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『赤字決算の吉野家にみるサービス業の行く末とは?』~人件費を抑える経営は限界に、今後の改善の方向性は?~

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こんにちは!

明るく前向きに自分の財産を築いていこうと頑張るみなさんに、ハッピーな人生を送るための情報を提供する「ハッピーリッチ・アカデミー」管理人の川瀬です。

■吉野家、赤字決算。その理由は?

デフレ経済の強い味方、我らが吉野家の上期決算が赤字になったようです。
吉野家に何が起きているのでしょう?

<吉野家HDの3~8月期、最終損益8億5000万円の赤字 人件費上昇など響く>
(2018年10月5日付 日本経済新聞)
『吉野家ホールディングスが5日発表した2018年3~8月期連結決算は、最終損益が8億5000万円の赤字(前年同期は12億円の黒字)だった。売り上げが計画に届かなかったことや人件費上昇が響いた。退店による特別損失も業績を押し下げた。』

計画にこそ達しなかったようですが、売上高自体は前年同期比3%増の1,003億円。売上高から原価を引いた売上総利益も前期比1%増の644億円でした。しかし、販管費が前期比4.5%増の643億円と計画以上に膨らんでしまったようです。
そして、不採算店舗の閉鎖などに伴う特別損失を計上したことで最終8.5億の赤字となりました。

河村泰貴社長は「採用や教育、既存従業員の残業代など人件費が膨らんだ。増収分が食材や人件費などのコスト上昇を補うに至らなかった」と話したそうです。

下期も食材コストや人件費の上昇を見込んでいて、通期の2019年2月期決算も11億円の赤字の見通しとのことです。

■飲食店経営の重要指標「FL比率」で見ると・・・

問題は「人件費の高騰」です。
最近の人手不足を背景として吉野家だけでなく、外食業や小売業などサービス業全体で人件費が高騰しています。

記事によると、『主力の牛丼店「吉野家」は増収を確保したが、人手不足を背景にした人件費高騰が響いた。吉野家は外食業界のなかでもコスト全体に占める人件費の割合が比較的高く、人件費上昇が業績に与える影響は大きくなっている。』

吉野家の場合、「販管費の約45%を人件費が占める」とのことです。
18年3~8月期の販管費は、643億円でしたので、その45%が人件費ということは、
643億円×45%=289億円。

売上高が1,003億円ですから、売上高対人件費率は29%近くにもなります。

これはなかなか厳しい水準です。
経営コンサルタントが飲食業の経営診断をする際に重視する指標として「FLコスト」と「FL比率」があります。
「FLコスト」とは、F=food(食材費)と、L=Labor(人件費)を足した費用のことです。 そして「FL比率」とは、「売上高に占める食材原価と人件費の比率」のことです。 計算式は、FL比率=「FLコスト」÷「売上高」ですね。

「FLコスト」の適正な目安は、Fコストが売上対比30%以内、Lコストが売上対比20%前後と言われています。合わせて「FL比率」でいうと50%程度が適正水準の目安となります。

同じ飲食店でも業態によって違いはありますが、FL比率の平均はだいたい55%程度と言われています。そして、FL比率が60%を超えると危険水域、65%以上だともう破綻スレスレ・・・。経営を根本的に見直した方がよい、と判断されます。

吉野家は、2018年3~8月期の決算短信によると原価率が35%、そして人件費率29%です。
つまり、FL比率は64%です。
これはもう完全に危険水域です。恐らく不採算店舗もかなりあるでしょう。
そりゃ赤字決算にもなりますね。

■人手不足のためLコスト(人件費)抑制は難しい

吉野家としては今後、「食材仕入れルートの見直しとセルフ店舗の展開による人件費の抑制、合わせて不採算店舗の見直しを進めていく」ということです。

食材原価や不採算店舗の見直しは鋭意進めるべきでしょうが、人件費の抑制はなかなかすぐには難しいでしょう。

今の人手不足の状況は人口減にともなう構造的なものです。環境が好転することはなくこの先も人手不足は続くという前提で経営は考えないといけないと思います。

<人手不足倒産が過去最多ペース 月内にも前年水準超え> (2018年10月14日付 産経新聞)
『深刻な人手不足を背景にした国内の企業倒産が件数・負債総額ともに過去最多ペースで増加していることが14日、分かった。今年1~9月の合計は299件に上り、10月中にも平成29年の年間水準(317件)を上回りそうだ。従業員が確保できず事業継続が困難になったり、社員を引き留めるため賃金を無理に引き上げたことで収支が悪化したりしたケースが目立つ。』

生産年齢人口(15歳~64歳)は今おおよそ7,600万人くらいですが、ピークの1997年から約20年でおよそ1,000万人減少しています。内閣府によると、さらに20年後の2037年には7,170万人(約500万人減)、25年後の2042年には6,875万人(約800万人減)となる見通しです。今後も労働力人口の減少と人手不足は加速度的に進行していくでしょうね。

■付加価値を上げる方向で生産性の改善が必要

FL比率を下げるには、分子のFL(原材料費+人件費)が減らせないのですから、分母の売上高を増やさないといけません。 売上高=客数×単価、です。 新しいマーケットを開拓して「客数」を増やすとともに、「単価」も上げないといけません。

安さを強みとする「コストリーダーリップ戦略」を取っている吉野家としては、「値上げ」は戦略的な齟齬をきたすのかもしれませんが、それでも安さを売りにした戦略が限界に近付きつつあることは間違いないでしょう。

今、吉野家に行くと、従業員の多くは外国人の人たちです。
人件費の高騰を価格に転嫁できないからより安価な労働力を使う、というのは低生産性のツケを外国人に回しているだけです。これは長続きしないと思います。

値上げが出来ないから、生産性が恒常的に低いままです。低生産性だから給料は上げられません。 相場並みの給与を出して人材を確保した上で採算を取るには、人件費を抑えるのではなく、付加価値を上げる方向で生産性を上げなければいけません。

かつて、安さを売りにしていたユニクロもじわじわと値上げしています。展開を加速させているアジアではユニクロは高品質プランドとしてちょっと高めの価格帯で頑張っています。

生産年齢人口が減り続ける日本では人件費はこの先も上がっていきます。 給与を上げられない会社は人材が雇用できず、生き残っていけないでしょう。 結局、コストを販売価格に転嫁できないのは、提供している商品やサービスの価格に見合った付加価値がないとマーケットから判断されているということです。そういう企業は今の経営環境では早晩淘汰されると思った方がいいですね。

今回は吉野家を例に出しましたが、これは他の外食も建設業も小売店も、人を使うビジネスをしている企業はすべて同じです。

吉野家は何度も危機を乗り越えてきた企業です。我らが吉野家の復活を祈っています。

今回は以上です。 次回もお楽しみに。

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