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我が国は現在、閉塞感が漂っているとよく言われていますが、実は、よく観察すると、新しいビジネスチャンスがあふれかえっています。それを見つけて、成功させるコツとヒントをご紹介します。

成功した経営者は英雄なのか?

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松下幸之助、本田宗一郎、孫正義、
カルロス・ゴーン、スティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツ・・・・

大成功を収めた経営者に対して
尊敬の念を持っている読者は少なくないことだろう。

また、かれらを目標に起業を目指している人もきっと多いはずだ。
私の知り合いのある起業家は、まるで歴史小説を読むように、
彼らに関する書籍を読みあさっている。

だれかを目標にして、また尊敬の念を持ってビジネスに
向かうというのは決して悪いことではない。
むしろ方向性がはっきりして、
なんらかの決断を下す際の一助になるかもしれない。

だがしかし、成功した経営者を英雄視する傾向に対して、
疑問を投げかけている有名経営者がいる。
それは、トランプや花札などを販売していた任天堂
ファミコンで一躍世界的な企業に押し上げた前社長・山内である。

氏は次のように語っている。


世間にはよく成功した人間を尊敬する人がいるけれど、
それが僕には不思議でしようがない。
たまたま運が良かっただけの人を、どうして尊敬できるんでしょうかね。

「任天堂商法の秘密・
いかにして"子ども心"を掴んだか」高橋健ニ著(祥伝社1986年)
 


また、氏は次のようにも語っている。


花札とトランプから離れていった理由は、
これら伝統的な遊びの人気が落ちたからなんです。時代が変化したんです。
そのため止むを得ず転換を図った。それだけのことでしかない。
それ以降、幾多の苦難を経ながら、ともかく生き延びてこられたのは、
本当に運がよかったからだ。
もっといえば、明確な経営戦略などがあったわけではなく、
文字どおり試行錯誤の連続でその失敗の積み重ねの中から、
少しずつ体で覚えて勉強し、それを材料として、たまたま幸運に恵まれて、
昭和55年からようやく急成長の波に乗った。
要するに、任天堂は運がよかっただけなんですよ。


「任天堂商法の秘密・
いかにして"子ども心"を掴んだか」高橋健ニ著(祥伝社1986年)
 

また、さらに、次のようにも答えている。


――世界企業への道はなんだったんですか。
運です。運が良かったんです。
それを「この結果は俺の経営がうまかったんだ」とか
「俺に力があったんだ」なんて思うと、もう駄目ですね。


――墓穴を掘りますか。
そうです。だから運を認めないといけない。
運を実力だと錯覚するということは、これほど愚かなことはないんです。
経営者としてね。ところが、人間ですからついつい運の存在を無視して
「俺の力だ。俺のやり方が良かったんだ」と言いたいんですわ、
人というものはね。それは駄目。


――なるほど、運ですか。
運です。

「新・電子立国第4巻~ビデオゲーム巨富の攻防」(NHK出版1997年)
 


ただし、任天堂元広報室長・今西紘史氏は山内氏に関して次のように語っている。


みなさん運っていうけど、何もないところに運はないんです。
そりゃ、うちの社長は「なぜ成功したんですか」と聞かれれば、
そんなことくどくど説明していられるかって
「ああ、運が良かったからや」と片付けてしまう。
しかし、それはもう、彼がいう運といえば、ものすごい重みがある運です。
やれることはとことんやって、
戦略にしろ、いろんな経営上の手を打ち尽くす。
これだけ努力したんやから、後は運任せやないかと。
初めから、運とか思いつきであれやれ、あれやれっていうような、
そんなことじゃものは作れないですよ。
だから運とか勘とか、思いつきとか、
ある意味自分を楽にするための言葉として使われるけども、
山内の思いつきは、
それはものすごい蓄積があっての思いつきなので、私らのとは違う。
言葉は単なる思いつきであっても、重みが違ってくるんです。


「ジーエム」(1999年第5号ソフトバンク刊)
 



やるべきことはすべて手を打って、全力で実行に移し、
それでうまくいかないのなら仕方がない。
あとは、運に任せるしかない。
山内氏の言いたいことは、おそらくそういうことなのだろう。

人事を尽くして天命を待つ
経営とは、この一言に尽きるのかもしれない。

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