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『「103万円の壁」は崩れるか?どうなる配偶者控除』 ~配偶者控除の廃止は税と社会保障のモデルを変える第一歩になるか?~

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こんにちは!ハイアス&カンパニーの川瀬です。

またまた「配偶者控除の廃止」が検討されています。今回はどうなるのでしょうか?

■配偶者控除廃止?今回はどうなる?

税制改革の長年の懸案であった「配偶者控除の廃止」
安倍政権の下でいよいよ動き出しそうです。
このテーマはこれからの私たち国民の働き方と税、
そして社会保障に関する考え方を大きく変える第一歩になるかもしれません。
注意深く見ておきたい動きだと思います。

<自民税調会長、配偶者控除見直し検討>
(2016年8月30日付 日本経済新聞)
『自民党の宮沢洋一税調会長は29日、日本経済新聞のインタビューで、
2017年度税制改正で専業主婦世帯を優遇する所得税の配偶者控除の見直しを検討すると表明した。
同控除を廃止し、共働き夫婦にも適用する新しい控除を18年1月にも作る案が有力だ。
伝統的な家族観や社会構造の変化にあわせ、女性の社会進出を阻む壁をなくしつつ、
結婚を税制面で後押しする狙いだが、与党内には慎重論もある。』

配偶者控除、いわゆる「103万円の壁」ですね。
現在、パートなどで働く妻の年収が103万円以下であれば、夫の課税所得から38万円を差し引くことができます。
これが所得税負担の軽減につながることから自分の年収が103万円を超えないような働き方をしている主婦は多くいます。
今この配偶者控除制度の適用を受けているのは約1400万人にものぼるそうです。
宮沢洋一自民党税調会長は、「この配偶者控除という制度があるために、女性が本格的な就労にブレーキをかけている。
女性に社会進出を果たしていただくための後押しが必要」と同制度の見直しの必要性を訴えています。

この配偶者控除廃止はもう10年以上議論されているテーマです。
適用を受けている人たちにとって配偶者控除の廃止は増税になりますから当然反発します。
それでこれまで見直しが進まなかったのですが、さて今回はどうなんでしょうか。

■「同一労働同一賃金」と「配偶者控除」の関係とは?

背景にあるのは、日本の財政問題と経済成長問題です。
2014年度の社会保障費はおよそ112兆円です。
高齢化により今後も増加していくこの社会保障費に備えるために政府は「税と社会保障の一体改革」を推進しています。
しかし、その財源としていた消費税の増税は景気を理由に延期されました。
今現在、政府は社会保障財源を失っている状態が続いています。

そこで政府が言っているのは「一億総活躍社会」
つまり、働ける人は高齢者も女性もどんどん働きましよう、というもの。
税収がなければ保障もない。
無い袖は振れませんからね。
経済活性化の足かせが労働力不足ならもっと皆が働ける環境を作ろう、というわけですね。

例えば今、政府が進めている「働き方改革」の主要テーマに「同一労働同一賃金」があります。
非正規雇用だろうが正規雇用だろうが、やっている仕事の内容が同じであれば同じ賃金にしようというものですね。
政府としては、非正規雇用の賃金をもっと上げたいわけです。
しかし、「103万円の壁」がある限り、賃金が上がれば年収が103万円を越えやすくなってしまいますから、主婦層は働く時間を抑えるようになる可能性があります。
今、飲食店などのサービス業ではパートさんが確保できない状況になっていますが、
今後「同一労働同一賃金」を推進すればするほど、ますます人手が足りなくなっていくことも考えられる、
だからその壁を取っ払おう、というわけです。

狙いは103万円の壁をなくすことなので、政府は「改正前後で所得税収はほぼ同じ」と税収中立が基本として増税を否定しています。
詳細はこれから明らかになっていくと思いますが、
今のところ「配偶者控除」のかわりに「夫婦控除」を導入することが検討されているようです。
妻の年収が103万円以上だろうが以下だろうが、
すべての共働き世代の世帯の所得税から一定額を控除するというものです。
これは年収103万円で働き方を調整しているような世帯にとっては良いとしても、
完全な専業主婦世帯や高所得世帯などにとっては増税になります。
反対意見が出るのは間違いないでしょうね。

■子育て世帯と介護世帯へは事前の配慮を

政府の狙いは、税制改正を通じて、経済の活性化と所得の再分配を実現すること。
つまり、労働の担い手と賃金を増やして経済活動の停滞を防ぎつつ、
家計収入を増やして消費と税収を増やしていく、
そして高所得世帯と低所得世帯にそれぞれ担税力に応じた課税をするというものだと思います。

すでに反対意見は多くあります。
「仕事がある都心部と仕事がない地方では就労環境が違う」という地方格差とか、
「子育て世代とシニア世代では働かない事情が違う」という世代間格差、
あと「所得の多い世帯と少ない世帯」の所得格差の観点などからの反対が多いようです。

中でも私は特に、子育て世帯と介護世帯からの反発には一定の配慮が必要だと思います。
専業主婦の中には経済的に余裕がある人ばかりではなく、
子供を預けることができない人とか親の介護にかかりきりの人もいます。
そういう事情がある人は働こうにも働けません。
また時間的制約などがあるために短時間で低賃金の仕事しかないという現実もあります。
こういう世帯への控除廃止は「担税力のない層への課税強化」になります。
課税の趣旨に反しますね。

配偶者控除の廃止議論の中に、子育てや介護の話が入ってくるとこのように話が複雑になります。
事前に配慮して、テーマを分けて考えるようにした方がよいと思います。

■配偶者控除の廃止はこれまでの税と社会保障のモデルを変える第一歩

政府の狙いの基本は、単なる控除の廃止による増税ではなく、経済成長による税収増です。
控除してもそれ以上に経済が活性化して企業と家計が潤い、結果税収が増えればよいという考え方ですね。

政府はかなり本腰を入れて日本の社会構造を変えようとしているように感じます。
所得税の「103万円の壁」の次は社会保障の「130万円の壁」が来るでしょうし、
専業主婦の年金制度である第三号被保険者にも手が入るでしょう。
所得税の基礎控除の見直しや最高税率の引き上げなども続くと思います。
高所得者層へは実質的に負担が増えていくでしょうね。
課税強化になりますが、ただ、この累進課税の強化の方向性はもう不可避でしょうね。

配偶者控除の廃止はこれまでの税と社会保障のモデルを変える第一歩になるかもしれません。
これからの日本の社会構造がどうなるかを知るためにも注意深く見ておきましょう。

今回は以上です。
次回もお楽しみに。

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