明るく前向きに自分の財産を築いていこうと頑張るみなさんに、知らないと損する豆知識や社会情勢の変化の個人の生活への影響などを、ファイナンシャルプランニングの視点から発信したいと考えています。住宅・不動産の相談実例を踏まえたテーマの他、政治・経済の時事も興味をもったテーマを取り上げてみたいと思います。

『自己資本比率が高まった日本企業が評価されないワケとは?』 ~ROEはどのようにして上げるか、が重要~

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こんにちは!

明るく前向きに自分の財産を築いていこうと頑張るみなさんに、
ハッピーな人生を送るための情報を提供する「ハッピーリッチ・アカデミー」管理人の川瀬です。

今日はROEについてです。
会社で財務を担当している人や金融機関の人ならわかる話ですが、さて経営者の皆さまはいかがでしょうか。

■自己資本比率が高まった日本企業が評価されないワケとは?

先週日曜の日経新聞の一面に興味深い記事が載っていました。

<企業体力 喜べぬ最高 ~自己資本比率、昨年度4割超え~ 効率、世界標準に見劣り>
(2017年6月18日付 日本経済新聞)
『日本企業の体力が過去最高になった。
株主から預かったお金である自己資本が総資産に占める比率は2016年度に初めて4割を超えた。
破綻リスクが小さく財務が十分安定しているとされる水準だ。
バブル崩壊やリーマン・ショックに翻弄されながらも日本企業は利益を稼ぎ、内部に積み上げてきた。
資本が厚すぎると利益を生み出す際の経営効率が下がってしまうため手放しで喜べない。
安定か効率か。日本企業の経営戦略は分岐点にさしかかっている。』

「自己資本が総資産に占める比率」というのは、自己資本比率のことです。
経営に必要な資本を、借入金のようないわゆる他人の資本ではなく、株主から預かった資本や利益の蓄積などの自己資本でどれくらいまかなえているか、という指標です。
主に企業の安全性をみる財務指標になります。その自己資本比率が日本の上場企業全体で40%を超えてきたということです。
アメリカ主要500社の平均が32%ですから、これは世界的に見てもとても高い水準です。
日本企業の安全性が高まっていて、倒産リスクが小さくなっているわけなのでいい話ではないか、と思いきや記事の論調はそうではありませんでした。

■自己資本を減らしてROEを上げた方がよい?

記事はこのように続きます。
この「安全志向の日本の株式市場を世界の投資家は歓迎していない」、と。
アメリカやドイツ、イギリスなど世界各国の株価が次々と最高値を更新しているのに、日本の株価は2万円を前に足踏み状態。
これは「日本企業が株主から預かった資本を活用して効率よく利益を上げていない」と見られているからとのことです。

この株主から預かった資本(=自己資本)を効率よく利益につなげているかどうかを見る指標のことを「自己資本利益率(ROE=Return on Equity)」といいます。

計算式は、

ROE=当期純利益÷自己資本  (←厳密には×100する必要がありますが省略します)

例えば、1億円の資本を使って1,000万円の利益を上げる企業のROEは10%。
一方、同じ1,000万円の利益を上げるにも、使った資本が5,000万円ならその企業のROEは20%。
株式市場において投資家は同じ利益を稼ぐにしても、使う資本が小さい企業の方を「効率が良い=リターンが大きい」と評価します。

世界的な主要企業のROEは10%を超えています。
この「ROE2ケタ」というのが世界標準なのに対して、日本の上場企業の2016年度のROEは8.7%。
つまり、日本企業は大きな資本を使って少ししか稼いでいない、とみなされているということです。

だから記事はこう続いています。
『米国では自己資本が増えすぎないよう企業が調整している。
資本の膨張を株主還元で抑制し、これが株高の原動力になっている。(中略)効率性の観点では、日本企業の40%を超える自己資本比率は高すぎる。』

要するに、「自己資本を減らしてROEを上げた方がよい」と言っているわけですね。
さて、日本の経営者はこれをどうとらえたら良いでしょうか?

