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『ヤマトの宅配総量規制にみる物流業界の問題とは?』
~日本のサービス業の生産性を低下させているのは過剰なサービス?~

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こんにちは!
明るく前向きに自分の財産を築いていこうと頑張るみなさんに、ハッピーな人生を送るための情報を提供する「ハッピーリッチ・アカデミー」管理人の川瀬です。

宅配便トップのヤマト運輸が宅配事業を全面的に見直すようです。いつかこんなことになるのではないかなとは思っていましたが・・・。

■ヤマトが宅配総量規制へ

ご存知の通り、ヤマト運輸は宅配便で約5割のシェアを持つ最大手です。そのヤマトが荷受けを抑制するとのことです。今、物流の世界では何が起こっているのでしょうか?

<ヤマト、宅配総量抑制へ 人手不足受け労使で交渉  サービス維持限界>
(2017年2月23日付 日本経済新聞)

『ヤマト運輸の労働組合が2017年の春季労使交渉で初めて宅配便の荷受量の抑制を求めたことが22日、わかった。人手不足とインターネット通販の市場拡大による物流危機で長時間労働が常態化。「現在の人員体制では限界」として、要求に盛り込み、会社側も応じる方向だ。深刻なドライバー不足を背景に、広がるネット通販を支えてきた「即日配送」などの物流サービスにきしみが生じている。』

ヤマト運輸が荷受量の抑制に動く背景にあるのは「物流量の爆発的な増加」です。2016年の宅配便貨物の取扱個数は前年対比で6.4%増の約38億6千万個。6年連続の増加になります。
増加の一番の要因は「アマゾン」や「楽天」などのネット通販の増加です。ネット通販で荷物はどんどん小口化し、配送は多頻度化し続けています。急拡大を続けるネット通販ですが、それでもまだ日本の物販の総量からみると5%程度とのことなので今後もさらに拡大することが確実視されています。

これだけ市場が大きくなっているのなら、宅配最大手のヤマト運輸の業績もさぞや良くなっているかと思いきや、2017年3月期の決算予測では営業利益は前期比15%減の580億円。リーマンショック以来の低水準になるそうです。

すでにヤマトでは荷物の配送量が自社だけでまかないきれなくなっていて、高い値段で外部に委託しています。そのため今は扱う荷物が増えれば増えるほど、収益が圧迫される状況に陥っているとのことです。今のままの価格体系や仕事のやり方に限界がきているということなのでしょう。

■ドライバーは過酷な労働環境にある

これまでヤマト運輸は荷物の増加に対して人員の増強で対応してきました。グループ全体の従業員は約20万人で10年前よりおよそ3割も増えているそうです。しかしすでに人員確保にも限界が来ています。

厚生労働省によると、宅配サービスなどを含むドライバー職の2017年1月の有効求人倍率は2.7倍。全産業平均の1.4倍を大きく上回っています。
そもそもドライバーの仕事は過酷です。労働時間は全産業平均より2割も長いのに、年間所得額は全産業平均よりも約1~2割も低くなっています。ドライバーのなり手も減少しており、高齢化が進んでいます。

しかも小口の宅配は量が増えているだけでなく、サービスがどんどんきめ細かくなっていることが、ドライバーへの負担をさらに高めています。

不在のための再配達は全宅配の2割にもなっており、ドライバーの配送効率低下の大きな要因になっています。しかも荷物の再配達は基本的に無料。時間指定受け取りは夜遅くになることもあり、ドライバーの仕事が深夜にまで及ぶことも多いようです。

実際、深夜に頼んで翌日に届くような時もありますよね。しかも頼んでいるのが文庫本一冊、という時などは何となく申し訳なく感じます。そのきめ細かなサービスを可能にしているのが技術的なイノベーションのお陰などではなく、単にドライバーの頑張りだけであって、しかもそこに適正な対価も払われていないのだとしたら、これはもう仕組みそのものを見直すべきでしょうね。

■過剰なサービスが日本のサービス業の生産性低下の一因

日本のサービス業は生産性が低いと言われています。
生産性の公式は「生産性=付加価値額÷労働時間」です。
物流サービスの現状は、社員の労働時間が増えているわけですが、会社の利益も社員の給料も増えていないので、ますます生産性が低下していることになります。
今、物流の世界では生産性が落ちたツケを労働者であるドライバーが払っている格好になっています。

ヤマト運輸はこれまでも様々なサービスを他社に先駆けて生み出してきました。ネット通販を支える時間帯指定や再配達もそうです。しかし、海外では時間帯指定ができなかったり、再配達は有料だったりするのが普通です。無料で提供しているのは日本だけです。当日配送、翌日配送も海外ではあまりありません。

これだけのサービスをしているにも関わらず日本の物流費はとても安いのです。
お店で買ってもネット通販で買っても値段が一緒なら、通販の方が便利でお得ですよね。本来であれば消費者は利便性や時間の節約という付加価値を得ているのだからその対価を支払うべきです。しかし今は業界内の過当競争の結果、運輸会社とドライバーたちが負担してくれています。

これは明らかにおかしいですね。

■サービスには適正な対価を

日本は「サービスはタダ」という認識が確実にあります。消費者もサービスを要求するし、企業側も「お客様は神様です」とばかりにサービス合戦を繰り広げています。今や日本中に無料サービスがあふれています。中には過剰と思われるようなサービスもあります。
こういうことが日本のサービス業の生産性を欧米より低くしている一因になっていると思います。企業はこの際、ヤマトのように自社のサービスが過剰になっていないか、社員に過度な負担にかかっていないかを見直した方がいいと思いますし、消費者側もコストがかかっているサービスには対価を払うのが当たり前という認識を持つべきだと思います。

ヤマト運輸は、アマゾンなど割引料金を適用している大口顧客に対しても値上げを求めていくようです。人手不足は物流業界全体の共通課題ですから、競合他社も同じように動くのではないかとみられています。
宅配料金が上がるかもしれません。しかし、サービスの後ろには誰かに負荷がかかっているということを理解して、消費者側も適正な負担はしていかないといけないでしょうね。

「サービスはタダではない」という認識がサービス業の生産性を上げていくきっかけになるでしょう。ひいてはサービス業に従事する人の待遇の改善につながっていき、ますます日本のサービスの質を高めていくと良いな、と思います。

今回は以上です。
次回もお楽しみに。

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