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プライベートクラウドへの追加投資はクラウドのピークを待ってからでも良いのではないか

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前々回のエントリーにてクラウドを導入していない企業を少しばかり挑発したわたくしですが、今回はどうしてもプライベートクラウドを推進したいベンダーの方々に救いの手をさしのべたいと思います。

偉そうに書いてますが小心者です。

そもそも、クラウドに移行しないことの理由にパフォーマンスの問題を取り上げました。とりわけネットワーク帯域については時に深刻な問題に発展しかねません。

通常インターネットはベストエフォート型のサービスで、光回線でも100Mbpsマックスになることなどあり得ません。ちなみに我が家はここのところ8Mbpsで落ち着いています。他の部屋の住人がやばいソフトでやばいものでもダウンロードしているのでしょうか。

そんな状況で、ますます扱うデータ量が増えるIT環境を、インターネット越しに使うというのはスピードが重視される昨今において自殺行為だといわれても反論しがたいものがあります。

それでも、適材適所で選択し、なるべく所有しないという選択肢が有効であるという考えは変わらないのですが、その考えが果たして5年後に通用するのかという疑問が頭をよぎったわけです。

思えばITは常にネットワーク速度、処理速度、スペースの三角関係を内包しながら成長してきました。あっちを立てればこっちが立たずという関係の中、ITの中の人の努力のおかげで共倒れをすることなく強靱なシステムを作ってきました。

そうした歴史を踏まえ、5年後の姿に思いをはせながら今回のエントリーは幕を開けるのです。


ADSL、FTTHの次に来る通信規格は?

今後、クラウドが普及するための条件としてはインターネットの通信速度が鍵となることは間違いないでしょう。

現在、インターネットの最高速度は1Gbpsでしょうか。普通に使う分には不足しようがない速度ですね。しかし、企業の大半のアプリケーションをクラウドで利用するとなるとどうでしょうか。

数十人、いや、数百人で利用するにしてもおそらく問題はないでしょう。ただし、前々回も取り上げたようにレイテンシの問題は回線速度の向上では解決できません。

しかし、それ以上に問題になることが予測されるのが「処理速度の飛躍的な向上」だとわたくしは考えます。


コンピュータの進化、通信の進化

ここ最近で大幅な処理速度の向上といえばSSDですね。今までCPUやメモリの足を引っ張りまくっていたディスクの速度問題を一気に解決しました。ランダムアクセスの速さたるやもうどうにも止まらない感じです。

その上数年後には量子コンピュータの登場が期待されていたり、先日NTTが発表した「ばね」を使った処理技術など、コンピュータの処理速度の向上は夢があふれています。

その点通信速度については今後どの程度の発展が見込めるのでしょうか。どちらかといえば速度向上よりもポータビリティの強化に向かっている様子でもあります。1Gbpsなんて必要ないからほどほどの速さでどこでもインターネットを使いたいという要望が大きくなっているこの頃、いかがお過ごしでしょうか。

ソフトバンクが光の道構想をぶち上げてはいますが、果たしてコンピュータの処理について行けるような速度を出すことができるかといえばそういう構想ではないようです。

現在では光ファイバーに10Gbps程度のデータを流すことは可能ですが、それ以上の速度を出すことはできるのか。多くの企業がビルに居を構えている状況であり、そこではメタル回線を利用せざるを得ないという事実。メタル回線にGbpsクラスのスピードでデータを載せることは絶望的に困難なのではないでしょうか。

コンピュータの性能が上がり、圧縮技術も向上すれば現状の回線速度でも効率よくデータを流せるからクラウドの性能向上の恩恵を、利用者も受けられるという考え方もできますが、圧縮速度は上がっても圧縮率には限界があって、結局利用する上での性能向上には限界があるようにも思えます。

かといって、新しい媒体で通信速度を向上させようとしても、すでに張り巡らされた膨大なファイバーをどうするのか。そんな問題が残っています。各家庭に1Gbpsでインターネット接続を行なうというところがコストパフォーマンスのバランス的に限界かなと、そんな気がします。

そうなると、企業内のネットワーク設備を刷新して数Gbpsオーダーのデータを扱える環境を用意した方が効率が良いという結論に、5年後くらいには達していてもおかしくないのではないでしょうか。


サーバー仮想化の進化

そしてさらに、サーバー仮想化の進化がプライベートクラウドを導入する閾を下げることになるでしょう。

今はまだ若干専門的な技術が必要なサーバー仮想化ですが、数年後にはちょっとコンピュータを知っていれば導入できるような簡単なものになる可能性があります。そして、その頃には企業全体のITリテラシーも相当に高くなっているでしょう。システムの構築を外部に依頼しなくても済む時代が来ないとも限りません。

やはり、5年もすると社内システムは自分たちでまかない、クラウドなんて低パフォーマンスのサービスを利用するのはあほらしいよね、という時代が来る気もしてきます。


分岐点はいつ訪れるか

そうなると気になるのは、どのあたりのタイミングでIT屋さんは仕掛ければいいのかということ。

今回は一応5年後という想定で話を進めています。思いつきで5年としましたが、以外と良い線行っているんではないかとも思います。おそらく、処理性能の発展は数年内に爆発的に向上するでしょう。しかし、それに伴い、回線速度ではなく、回線効率が向上してくるのではないかとにらんでいます。

もちろん回線効率には限界があるのですが、現状の効率にはまだまだ向上の余地があり、改善を続けることでクラウドが何とか持ちこたえそうな感じです。もちろん、クラウドアプリケーションも余分な飾りなどをそぎ落として、実質的な部分にリソースを割くような努力もするでしょうし。

そんなわけで3年後くらいにピークを迎え、その後なかなか新しい方式を企業が受け入れず、結局5年がたってしまう。そんなシナリオを考えています。


おわりに

今回、この変化の早い時代に無謀とも思える5年先予測をしてみました。果たして結果はどうなるのでしょうね。

もしかしたら、クラウドだとかプライベートだとかいう概念すらない、全く新しい技術が登場しているかも知れません。人間自体がインターフェースを持っているような世の中かも知れないし、考え始めたら妄想が止まりません。

身も蓋もない話をしてしまうと、そもそも数年先ですら読むことなんてできないでしょうから、いろいろ想像して楽しむ程度にしておいた方が良いかもしれませんね。

では。

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