■ROEはどのようにして上げるのかということが重要

私は元銀行員ですが、企業の財務分析においてはROEだけを見て評価する、ということはありません。
というのは、ROEはその上げ方によっては問題があるケースもあるからです。

ROEの算式をもう一度じっくり見てみましょう。

ROE=利益÷自己資本

この式の分子と分母に会社の「総資産」をかけて分解すると以下のようになります。

ROE=(利益÷総資産)×(総資産÷自己資本)

最初の項の 利益÷総資産、はROA(総資産利益率 Return on Assets)といいます。
自己資本だけでなく、会社のすべての資産を使ってどれだけの利益を上げているか、という指標です。

そして、次の項の 総資産÷自己資本は、総資産が自己資本の何倍あるか、という指標でこれを「財務レバレッジ」といいます。
「レバレッジ」とは日本語で「てこ」という意味です。
少ない力で大きな成果をあげることを「てこの原理」といいますよね。
財務レバレッジとは、小さな自己資本でどれだけ大きな借入金をするかというような意味になります。

ROE = ROA×財務レバレッジ

つまり、ROEは借入を多くすると高くなる傾向があるのです。

例えば、同じ総資産が100億円あって当期純利益をどちらも5億円あげているA社とB社があるとします。
ただ、総資産の内訳が、A社は、負債50億円、自己資本50億円で当期純利益5億円。
B社は、負債80億円、自己資本20億円で当期純利益5億円だとします。

この場合のA社とB社のROEは、

A社 ROE=当期純利益5億円÷自己資本50億円=10%

B社 ROE=当期純利益5億円÷自己資本20億円=25%

となり、ROEだけをみると、B社のほうがA社の2.5倍も効率よく稼いでいる優良企業に見えます。

しかし、安全性をみる自己資本比率でいうと...、

A社 自己資本比率=自己資本50億円÷総資産100億円=50%

B社 自己資本比率=自己資本20億円÷総資産100億円=20%

安全性はB社の方が低いということになります。
B社の財務レバレッジは5倍。自己資本を大きく超えた他人資本で財務をまかなっていることになります。

ROEは上げ方が重要なのです。
例えば、多店舗展開を急速に行っている企業が、借入金を増やしてどんどんチェーン店を出店している場合などは要注意です。
出店コストを借入金でまかなっているため自己資本は変わりません。
だから新店舗の利益が少しでも上乗せになればROEは高まっていきます。
しかし、同時に財務レバレッジが高くなっていて、自己資本比率も下がっています。
もし不採算の店舗や、新規立ち上げが遅れたりする店舗が出てきたりすると借入金の元本返済や利息の支払いで資金繰りが厳しくなります。
急拡大していた会社があっという間に倒産することもあります。

財務レバレッジを効かせて事業を拡大していくことは、借入金の金利コストをはるかに上回るリターンが期待できる事業がある場合に限られるのです。
財務レバレッジを高めることはROEを上げることは出来たとしても会社の安全性は損なわれることにもなるからです。

■問題は自己資本が大きいことではない

出資者である株主からすればROEが高い会社ほど投資する価値が高いということはその通りです。
しかし、ROEは株主の立場に立った指標であって必ずしも経営者の立場のものではないということは要注意です。
欧米のように株主からの要請が厳しい社会においてはROEが重視されるのはわかります。
より多く借金をしてより多くの利益を上げた会社が株主から評価される社会ですね。
しかし、日本企業は元々堅実な経営が重視されてきました。
企業は長期的に存続・発展しなければなりません。
ROEばかりを追いかけるのは経営者としては本末転倒とさえ見られます。

正解は、資本コストを上回る事業利益を中長期的に上げ続けていくことです。
今の日本企業の課題は自己資本が大きいことではなく、大きな利益が見込める事業分野がないことです。
借入金利が1%前後という非常に資本コストが低い時代にもかかわらず、それすらも上回る事業領域がない、と日本の経営者が判断しているということなのでしょう。
世界の株主から見たら低成長期にある日本経済にはダイナミズムを感じないのも無理はありません。

やはり、成長戦略があるかどうかが大事なのだと思わされますね。

今回は以上です。
次回もお楽しみに。

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