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人間の機能を「知覚」「記憶」「情報伝達」「身体運動」「免疫」の5つに分解し、それぞれの機能を拡張する先進技術をご紹介します。

「ロボットが普及すると失業率は上がるのか?」

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失業率は上がらない。それが私の見解です。

なぜならロボットが普及することでホワイトカラーの割合が増加し、出生率が下がる可能性が高いため、将来的に就業者数が減少し、求人倍率が低下して失業率は横ばいまたは下がると考えられるからです。

現在、工場の製造工程で広く利用されている産業用ロボットがBtBだけではなく、BtCでも普及すると仮定した場合、まず考えられるのは、手順・手続きが決まりきった単純作業をロボットが担う未来です。

そこでは、競合企業の動向や顧客ニーズの変化に合わせて、柔軟に作業内容を変えるといった創意工夫は求められません。あくまでも現場のリーダーの指示に従って、計画通りに作業を遵守することが求められます。

私はこれを、広義の意味でブルーカラーの仕事と捉えています。
一般的に、ブルーカラーとは、製造業・建設業・鉱業などの生産現場で働く人々をさしますが、単純な作業を計画通りに遂行するという意味では、飲食店の食器洗いや清掃作業、顧客をテーブルまで誘導する行為は、ブルーカラーの仕事と同義だと考えられるからです。

ですので、これまでのロボット普及の歴史を振り返ると、まずはブルーカラーの作業をロボットが代替し、そこで仕事を奪われた方々は、新たにロボットの運用管理、ソフトウェアのアップデート等の作業を担う可能性が高いと考えられます。

加えて、より頭脳を使った創意工夫が求められる企画・開発・営業といった仕事を担う方々が増え、就業者数に占めるホワイトカラーの割合はロボット普及に比例して増加すると言えるでしょう。

ここで大きな論点になるのが、「ホワイトカラーの割合が増加する」ということです。橘木俊詔氏『無縁社会の正体(2012年10月発売)』によると、ブルーカラーの完結出生児数が男女平均2.26人に対して、ホワイトカラーの完結出生児数は男女平均2.01人。つまり、結婚15~19年の夫婦の平均出生児数は、ブルーカラーの方が0.25人多いという数値が公表されています。(厚生労働省の調査結果を参考に作成)

このデータから、私はロボットが社会に普及すると就業者のホワイトカラーへのシフトが加速し、出生率が今よりも低下してゆくゆくは就業者数が減少し、永続的な就職売り手市場の未来が起こると考えています。

ただし、私の考えには2つの反論が考えられます。

Q1. ホワイトカラーの仕事もロボットが奪えるのではないか?
私は、創意工夫が求められる仕事には「知的好奇心」と変化への「適応力」が必要だと考えております。(「R2-D2にみるロボット技術の限界とは」に詳細記載)

ロボットの制御アルゴリズムは、過去の正解・定石を大量にインプットして、そこから最適解を導くことができますが、それは自身が所属する社会(ルール)の中で機能することが前提条件です。競合企業の動向や顧客ニーズの変化に合わせて、柔軟に作業の目的とゴールを変更して、最適解をだすことはできません。

例えば、ジェダイが絶滅し、シスが世界をのっとった瞬間に、法律や規制が変わり、R2-D2やC-3POが機能不全に陥ったように、自身が所属する社会の枠組みが変わればロボットは本来のパフォーマンスを発揮できなくなります。
これまでとの違いを受け入れ、ポジティブに現状に向き合うことができなければ、社会に適合することはできません。ですので、私は創意工夫が求められる仕事をロボットが代替する未来は起こり難いと考えています。(あくまでも現時点での仮説...)

Q2. 創意工夫を求められる仕事を、これまで単純作業しかしてこなかった人ができるのか?
歴史を振り返ると、ブルーカラーは減少し、ホワイトカラーの就業者は年々増加しています。行政の支援を受けながら、必要にかられてホワイトカラーへのシフトが進むと考えられます。

もちろんこれ以外にも反論はあると思いますが、「ロボットが普及すると仕事が奪われる」と一義的に判断するのではなく、普及することで社会はどう変化し、自分たちの仕事はどう変わるのかを想像して、今から準備を進めていくべきだと考えております。


より暮らしやすい社会の実現に向けて、変化を恐れずに、先進技術を前向きに活用していきたいですね。
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