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クラウドならではの新しい費用対効果の考え方

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IBMの IaaSクラウド・サービスSoftLayerが大幅な値下げを発表した。下げ幅は、物理サーバー: 平均22%、 仮想サーバー: 平均51%、 メモリアップグレード: 最大86%という大幅なものだ(SoftLaterのプレスリリース)。

今年に入り、AWS、Google、NTTコミュニケーションも大幅な値下げを発表している。AWSに至っては、2006年3月14日のサービス開始以来42回の値下げを行っている。また、大手クラウド事業者は、「規模の経済」による競争を一層加速しようとしているようだ。昨年から今年にかけて、数千億円規模の投資計画を各社が発表している(こちらに詳しく紹介されている)。

クラウド利用の投資対効果を考える時、この将来にわたる値下げを織り込んでおくことが必要であろう。

 

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先日、あるユーザー企業のシステム部門長から、「うちのサーバーをクラウドに移設するのにどれだけかかるか見積もってもらったが、これまでのホスティングと比べて安くはならないし、移行の手間を考えると割に合わないことが分かった。」という話を聞いた。国内の大手SI事業者が見積もってくれたという。しかし、話を聞けば、構築や運用は全てユーザーの要望に対応するというもので、「クラウド」というよりも「仮想ホスティング」とも言うべきモノのようである。当然、費用は数年間の固定であり、顧客毎の個別投資に対する原価回収モデルのようである。これでは、コストが下がるはずはない。あらためて、本来の「クラウド」を前提とした試算を勧めた。

将来における投資対効果を織り込むという考え方は、リースが前提のシステム投資ではまず考えられない。なぜなら、リースは、購入時点でのコストパフォーマンスを長期にわたり固定してしまうからであり、その間、テクノロジーの進化によるコストパフォーマンスの低減効果を享受することができない。

クラウドで、将来にわたり、どれだけ利用料金が下がるかを確定的に見込むことはできないが、先にも示したように「規模の経済」を追求しようとしている各社の施策を考えれば、少なくともここ一、二年先は、今年各社が行ったと同様の値下げは続くのではないだろうか。

確かに、移行に一定の費用がかかることは先行投資として考慮する必要はある。しかし、VMwareやHyper-Vなどの主要は仮想マシンイメージが使える環境も用意されるようになり、その負担も軽減されつつある(AWSのVM Import/Exportについて)。

さらには、運用管理の負担も大きく減ることを考えると、このようなパブリック・クラウド・サービス(IaaS)への移行は、十分に魅力的なものになりつつある。

このようなサービスを利用するユーザー企業のコストメリットは言うまでもないが、ITベンダーにとって、これは大きなチャンスと受け取るべきだろう。特に、ハードウェア販売を行っていない、あるいは、収益の依存が少ないベンダーにとって、これまでは大きな初期投資リスクを覚悟しなければならなかった独自のサービス提供が容易になった。OSSをうまく利用すれば、投資リスクの軽減だけでは無く、新しいテクノロジーを利用し、時代に先行するチャンスも手に入れやすくなった。

「システムを売るビジネスから、システムを利用してサービスを売るビジネスへ」の転換の環境が整いつつあるともいえる。

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問題は、人月が稼げる時期に、経営者は、人的リソースをそこに投入する決心ができるかどうかである。もともと利益率の低い人月ビジネスは、一旦需要が減れば、キャッシュが回らなくなるリスクをはらんでいる。だからこそ、そうなったときに備えて、今のうちに手を打たなければ、そのときが来てからでは何もできないことを覚悟しておかなければならない。

時代は、明らかに大きな転換点を迎えていることを認識しておくべきだろう。

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