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研究で、はたして情報産業に影響を与えることが出来るのか?

賞味期限が切れないうちに。

終わってから紹介するのもなんですが、サイトワールドに出展してきました。これは視覚障碍者のための情報機器、サービスの総合展示会です。

11/2, 3, 4と三日間連続で説明員をやっておりましたのですが、声はかれてしまうわ(図・映像を使った説明は全く役に立たない)、体力は使い果たしてしまうわでしたが、こういうのは出てみないとわからないものですね。いろいろなことに気づかされたように思います。展示会に出展するのはLinux World Conf.&Expo.以来でしたが、しかし、視覚障碍者向けの展示会というのはそれとは全く異なっておりました。

まず驚いたのは、来場者の多さ、これだけの視覚障碍者の方々が集まっているところを見るのは初めてでしたので、まずはそれに圧倒されました。視覚障碍者のほうが多い会場を見ていると、そもそも自分の目が見える方が普通でない気分になってきます。

次に驚いたのが、ユーザーの多様さ。私が説明しておりましたのは、今までのスクリーンリーダーや、ホームページ読み上げソフトウェアではうまく対処できなかったFlash等のコンテンツを読み上げるためのシステムについてではありましたが、ユーザーの反応を直に見ていると、ああ、知らないことが多かったなぁと痛感させられました。

ある人は、PCが使えないとだめなんですねとさびしそうにかえっていかれました。

またある人は、インターネットに興味がおありで、どうやったらこういう読み上げソフトウェアを使えるかを聞いていかれました。この方には、ホームページリーダーの問合せ先をお教えしておきました。

またある人は、ホームページリーダーのユーザー(実はホームページリーダーのユーザーは相当多いようです。その昔開発者の方々が全国行脚したのが効いていると始めて知りました)で、新しい機能を興味深く聞いていかれました。

またある人は、PCのおかげで情報のハンディキャップを乗り越えて行ってられる方で、スクリーンリーダ利用においての問題点や、改善点を非常にポジティブに訴えていかれました。この方を見ていると、仕事をされる上で、生活をされる上で、PCはなくてはならない存在になっているんだなと、本当に実感させられました。

視覚障碍者でPCを使ってられる方々が、こういったアクセシビリティ・テクノロジーに対しては非常に真剣で、とても困っていることが多いということは、知識としては知ってはいたものの、実際に目の前にすると、ソフトウェアも、ハードウェアもまだまだ貧しくて、少々出来の悪いフリーソフトウェアでも喜んで使ってもらえた、ある昔の風景がよみがえってくるような感じがします(彼らの方が、それよりもずっと切実なのではありますが)。

今でもほとんどのコンピュータのシステムは晴眼者(目が見える人)を対象に作られています。そのため、視覚障碍者の環境はまだまだずっと貧しいままにとどまっているのが現状です。研究が、こういう人たちのお役に立てることはまだまだたくさんあるのだと思います。

ひさしぶりに、こんなことを思いました。

プログラムが書けるって、きっと、素敵なことなんだなってことを。

多分、あまりにソフトウェアも飽食の時代になってしまったので、こういう機会が少なくなってしまっているのかもしれません。でも、フリーソフトウェアを書いていた昔、私はこんな風に考えてソフトウェアを作っていたのです。

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コメント
Mitsugu 2006/11/13 22:17

お疲れ様でした。しかし、本と、すごい人数でした。あんなに視覚障害者の人が集まることはそうそう無いのですよ。昔はわれわれの中でもマニアな人たちがPCを使っている時代でしたが、確実に裾野は広がっていっています。まだまだわれわれ支援技術ベンダーがやらないといけないことはあるんでしょうね。何か感じていただけたこと、光栄です。

himi 2006/11/18 14:25

どうも、Mitsuguさん、お返事遅れてすみません。結局、最後、どたばたしていてご案内できず、すみません。また、今度の機会ということで...

うちがやっているアクセシビリティ技術は特殊なハードウェアがいらないということで、あんまり目立ちにくいですが、普通のPCで利用できるのは利点と言えますし、多くの人に使ってもらえる入り口になりえるのではないかと考えています。

ま、会場でも、Mitsuguさん、お嬢さんにお願いされてましたし、点字ディスプレイも安価に使えるようにがんばってくださいな。


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宮下 尚

宮下 尚

日本IBM東京基礎研究所で研究に従事している日々です。研究内容はとても変わりやすいのですが、XMLおよびデータベースの分野を専門としたいと思っています。

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