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「柏崎刈羽原子力発電所6号機の放射性物質の漏えいについて」という発表について

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 日曜の朝、新潟で大きな地震がありました。被害に遭われた方々、家が壊れてしまったとか、避難所で不自由な生活を強いられているみなさんのご苦労ははかりしれないと思います。一刻も早い復旧をお祈り申し上げます。

 さて、この地震に関連して、ちょっと不思議な感じがしたことがありました。

 それは、放射性物質漏れについての東京電力の発表内容です。

 「柏崎刈羽原子力発電所6号機の放射性物質の漏えいについて」という7月16日付の発表ですが、気になる漏洩状況について、

”法令で定める値以下であり、環境への影響はありません”

となっており、当日の記者会見でもほぼこの文面と同じコメントが読み上げられていました。

なにが不思議かと言いますと、

  • まず、法令で定められた範囲内であるということが第一に主張されていること。
  • 次に、環境への影響はありませんというだけで、近隣住民の健康に問題がないということに明示的に言及されていないこと。

です。

 発表後のニュースで、実際に漏れた放射能は、”ラドン温泉6リットル分くらいで、人体にも環境にも影響は無いとのこと”という説明がされていましたが、発表文だけではこれらはわかりません。

 公式な発表内容が、まず法令の範囲内ですよ!ということからになっているということと、人体への影響について述べられていないことから、感じたのは、

”この発表はいったい誰に向かって発せられたものなんだろうか?”

という疑問です。

 もちろん、法令順守はJ-SOXなどという以前から、企業にとってとても重要なことですし、電力会社が環境への影響に気をつけるのもまたきわめて大切なことでしょう。

 しかし、情報として先ず必要なのは、どの程度の放射能が漏れたのか、そしてその量だと周辺の人々の暮らしにどのような支障が出るのか、出ないのか、そういうところではないでしょうか。

 もっともここでは、この東電の発表の仕方に問題があるとか、間違っているとかいうつもりはありません。ただ、普段から身近に原子力発電所があって、その安全性を信頼して暮らしている人がたくさんいることを考えると、まず最初の発表の時点では、法律に対してどうこうということよりも、漏れた放射能は普通に人が触れることもある程度で、健康や生活には問題はないレベルですよ、ということを伝えるのが自然な発想なのではないだろうかという気がしたというところなのです。

 普段、マーケティングの仕事をしていると、発表文やプレゼンテーションなど、なにかを伝えようとするときに、そのメッセージは誰に向けて、どんな理解をしてもらうために発信するのか?、そしてそれはどういう情報をどんな言葉にするのが最適なのかということをとても考えます。

 そんなわけで、僕はどうも不思議な発表内容だなと感じましたが、みなさんはどうでしょうか?

 

余談ですが、これだけの災害が起こって、大規模に避難が行われている状況の中でも特に暴動や略奪などの非道なことが行われていない(そのような報道はないようです)ことから、本当にこの国の人たちは人間としての社会性に長けた住人なのだなと改めて感じさせられます。そういう国に生まれたことは、誇りに思っていいのではないかと思います。

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