明るく前向きに自分の財産を築いていこうと頑張るみなさんに、知らないと損する豆知識や社会情勢の変化の個人の生活への影響などを、ファイナンシャルプランニングの視点から発信したいと考えています。住宅・不動産の相談実例を踏まえたテーマの他、政治・経済の時事も興味をもったテーマを取り上げてみたいと思います。

『空き家問題、軽い気持ちで実家を相続すると大変なことに!?』 ~空き家問題の施策を理解して、早めの対策を~

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こんにちは!ハイアス&カンパニーの川瀬です。

今回は「空き家問題」についてです。実家を相続する時など、注意が必要ですね。

■空き家の何が問題か?

空き家が増えて問題になっていますね。

総務省の調査によると全国の空き家総数はおよそ820万戸。空き家率(住宅全体に占める空き家の割合)は13.5%。いずれも過去最高水準に達しています。

野村総合研究所は空き家の転用が進まなかった場合、20年後には空き家率は30%を超えると推計しています。

今、日本は人口も世帯数も減っているのだから空き家が増えるのは仕方がない側面もあります。ただ、だからといって空き家を放置しておくことは出来ません。空き家を放置しておくと何かと社会的な損失が増えます。誰も住まない家は劣化の進行が早くなります。劣化した廃墟のような家があると街並みが悪くなるだけでなく、ゴミが不法投棄されたり、不法侵入されたりするなど犯罪の温床になる可能性もあります。最終的に撤去や建物の解体などを自治体がしなければならなくなったりしたら自治体財政への負担が大変なことになります。国土交通省はこういった廃墟のような管理されない不動産の増加は「周辺の住民に不利益をもたらす」としています。

では、空き家にはどのように対応すればよいのでしょうか?

■空き家は固定資産税が6倍になることも

結論から言いますと、自分も家族もその空き家を利用する予定がないのであれば、早めに売却を考えるのが無難です。

空き家は所有しているだけで費用がかさみます。固定資産税や都市計画税も、住宅が建っているので軽減されているとは言え、一定額が毎年かかりますし、水道・光熱費や火災保険料、定期清掃などの管理費用もかかります。こうした費用は年間数十万円にもなります。

昨年、空き家を放置しないようにするための施策が打ち出されました。住宅用地の固定資産税は6分の1に減額されていますが、市町村が「特定空き家」と認定すると減税の対象外となります。固定資産税が6倍になるわけです。

さらに「倒壊の恐れがある」などと認定されると修繕や解体などの指導がきます。所有者が指導に従わない場合には市町村が代わりに解体を強制的に執行することもできるようになりました。しかもその解体費用は役所が払ってくれるのではなくて、原則所有者の負担です。

昨年、この改正以降、数軒ですが強制執行で解体されました。

空き家のままおいておく減税のインセンティブがなくなり、むしろペナルティが課せられる可能性が出てきたわけです。

■売却を促進する税制改正が4月から始まる。

政府は空き家施策で「アメとムチ」を用意しました。固定資産税6分の1優遇の打ち切りや解体の強制執行などは「「放置するな」という「ムチ」ですね。

次は「アメ」の施策が今年の4月から始まります。それは『空き家を売却した際の譲渡所得の3,000万円の特別控除』(※)です。

簡単に説明しますと、譲渡所得とは、売却した価格からその住宅のもともとの取得費(売却時にかかった費用も含められます)を差し引いたものです。要するに「物件を売却して得た利益」のことです。その利益に対して譲渡所得税がかかります。税率は取得税・地方税あわせて20%です。

例えば、ざっくりいうと、もともと2,000万円で取得した不動産が3,000万円で売れたら、利益は1,000万円ですね。その利益に対して20%の譲渡所得税がかかります(5年以内の短期保有の場合は39%)。

空き家の場合、取得価格がいくらだったのかわからない古い家が多いのですが、そういう取得原価がわからない長期保有の家の場合には譲渡価格の5%を取得費とみなすことになっています。

ですから、3,000万円で売れたときの取得原価は150万円とみなされます。そうなりますと譲渡所得は2,850万円ですね。すると譲渡所得税は2,850万円×20%=570万円。結構な額を税金として支払わねばなりませんね。

これが、相続から3年以内に限ってですが、譲渡所得3,000万円までは税金がかからなくなるわけです。

譲渡所得の優遇については、もともと自宅の売却時には3,000万円までの控除がありますが、自分が住んでいない空き家は対象外でした。それが今回の税制改正で対象になるのだから、「それなら今のうちに売っておこうかな」となる人もいるかもしれませんね。

これが「アメとムチ」の「アメ」の施策ですね。

これは特に売却価格が高い都市部ではそれなりの効果を発揮するのではないでしょうか。4月以降、空き家や更地がこの売りに出てくる可能性もあるかもしれませんね。

(※)相続により生じた空き家であること。旧耐震しか満たしていない建物で、相続人が必要な耐震改修または除却を行なった上で、家屋または土地を売却した場合の譲渡所得について3,000万円特別控除を適用できる。

■問題は売りたいけど売れない家...

親から相続した家を管理もせずに放置しておくことのリスクはこれまでよりも格段に上がっています。だから税を優遇するので早めに売ったらどうですか、というのが国の施策です。

しかし、この施策で解決できるのはおそらく今の空き家の一部だけです。

約820万戸の空き家のうち賃貸用の住宅の占める割合が5割を超えています。賃貸は空き室になっても多くは管理がなされているのでそれほど問題はありません。問題は400万戸ほどある持家の方です。

また持家の中でも、立地条件が良くてそれなりの価格で売却できるもの、それなりの賃料で貸せるものであればそれほど問題はありません。今回の3,000万円控除の施策で売却が進むかもしれません。

ま、そんな立地にある良い家なら、そもそも空き家で何年も放置はされないでしょうけど。

問題は、売りたくても売れないような郊外立地にある老朽化した家です。

売れないのですから処分したくても処分できません。そのまま放置されると、適切な管理もされないので劣化が進み資産価値が下がり、ますます売れなくなる。これが廃墟に向かう悪循環です。こういう物件は値段を下げたところでなかなか売れません。

役所に寄付しようにもたぶん断られるでしょう。利用価値の無い不動産は管理費がかさむだけです。税金を使ってそんなことは出来ませんからね。

固定資産税は上がるかもしれない、でも売りたくても売れない、ただでも役所も誰も引き取ってくれない...。

八方ふさがりですね。

こういう場合、解体費用を自分で負担して、更地にした上で無償でも引き取ってもらえるかどうか、ということを考えないといけないと思います。解体費用は持ち出しになってしまいますがそれでも将来にわたって続く所有コストよりも解体費が安く済む計算になるなら選択肢になるでしょう。

国土交通省の調査では空き家の取得理由の過半数が「相続」でした。相続した空き家はある程度の費用をかけても相続人が自己責任で何とかするように、という時代が来ています。

「とりあえずもらっておこうかな」という程度の軽い気持ちで相続すると、後々大変なコストがかかってしまうかもしれません。

放置しておけば建物の劣化が進み、時間が経過するほど売るにも貸すにも不利になります。市街地周辺にあってニーズのある空き家は、あまり価格にこだわらずに早めに売るのが良いと思います。

今回は以上です。

次回もお楽しみに!

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