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Amazon Web ServicesとSalesforce.comがクラウド事業から離れる!?

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enStratus社のJames Urquhart氏はいつも興味深い記事を投稿しているが、久しぶりにビジネス色の濃い記事をGigaOmに投稿してます。

題目は、「何故、AmazonとSalesforceがクラウド業界から撤退しているのか?」という一見ショッキングな内容。

彼は、2011年にに似たような予測をしていて、その時はMicrosoftとGoogleが次のクラウド業界を独占するだろう、とうものであった。この予測は見事はずれ、今はAWSとSalesforce.comが市場の2台巨頭である事を認めている。

この辺のスタディの経緯、また、何故今はAWS、Salesforce.comなのか、まずはその辺からの説明を行っている。

クラウドコンピューティングは今や、万能選手ではない、という事は市場が十分に理解している。ここ数年の間、様々なクラウドサービスが登場しているが、本当に成功しているのは、ほんの一握りしか無い、と言うのが彼の解釈。

SaaSに関しては、まずこのカテゴリー自体が事業として成立している事自体が驚きであるが、つまるところ、特殊なコンシューマアプリケーション、もしくは汎用的なビジネスアプリケーションでの成功事例が全体を占めている、と言える。

IaaSに関しては、2つのアプリケーションモデルしか成功させていない、と言える。一つは、大規模なウェブアプリケーションと、データ分析/処理アプリである。一方、企業のレガシーアプリケーションのクラウドへの移行はまだ大きな動きになっていないし、今後もあまり期待されていないのが現状。結局、IaaSの価値は、アプリケーションのもつ2つの要件、i) 大量の演算処理の高速実行(データ処理)、ii) 負荷の変動が激しいアプリ(Webアプリ)に限定されている、という事が言える。

PaaSに関しては、期待が大きい一方、IaaS/SaaS程の利用実態が無く、今後期待されるのは、IaaSで成功しているアプリのための開発/運用環境、もしくは特定のSaaSアプリの機能拡張のための環境という2つに限定されるのでは、と考えられる。

何故、Amazon Web Servicesがこれだけの巨大な独占事業に成長したのか、その理由は決してAWSが他社が追随出来ない機能やサービスを持っていた、と言う訳ではない。最大の問題は、競合他社がAWSに真に対抗すべく戦略的な動きを取らなかった事にある、と言いたい。IaaS事業者の殆どはEC2やS3と同等のサービスに加え、場合のよってはRDS(DB)やSimpleDB(Key value store)と同等の機能をサービスとして提供しているが、この程度ではAWSが本質的に持っている力と戦略を理解している、とは思えない。 AWSの本当の戦略性は、Reserved InstanceとかSpot Marketのようなクラウドインスタンスを再販する事業モデルや、統合された管理コンソールの提供、また、クラウドユーザの求めている本当のクラウドサービスの品揃えをしっかり把握し、実行に移している、と言う点である。

たしかにMicrosoftは競合力はあるが、今は開発者に特化した開発コンポーネントを提供しているサービスに過ぎないのが現状である。AWSのサービス開始当初もそうであったが、クラウドの本当の価値は、企業の開発部門では無く、オペレーション部門にもたらされる、という事をAWSが知った時点から大きく成長を遂げた、という事が言える。これは、James Hamilton氏が長く主張していたポイントである。Reserved InstanceやSpot Marketは正にその戦略の現れである。

この流れの中で、最近新たに、Glacierと呼ばれるデータアーカイブ専用の低コストクラウド、EC2 Reserved Instance Marketplaceという、Reserved Instanceを再販できるマーケットプレイスが発表されている。11月に予定されている同社のカンファレンス: re:Inventにおいても、このビジネスの新たな方向性がさらに明確になる事が予測されている。

一方、GoogleもAWSと競合するポテンシャルを持っているが、上記にオペレーション部門に対するサービスを確率する動きはまだ何も見えていない。アプリケーション開発の管理インタフェース、様々なGoogleサービスを統合的に管理するコンソール等、まだまだ道のりは長い、と言える。

