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『公共事業予算拡大、建設業が復活するための課題とは?』 ~公共工事が増える背景と建設業が直面する課題~

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こんにちは!ハイアス&カンパニーの川瀬です。

今回は、建設業についてです。
地方にとっては基幹産業である建設業。今後はどうなるのでしょう。

■建設予算が拡充、公共事業増加へ

「構造不況業種」と言われ、この数十年間で最も事業構造の転換を迫られた業種のひとつが建設業でしょう。

1950年代中盤以降の高度経済成長を支え、またその主役の一角を担ったのは全国の「ゼネコン」でした。莫大な公的資金が建設業界に投入され、日本中に道路やダムが作られました。

国の公共建設事業予算は、地方への予算の分配でもありました。どこの地方でも地元の名士といえば、議員さん、役人さんの他は銀行支店長と建設業の社長でした。

しかし、それも1990年代までのこと。2000年代に入った頃から「もう道路もダムも要らないのではないか」という風潮になり始めます。国の財政が悪化したこともあって、公共事業費も削減され、全国の建設投資は減っていきました。

「脱ダム宣言」とか「コンクリートから人へ」と言ったフレーズが人口に膾炙するたびに、ゼネコンは減っていきました。

「脱公共」が地方ゼネコンの合言葉となり、公共事業頼みだった事業構造を転換させて民間工事を受注できるようになろうと全国のゼネコン経営者は躍起になりました。

しかし、建設業界で数十年続いたこのトレンドは、この先また変わっていくのかもしれません。

<公共事業最大2割増 来年度一般会計、初の100兆円超>

(2018年12月5日付 日本経済新聞)

『政府は老朽化した重要インフラを補修するため、2018年度から20年度までの3年間で3兆円超を投じる方針を固めた。年末に決める19年度予算案では1兆円程度を計上する。当初予算ベースの公共事業関係費は前年度より最大で2割増の7兆円規模と、10年ぶりの高水準になる。縮小してきた公共事業が増加に転じ、歳出の選別が急務になる。』

公共事業の予算は1997年の9.8兆円をピークに年々下がり続け、最近では大体6兆円前後で推移してきました。しかし、2019年予算では公共事業費が大きく増加して、7兆円を超える規模になるということです。さて、建設業界は今後どのようになっていくのでしょうか。

■なぜ公共事業予算が増えるのか?

2019年予算で公共事業を上積みする背景には短期と中長期の課題への対処があるようです。

短期的な課題は「消費増税対策」です。2019年10月に予定されている消費増税にともなって懸念される景気変動に対応するためのいわば景気刺激策です。公共事業だけでなく、自動車や住宅の分野へも予算が振り向けられるようです。

もうひとつ、こちらの方がゼネコン業界にとっては重要なのですが、中長期的な課題である「日本のインフラの老朽化」への対処です。

今年の西日本豪雨や北海道地震を受けて、政府が全国のインフラを点検したところ改修が必要とされたものが膨大に見つかったとのことです。高速道路や橋、ダム、堤防など日本のインフラは作ってからもう50年以上経過しているものが数多くあります。これだけ古くなってくると当然インフラの補修は必要になってきますよね。

その規模が驚きです。

『国交省によると、損傷が深刻になる前に予防的な補修を実施しても、補修には今後30年で約195兆円かかる。インフラ補修だけで、1年分の公共事業費がかかる計算だ。』(日本経済新聞記事抜粋)そうです。

「30年で195兆円」って、一年あたり6.5兆円です。2019年の7兆円規模の公共事業予算がこれからもずっと続くということなのでしょうか。

■建設業者が直面している課題とは?

インフラの維持・整備は非常に重要なこと(本当に195兆円も必要なのかというのはひとまず置いておいて)ですが、課題は今の建設業界がそういった社会的要請に応えることが出来るのかということです。

建設業界が縮小トレンドになって20年近くが経過し、建設業者の状況は大きく変わっています。

まず、建設事業者数が大きく減っています。

建設業の許可業者数は2015年時点で47万社とピーク時から27%減っています。

さらに問題なのは、働き手です。

建設業界で働く就業者数は、ピークだった1997年の685万人を境に年々減り続け、2016年には500万人を割り込みました。このままいくと2040年には200万人を切るのではないかと予測されています。

しかも、建設業の就業者はかなり高齢化しています。

55歳以上の就業者の割合が、全産業平均が29.3%なのに対して、建設業では33.9%。一方で、若い働き手はどうかというと、29歳以下の就業者の割合が全産業平均の16.4%に対して、建設業は11.4%です。

高齢化も問題ではありますが、一番の問題は若い労働力が建設業界に入ってきていないことです。

なぜ、若い労働力が建設業に入ってこないのでしょうか?

国道交通省の調査によると、「若手の建設技能労働者が入職しない原因」で最も多いのは、「収入の低さ」(57.7%)です。他の「仕事がきついから」(44.3%)「休日が少ないから」(37.8%)と合わせて考えてみても、労働環境の厳しさがうかがいしれます。

ちなみに、「若手の建設技能労働者が離職する原因」で最も多いのも、「収入が低いから」(64.7%)です。

なぜ建設業就業者の収入は低いのでしょうか?

それは建設業の生産性が低いからです。建設業の労働生産性はこの20年で大きく下がっています。

内閣府の統計によると、全産業平均の労働生産性が4,196円/人・時間なのに対して、建設業は、2,519円/人・時間です。全産業平均の6割以下しかありません。

しかし、統計データを見ると、実は1994年までは建設業の労働生産性は全産業平均を上回っていました。この20年で製造業や金融業などが労働生産性を上げていく中、建設業は下がり続けました。

生産性が低いので当然賃金も低くなります。もともと建設現場は3K(きつい、汚い、危険)と言われ、イメージもあまり良くない上に、給料が低く、成長分野でもないとなるなら若い人が希望するはずもないですね。

ここが建設業界の一番大きな問題点だと思います。

■新しい建設業の姿を

建設業は、地域インフラの維持・整備だけではなく、災害時の対応や地方での雇用という面でも「地方創生を支える業界」として期待されています。

しかし、その生産性の低さ、イメージの悪さから今や建設現場を担うのは高齢者と外国人ばかりです。

建設業界は成長分野とまでは行かなくても、少なくとも今後も安定的に需要が見込める業界だと認識が、変わりつつあります。その中で、今後も地域社会の期待に応える企業であり続けるためには、「公共予算が増えた」と喜んでいるだけではダメで、いかに業務の生産性向上に取り組むことが出来るかどうかにかかっています。そうしないと労働力が確保できなくなるからです。

生産性向上に資する設備やIT技術を導入したり、公共事業だけに依存するのではなく、街づくりなどの付加価値の高い分野に事業領域を拡大したりして事業基盤を拡充しなければなりません。

地方経済にとって建設業は重要な産業です。もっと生産性を上げて、若い人たちが夢をもって働けるような事業環境を作り上げていただきたい。高度経済成長時代とは違う「新しい建設業」の姿を期待しています。

今回は以上です。

次回もお楽しみに。

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