているプレゼンテーション・チャートをパワーポイントのオリジナルデータで、しかもロイヤリティフリーでダウンロードできるサイトです。一部解説書や教科書もダウンロードできます。

既に一千数百ページのドキュメントを掲載しています。最新のITトレンド、営業スキル、営業活動プロセスなど、営業活動の実践にすぐに使えるものです。

最近特にダウンロードが多かったのは、新入社員向けのITトレンド研修の教科書でした。それ以外にも、クラウドやIoT、ビジネスインテリジェンスの最新動向やDockerの解説なども人気があります。

自分の提案書の素材に、社内やお客様向けの説明会資料に、自分の作った資料も取り混ぜながら自由に加工編集して頂くことができます。

閲覧は無料です。ダウンロード頂く場合は、500円/月の会員になっていただく必要がありますが、これだけの資料を自分で作ることを考えれば、ご納得頂けるのではないかと思っています。

一度お立ち寄り頂き、ご覧頂ければ幸いです。

Libra_logo300x53

システム・インテグレータの今と次のシナリオを考えて見ました

system_cover

「システムインテグレーション崩壊」

〜これからSIerはどう生き残ればいいか?

  • 国内の需要は先行き不透明。
  • 案件の規模は縮小の一途。
  • 単価が下落するばかり。
  • クラウドの登場で迫られるビジネスモデルの変革。

Follow Us on Facebook Facebookページを開設しています。「いいね!」やご意見など頂ければ幸いです。

Comment(0)