このような状況を見るにあたり、AWSの確固たる地位が単に機能セットとかサービスの種類、という事ではなく、ターゲット層の見極め、それに適合したメニューの確率、と言う点で大きく他と差を付けている、と言うのが論点である。

もう一つ、クラウド市場で成功する大きな要件になるのは、様々なビジネスサービスを単一のインタフェースを通して提供する事が出来る、という事である、と信じる。しばらく前まではMicrosoftやGoogleの様に業務アプリケーションを多く持つ会社がこのセグメントリードする、と思っていたが、今はSalesforce.comが大きく市場を牽引している、と言える。

Sadagopan Singham氏が書いたブログが先日開催されたDreamforceイベントについて述べているが、このイベントに参画して実感したのは、Salesforce.comは「Enterprise Nerve Center」(企業の中枢神経)を目指しており、企業内の様々なビジネス要件に対して統合的にサービスを提供できる中心的な存在である、と解説している。

Salesforce.comの最大の強みは、企業内の従業員、そのパートナー、そして顧客との間のコミュニケーションの統合、それもビジネス面に加え、ソーシャル面でも同じ様にまとめあげる事が出来る、と言う点である。新規の業務が発生すると、それをうまく企業内の各部門に効果的に展開し、納期、売上を最大限に最適化するが結果的に見えるメリットである。自動化の促進、人間同士のコミュニケーションの効率化、そしてそれをすべて定量的に評価/分析できる、と言う点も優れている。

これは非常に先進的なアプローチである。従来の企業の事業に於けるITソリューションと言うのは、ドキュメント/帳票を電子化し、それを企業内でうまく回す事に注力されていた。結局それを動かすのは人間である事には変わらないし、コミュニケーションも従来の電話、emailの世界から脱していないのである。

Microsoftはこの先進的な市場をさらに先に持っていく力を持っている。Oracleもポテンシャルがある、と言える。かなり距離を置いてGoogleがうごめいている、と言う感じ。しかし、Salesforce.comはこの中で特に秀でて企業内のビジネスモデルを電子化する事に成功している、という事が出来る。

Disruptionというのは正に、AWSやSalesforce.comが実現しつつあるビジネスの事をさす、と言える。

両社については、今のこの状況が今後の市場のリーダーシップを保証する訳では決してないが、既存の機能セット重視、開発者をターゲットとしたクラウド事業から、企業業務全体、さらにオペレーション部門をターゲットとしたクラウド事業に変遷を遂げたこの2つの会社は、新たな市場の開拓、そして確固たる市場シェアの確率に大きく寄与する可能性がある、と言える。

一つ、今後起きうる可能性のある動きとしては、後続部隊の中で、Microsoftが大きく事業を延ばす事である。

従来の事業モデルだった製品ビジネスからサービス主体のビジネスへの移行、時間はかかりつつも、確実にその方向に向かっている事実がある事、さらに既存の大きな資産をこの新しい事業に移行するのは時間の問題である、と言える。

懸念されるのは、他のクラウド事業者がAWS、Salesforce.comのポジションからまだ遠く離れている、と言う点である。クラウドにとって、まだ開拓されていないニッチの市場もあるだろうが、そういった未開拓の市場へ参入もまだ見られない(様はAWS/SF.comが既に凌駕している市場に入り込んでいるだけ)。

以前から、クラウド事業は技術ではなく、ビジネスである、という事は内外から言われていたが、さらにビジネスから流通モデルへの変遷が起き始めている、と言うのがこの記事の言わんとしている事なのでは、と想像する。

この領域は、IT企業の持つノウハウだけでは通用しないところに至っている、と言う事が出来、そうだとすると、元々流通業であったAmazonの最も得意としている世界にクラウドを引き込んでいて、それを我々羊達が大人しくついていく、というモデルが出来上がっていると思うと少しがっかりもする今日この頃である。

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