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DaaSの使い途を考える(後編)[ソリューション・デザインの現場より]

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2014年5月22日の東京の空


2014年5月22日の東京は、局地的な豪雨でした。天気が荒れる時ほど私にはカメラ日和で、立体的な空模様にしばし目を奪われました。

さて、前回から結局一ヶ月も空いてしまいましたが、続きです。中編では、DaaS(Desktop as a Service)を利用する際の主な考慮事項として以下の5点を記載致しました。

  •    オンプレミスとは異なるコスト構造
  •    現行データセンターとのネットワーク接続
  •    Windows 7ライクなサーバー仮想デスクトップの用途
  •    仮想デスクトップのマスター・イメージ管理は利用者自身
  •    端末管理の負荷軽減にはシンクライアント導入が必要

後編では、DaaSに最適なデスクトップの利用形態、適用可能な業務、そして、今後のDaaSに求められる内容を明らかにしたいと思います。

DaaSが有効なデスクトップ利用形態

DaaS利用時の考慮事項を見ると、なかなか実際の業務では利用しづらいと感じるかも知れません。本当にそうなのか、これまでに挙げた考慮事項に対応させながら、どのようなデスクトップの利用形態であれば、DaaSが有効かを考えたいと思います。

まず、「オンプレミスとは異なるコスト構造」という観点では、長期に渡って利用し続ける場合のコスト増や、一方でSWライセンスの短期利用の難しさを取り上げました。その点から、今回、次の3つを利用形態の例として考えました。

  • 長期に渡ってデスクトップを利用する予定がない
  • デスクトップ環境を利用する頻度が少ない
  • 総ユーザー数に比べてデスクトップ環境を同一時間帯に利用するユーザーが少ない

また、「現行データセンターとのネットワーク接続」という観点では、既存のアプリケーションをDaaS環境においても利用するのであれば、そのアプリケーションの通信先として、現行のデータセンターのサーバーが必要となり、セキュリティを重視する多くの企業では、専用線によるネットワーク接続を必要とすることを前回言及しました。これに伴うコストの増大を避けるため、次の2つを利用形態の例として考えました。

  • 自社のデータセンターと業務データの授受を行わない
  • デスクトップ上のアプリケーションとインターネット環境へのアクセスのみでよい

次に、「Windows 7ライクなサーバー仮想デスクトップの用途」という観点では、最近のDaaSでWindows ServerをクライアントOSのように見せかけて提供している例について前回、触れました。実際には、クライアントOSそのものを提供しているケースもありますが、ライセンスの関係もあり、DaaSに期待される必要なときに必要なだけリソースを使うという柔軟な契約ができません。したがって、次の2つを利用形態の例として考えました。

  • クライアントOSの利用を前提としない
  • 利用するアプリケーションはマルチセッション対応である(※)
    ※Windows Server OSを複数のユーザーで利用するSBC(Server Based Computing)を想定


そして、「仮想デスクトップのマスター・イメージ管理は利用者自身」という観点では、DaaSと言えども、イメージ管理は利用者が行う必要があることを述べました。ここでは、DaaSにおけるイメージ管理の負荷をできるだけ削減するために、次の2つを利用形態の例として考えました。

  • ユーザー毎に個別のアプリケーションを利用しない
  • ユーザー固有のデータはファイルサーバーに格納できる(デスクトップに固有のデータを保存しない)


最後に「端末管理の負荷軽減にはシンクライアント導入が必要」という観点では、DaaSを利用したとしても端末をシンクライアントにしなければデスクトップの二重管理となり、負荷軽減にはならないということを前回述べました。今回、DaaS利用を想定する業務では、その業務専用に別途端末を用意している利用形態を例として考えました。

以下にこれまでに挙げた利用形態を考慮事項と対応させて整理した表を掲載します。

DaaS利用時の考慮事項DaaS利用が有効なデスクトップ利用形態の例
オンプレミスとは異なるコスト構造
  • 長期に渡ってデスクトップを利用する予定がない
  • デスクトップ環境を利用する頻度が少ない
  • 総ユーザー数に比べてデスクトップ環境を同一時間帯に利用するユーザーが少ない
現行データセンターとのネットワーク接続
  • 自社のデータセンターと業務データの授受を行わない
  • デスクトップ上のアプリケーションとインターネット環境へのアクセスのみでよい
Windows 7ライクなサーバー仮想デスクトップの用途
  • クライアントOSの利用を前提としない
  • 利用するアプリケーションはマルチセッション対応である
仮想デスクトップのマスター・イメージ管理は利用者自身
  • ユーザー毎に個別のアプリケーションを利用しない
  • ユーザー固有のデータはファイルサーバーに格納できる(デスクトップに固有のデータを保存しない)
端末管理の負荷軽減にはシンクライアント導入が必要
  • DaaSにて利用したい業務用の端末を別に用意している

