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新入社員に電話応対をさせる・・・その前に

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既に新入社員が配属になった職場もあれば、これからという職場もあることでしょう。ベテラン社員が多い職場では、電話を取るのは新入社員の仕事だと思っていることも多いのでは?しかし、電話に出てもらう前に、ちょっと確認しておく方が良いかもしれません。

「新入社員研修で何を教えていたんですか?」
数年前の出来事です。入社時研修で社会人としての基礎的な考え方やビジネスコミュニケーションに関して一通りと、技術や製品、サービスなどの知識研修を終え、無事に6月初旬に配属。送り出す側である人材育成の担当者が、ようやくほっとできた頃、配属先の指導担当者から連絡を受けました。

指導担当者曰く、「新入社員研修で何を教えたんですか?あまりにも電話応対がひどくて使いものにならない」とのこと。

人材育成担当者は慌てて職場に出向き「敬語も、電話応対も、配属前に再度トレーニングを行ったので、大丈夫なはずなんですが・・・」と伝えました。すると返ってきた答えは、「そういうことではなくて。教えた通り過ぎて困るんですけど」とのこと。

「教えた通り過ぎて困る」という意味が解らず、しばらくきょとんとしていると、指導担当者は次のようなことが困ると言います。

・敬語を間違えてしまうと、敬語を正しく言うことに注力するため、何度も言い直す
・企業名や担当者名が聞き取れないと、何度も聞き直す
・メモを取ることに一生懸命で、返事がないため、聞いているのかどうか反応が確認できない
・電話をつなぐ前に「復唱確認させていただきます」など、丁寧過ぎて時間がかかる

など、要は電話をかけてきた人よりも「(教えてもらった)正しい電話応対をしよう」という意識が強く働き過ぎているとのこと。また、教えてもらったことが絶対だと思っているので、注意すると混乱し、やや凹んでしまい扱いずらいそうで。

これは考えてもいなかったことなので、人材育成担当者もとても困ったようでした。そして私は、同時期に似たような話を複数の企業でお聞きしたのでした。そこで、改めて新入社員の電話応対力を調査してみると・・・。

最近の新入社員は、電話を取らなくなっている
最近の新入社員は、携帯電話普及後の世代です。そのため、知っている人以外の電話を取らなくなっています。また、電話よりもメールでの連絡が増え、電話を取る経験そのものが非常に乏しい環境にあります。

その結果、アルバイトで電話応対をする機会がある人以外は、電話応対に不慣れなのです。

新人研修で実施しているトレーニング
弊社のような研修会社が関わる新入社員のビジネスコミュニケーション研修は、2日~3日の担当期間で様々なことを指導しますが、電話に関することは、約2~3時間ほど(ご要望により配分を変えています)です。主に次のような内容を指導しています。

挨拶の基本用語、敬語、電話応対の基本用語、応対時の心構え、電話の受け方/電話のかけ方、取り次ぎ方、メモの取り方、不在時の対応、(以下は必要に応じて)個人宛にかかってくる案内電話の対応、携帯電話での会話上の注意点などです。

従来はこのようなトレーニングで、配属後ビジネス電話機器(ボタンがたくさんあって操作しにくい。内線/外線機能に戸惑う)にさえ慣れれば、最初はたどたどしかったり、転送ミスなどをして叱られることがあっても、現場からクレームを受けることはありませんでした。

しかし近年は、電話応対だけを1日かけて徹底してトレーニングする研修に参加させる企業が増えています。或いは、企業内での取り組みとして、ビジネスコミュニケーション研修の実施後に、配属前教育期間の全体をかけて、1日30分ほど敬語や電話応対を振り返る時間を設けたり、メンバー同士で訓練をする時間を設けて取り組むなど、電話応対の訓練に力を入れるようになってきています。

なぜ、そこまでしなければならないのでしょうか?

新人研修での観察
私は、電話応対を指導したにも関わらず、メンバーがうまく現場で適応できなかったことが、我がことのようにショックでした。そこで翌年、私が担当する新入社員研修では、メンバーの反応を観察することにしました。

観察対象にした会社はサービス業で、就職したい会社としてもかなり人気のある会社です。そのため、対人的な理解力やコミュニケーションスキルの高いメンバーが採用されていました。

そのメンバーに対し、敬語や電話の対応の仕方とメモの取り方などを一通り伝え、私が「かけ手」で、メンバー全員が「受け手」になり、実習をしました。

私:(呼び出し音)
メンバー:おはようございます。お電話ありがとうございます。〇〇会社でございます。
私:おはようございます。私、シックス・スターズコンサルティングの原田と申します。
メンバー:・・・・・・・・・・・・・・・

メンバーの様子を見ていると、聞きなれない会社名をメモすることで精いっぱい。
私は、なるほどそういうことかと、ようやく現場からのクレームの状況が掴めました。

新入社員が自ら導き出した解決策
そこで、メンバーに一度手を止めてもらい、次のように伝えました。
「私は今ここで見ていたので、皆が一生懸命、長い会社名をメモしようとしていたのがわかりました。でもみんな、電話をかけた人のこと、忘れてない?今、誰も声を出していない状況が続いていて、私としては、どうなっちゃってるんだろうと不安だったんだけど。そのことに気づいた人?」

と聞くと、皆ハッとした顔になり、これはダメだと気づいたようでした。

そして、次のように伝えました。

「皆が一生懸命取り組んで、間違ってはいけないとメモを必死にとってたのは凄くよくわかる。しっかり取り組んでくれてありがとう。でも、これが本当のお客様だったらまずいよね。なので、現場で同じことにならないように、どうしたらいいかチーム内で考えてみてください。今、思いつく限りでいいから、今からできることを考えてみて」

そして、3分ほど経ってから発表してもらうと
1)基本用語がスラスラ言えるように練習する
2)敬語が苦手なので、言えるようにする
 (方言があるので、標準語で言えるようにする)
3)よく電話がかかってくる会社や人の名前を把握しておく
4)毎日練習する(新入社員同士で朝やる)
5)電話の使い方に慣れる
6)上司や先輩の予定を知っておく
と、自分達で取り組むべきことを導き出しました。

このような経験から、新入社員の発表内容にある1)~6)が出来ているかを確認し、1つ1つできているか、1~2週間ほど練習をさせてから電話応対をさせる方が良さそうだと考えるようになりました。

その際、電話応対はアルバイト経験などで個人差があるので、1)~6)のどこが不得意かをメンバー自身に確認してもらいます。
そして、1~2週間後には電話を取ってもらいたいという期日を伝え、どこから練習すればよいか、いつ頃までに出来そうかを本人にコミットしてもらいます。
そして、いつ、どのように練習するかを確認します。その際、より良い練習方法があれば提示します。
更に、練習成果をチェックするタイミングを設け、就業前や終業後に、指導する人が携帯から会社に電話をかけ、新入社員に取ってもらい、成果を確認し、良い点と改善点が伝えられると、とても効果的です。

職場に配属されるまでに、電話を受けたり、かけたりしている手本を見る機会が非常に少ないことも、練習が必要な要因でもあります。
多少時間がかかるかもしれませんが、電話応対の訓練を通じて新入社員とのコミュニケーションも取れるので、人間関係を深める良い機会です。

電話応対が上手く行かない新入社員がいた時の、ヒントになれば幸いです。

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