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クラウドの定義を改めて評価: Cloud In A Boxの問題:標準化がなぜ出来ないのか、等

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本記事は、Marc Benioff氏以下、Salesforce.com関係者が名を連ねている、CloudBlogと呼ばれるブログでJohn Taschek氏の書いた記事の要約+個人的な分析;

先日発表されたOracle社の"Cloud In A Box"ソリューションに対して、様々な意見が飛び交っている。
全体的に反論する意見が多いように見受けるが、その代表的なコメントとして、Beagle Research GroupというCRMを中心としたコンサルティングを行う調査会社のCEOである Denis Pombriant氏の意見が興味深い。

"The idea of cloud in a box, private clouds and public clouds is completely contrary and it devalues cloud computing to the point of nothing." - Denis Pombriant

「クラウドを箱に入れよう、という発想自体がそもそもプライベートクラウド、パブリッククラウドの議論と合わせて矛盾をさらに深めるもので、既にクラウドコンピューティングの定義自体がなくなってしまっている。」

という大変鋭い意見である。
CloudBlog関係者がDenis Pombriant氏とインタビューを行い、さらに"Cloud In A Box"に関する意見についてヒアリングした。
インタビューの中でいろいろと述べているのでそれ自体読み応えがあるが、最も重要なポイントは、クラウドを複数形で使う、という現状に対する懸念である。

つまり、Oracleが提案するようにクラウドを「箱」に入れる、という事が問題なのではなく、そうする事によって複数のクラウドをどんどん作ってしまう、というビジネスモデルが、結局従来のProprietaryなITビジネスモデルと何ら変わらないのでは、という意見である。

本人の言葉をそのまま転載すると、

The answer is that the multiple flavors of cloud computing aren’t fundamentally different and are really no more than the extension of an old paradigm, not a new one.
という事である。
この意見については、小生も強く共感をするもので、今後のクラウドコンピューティングのビジネスモデル、技術的な方向性を決める上でよくよく考えておかなければいけない課題である、と感じる。

まず、Oracleの取った戦略については、2年前にIBMが発表した、IBM Websphere CloudBurstと呼ばれるアプライアンス製品に非常に似ている。両社とも今やハードウェアベンダーである、という共通点がある、という意味では同じような戦略をとる事にさして大きな問題は無いが、IBMのこの製品はほとんど売れておらず、製品戦略としては失敗作である、という評価を受けている。

数年前から、複数のクラウドが存在する状況を見て、それを共通化する必要がある、という動きがある、NIST、Open Group、DMTF、CCIF、CSA、ETSI、OMG、SNIA、Open Cloud Consortium、OASIS、等、公共機関、ベンダーコンソーシアム等、多数の団体が動いている状況であるが、正直のところ、実際にそれが採用されるためには、いくつかの条件がある。
まず、業界に存在するすべてのクラウドベンダーがそれに同意し、投資をかけてその共通仕様を実現するための開発を行う必要がある。さらに、その先のシステムインテグレータ、アプリケーション開発ベンダー、エンドユーザもこの共通仕様に賛同し、実際に採用をするために投資する必要がある。

そこまで労力をかけてまで共通化する必要性が果たしてあるのか、という答えがあまり明確でない状況の中、業界全体を巻き込んだ標準化の動き、本当に一枚岩になって動く事が出来るのか、今ひとつピンとこないのである。ましてや、それをするための時間、本当に各社そんなに余裕があるのか、むしろそちらの方に課題があるのでは、と思われる。

なぜ標準化が難しくなってきているか、少し分析する必要がある。

その理由は、時代が一部のベンダーがOSレベルで事実上の標準規格を行っていたメインフレーム、UNIX、PCネットワークの世界から、複数のベンダーが事実上の独自仕様を維持しながら強調をする事によって構成されるインターネット、モバイルネットワークの時代に移り変わり、従来の「標準化」というものの意味、そしてその価値、ましてやそれを実際に市場に投入し、採用してもらうための時間とエネルギーは昔と全く事情が変わってしまっているのでは、と考えられる。少なくとも現在各団体が行っているクラウド仕様の共通化のスピードは業界の動きに全く追いついていない、というのが小生の正直な実感である。

IT業界を構成するプレイヤーが多くなっている事と、技術イノベーションのスピードが早くなった、という2点である。
Denis Pombriant氏が指摘するのは、Oracleのこの"Cloud In A Box"コンセプトがこの2点を阻止する動きの代表である、と暗に指摘している。

Oracleの客からすれば、マルチベンダー環境で揺れ動いているクラウドインフラ上に由々しくも自社のMission Critical資産をのせる位ならOracle一社で統一された、安定しているプラットホームを採用したい、という気持ちがある、と言える。それはそれで全くもって同意できる。ハード一台だけで$100万ドル払う余裕があれば、だが。

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