DaaSの適用業務を考える

上記で導きだした利用形態から、私はDaaSを現行の端末環境に対して追加のデスクトップ環境が必要な際に利用するサービスとして捉えるのが良いだろうと考えています。私が思いつくのは、次のような業務です。

  • アプリケーション開発業務
  • インターネット参照を伴う業務
  • 外部とのデータ授受を伴う業務
  • クラウド型のサービス利用で完結する業務(例:Office365の利用で業務が完結する)
  • (災害対策用待ち受けデスクトップ環境 ※業務ではありませんが)


これらの業務を行うために、通常のOA用途のPC以外に、専用のPCを用意していることもあると思います。私自身がこれまで接してきたお客様では、セキュリティ上の理由で、これらの業務用に専用PCを用意されている方が高かったように思います。


今後のDaaSに求められる内容

さて、DaaSの適用業務までを見てきましたが、その結果は意外に地味な業務に見えたかも知れません。この適用範囲を拡げるためには、DaaS自身の持つ課題を解決していく必要があります。すぐに解決できない内容も含めて以下に今後のDaaSに必要な事項を挙げました。現状と対応させた表を合わせて掲載致します。

  • 全ての費用を利用期間や利用リソースに応じた従量課金で契約できる仕組みを持っておく
  • 利用者側データセンターにDaaS環境を設置できるようにする
  • 現行業務で利用されているアプリケーションおよびそのサーバーは、事前にクラウド環境に移行させておく
  • 仮想デスクトップ環境において稼働確認の取れているアプリケーションや周辺機器情報を明示しておく



今後のDaaSに求められる内容現状
全ての費用を利用期間や利用リソースに応じた従量課金で契約できる仕組みを持っておく クライアント仮想化SWやMicrosoft社のVDAライセンスの問題はDaaSプロバイダーだけの問題ではないが、DaaSを柔軟に利用できない要因の一つとなっている
利用者側データセンターにも、DaaS環境を設置できるようにする 業務データの授受を行うため、利用者側データセンターとDaaSプロバイダーのデータセンターを専用線でネットワーク接続することが求められることが多く、コスト増の要因の一つとなっている
現行業務で利用されているアプリケーションおよびそのサーバーは、事前にクラウド環境に移行させておく 同上
仮想デスクトップ環境において稼働確認の取れているアプリケーションや周辺機器情報を明示しておく Server OSが提供されているケースがあり、周辺機器のドライバーが稼働しない場合がある (SBC型では、マルチセッション対応が必須)


なお、DaaSの標準メニューでは対応しづらい利用者独自の要件があり、一定のユーザー規模で長期利用を予定している場合、いわゆるDaaSではなく、IaaS上に仮想デスクトップ環境を構成し、利用する方法が考えられます。IaaSであれば、セキュリティ対策などのコンポーネントも柔軟に構成しやすく、柔軟なシステム設計が可能です。また、ライセンス費用に関して、従量課金よりは初期費用として支払う方が割安になる可能性があります。

例えば、私が所属する日本アイ・ビー・エムの場合、IaaSとしてSoftLayerを利用して仮想デスクトップ環境を構成し、利用していただくことになります。その話は、改めて書き起したいと思います。



さて、3回に渡り、DaaSについて今、私が認識していることを記載してきました。クラウドプロバイダーが提供するリモートのデスクトップ環境を利用するための敷居は確かに高いですが、時代の流れはクラウド・シフトだと考えています。各企業が自分たちでITインフラを運用管理するには、インフラが複雑になり過ぎました。管理作業の負荷も高く、それでも、問題が起きた際にはシステムの中身をきちんと把握した上で対応をしなければならないという事態を見てきました。

サーバーやアプリケーションだけではなく、デスクトップにおいても、クラウド環境へ移せる業務から少しでも移行していくこと推奨致します。

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