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InsecamからIoT時代の監視社会を考える

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レンズの向こうに誰がいる?

ここ数日のところ、Insecamというサイトが話題となっています。世界各地の監視カメラ・防犯カメラの映像を視聴することができるサービスです。サイト自体は数年前から存在し、昨年5月頃にも一度話題となったことがあります。安全のために設置されたカメラであっても、その映像がインターネットにより世界中から視聴できるとなると、当初の設置目的と異なる様々な問題を引き起こしかねません。

20160122.jpg近年のカメラは高性能化が進んでおり、遠距離でも個人の識別が可能な高い解像度を持つものもあります。さらに顔認証技術も広く実用化されており、映像から顔面の画像情報をデータベース化して蓄積し、個人の行動パターンを分析することも可能となっています。このような情報がインターネットを通じて公開されているとすると、特定可能な個人にとってはプライバシーに関わる問題となると同時に、蓄積・分析された情報がより深刻な犯罪を誘発する危険性もはらんでいます。

そもそも、なぜ防犯カメラの映像が世界中から視聴できるのでしょうか。まず、防犯カメラにはネットワーク接続機能を有しているものがあり、遠隔地からインターネット経由で映像を受信することができるようになっています。そしてそのようなカメラには通常パスワードによる認証機構が備わっており、パスワードを知らない限り、映像を受信したり設定を変更したりすることはできないようになっています。

ところが、このパスワードが出荷時のデフォルトパスワードのままであったり、そもそもパスワードによる認証を求めない設定で設置されてしまっていることがあります。そうすると、そのカメラは誰でも容易にアクセスができ、映像を入手することが可能となります。Insecamは、このような不適切なセキュリティ設定がなされているカメラを世界中から探し出し、国やシチュエーション別に分類したリストを公開し続けています。


防犯カメラを安全に管理するという責任

いまや防犯カメラはあまりに街中にありふれているので意識されなくなりつつありますが、近未来を監視社会として描くフィクション作品のように、行き過ぎた監視は私たちが本来享受すべき自由を制約してしまう可能性があります。そのため防犯カメラは、例えば犯罪やトラブルの発生が予想されるエリアに、その予防や捜査など目的を明確にして設置し、設置後は映像などの情報が不正に利用されることのないよう慎重に運用されることが望ましいとされています。

この考え方に基づいて、幾つかの自治体では防犯カメラの設置に関するガイドラインをまとめています。例えば神奈川県では防犯目的で公共の場所に設置されたカメラを対象に、「防犯カメラの設置・管理に関するガイドライン」を策定し公開しています。ガイドラインでは、被撮影者のプライバシーへの配慮を前提に、カメラの管理責任者を指定し、画像の安全な管理と目的外利用の原則禁止を求めています。

前述のように、出荷時のデフォルトパスワードがそのまま用いられていたり、そもそもパスワード認証が不要となっているカメラは、これらの安全管理義務を果たしているとは到底言い難いでしょう。Insecamのリストを国別に見ると、米国と日本が圧倒的に多い状況となっています。速やかな対処が望まれるところですが、そもそもガイドラインの設定されていない自治体もあります。安全とは程遠い我が国の防犯カメラの管理実態を示すものといえます。

参考:神奈川県「防犯カメラの設置・管理に関するガイドライン」 http://www.pref.kanagawa.jp/uploaded/attachment/579300.pdf


IoTによる監視とセキュリティ

そしてもう一点。IoTの語が世間を賑わせていますが、防犯カメラとIoTは親和性が高いと言われており、カメラの高機能化とネットワーク化に伴う様々な活用シーンが想定されています。例えば、単体のカメラではカバーできないような広範囲での個人の行動追跡が、複数台のカメラを連動させることで可能となります。あるいは、カメラの映像情報をセンサーやビーコンと連動させたり、外部のシステムやクラウドサービスに連携させることで、従来になかった高精度な分析と予測が可能になります。伊勢志摩サミットや東京オリンピックに備え、テロ対策などに活用されることが期待されています。

このように私たちを取り巻く監視のためのデバイスは今後ますます増加して、私たちの情報はより細やかに収集され精緻に分析されることになるでしょう。それにより私たちの社会はより安全になるのかもしれません。しかし、その前に、収集された私たちの情報が適切に取り扱われているという信頼がなければ、安心して暮らすことは難しくなります。身近な一つ一つのデバイスがしっかりと管理されていることはその大前提であるはずです。Insecamが私たちの社会に突きつけている課題は、そのカメラが切り取った映像に留まるものではないのではないでしょうか。

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