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Facebookを活用したソーシャルリクルーティングの利点と限界【後編】

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前回はFacebookを活用したソーシャルリクルーティングの利点と限界【前編】でFacebookを活用したソーシャルリクルーティングの利点について、私の実体験に基づいて考察しました。

今回はその限界や課題について考えていきたいと思います。

① 通用するのは主にウェブ系の企業(特に新卒で)
 
 ソーシャルリクルーティングを実践していた頃に最も指摘されたことですが、「じゃあそのソーシャルリクルーティングのやり方をすれば三菱商事に行けるのか?」ということでした。現時点ではほぼ不可能と言えるでしょう。そもそもなぜウェブ系の企業に有効であるのかということを考えてみると、

i) Facebookをはじめとしてソーシャルメディアをある程度活用できるリテラシーが保証されている
ii) ウェブに対する態度がわかる(=ウェブ好きそう)
iii) 企業側の採用の形式が大企業やその他業種に比べてフレキシブルなのでチャレンジングな採用活動が可能な企業が多い

といったことが挙げられるかと思います。
 しかし、この課題はソーシャルリクルーティングが一般化してくれば、解決とまでは言いませんが対象となる企業は増えてくるのではないかと思います。現時点でもソーシャルリクルーティングを行っている企業の中では大企業の中では先進的な事例として日本生命社のFacebookページが挙げられます。

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 個人的な意見としては、今後はある程度の情報感度の高さや情報のリテラシーはどの業界や企業で働くにせよ必須だと思います。ですから、日本生命社のような取り組みは本当に成果が出るのではないかと思いますし、今後同様の流れがLikedInの日本上陸などのトレンドともに強まっていってくれればと思います。

② ソーシャルリクルーティングを実践する学生が増えたら

 次によく指摘されたのは「同じようなことをする学生がたくさん出てきたら、むしろ人事の目に当たらなくなるのではないか?」ということです。これに関してはたしかに難しいところではあると考えています。
 2012卒の私はむしろソーシャルリクルーティング市場がブルーオーシャンだったので、単に"ソー活生"としてのラベリングをしていただけである程度人事の方々の目に当たることができたのではないかと思っています。しかし、おそらく今年の2013卒の方々でさえ、ソー活生としての自分のプレゼンスを高めていくことは難易度が高いことであると考えています。
 今後ますますソーシャルリクルーティングを実践する学生が増えた段階では志望業界に合わせて住み分けをして情報発信をしていく必要があります。大事なのは「誰に自分のどのような部分を知ってほしいのか」という視点で、発信する情報の差別化を図っていかねばなりません。
 加えて、ソー活生のコモディティ化を防ぐ上で補助的に役立つのは前回言及した「応援団」の存在でしょう。玉置沙由里さん(@sayuritamaki)が進めているパトロン計画が私は個人的に大好きなのですが、これは感覚的には近いものがあると感じています。
玉置さんが取り組むパトロン計画とは”自分のブログの最後でTwitterアカウントを紹介する”などの特典を与える代わりに、決められた金額を彼女に支払うというもの。(玉置さんのパトロンについて詳しくはこちらから)
 ここで言う応援団の役割は「学生のブランディングに協力してくれる人たち」と言えるかと思います。金銭的なものは要求することはありませんが、社会人が自分の「お抱え学生」を持つようになる、という流れです。

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 私のケースではおそらく、インターン先のループス・コミュニケーションズ社の@takeshi_katoさんやフリーコンサルタントの@IHayatoさんはしきりにTwitterやブログ、講演会などで私の事例を紹介してくださっており、それで私個人の認知がかなり進んでいると感じています。
 このように志望業界と照らし合わせて、自分を応援してくれる人を探し、ソーシャルメディアの一番の強みである継続的なインタラクティブ・コミュニケーションを通じて応援してもらうという手法が一般化するのが現時点では一番良いと考えています。こうすることで、ある業界や会社に対して0から自分というメディアを作り上げるよりも早く業界に対して認知を進められると考えています。
 ちなみに、こう書くと誤解が生まれそうですが僕は別にブランディングのために彼らのお世話になっているわけでは決してありません(笑)
 ただ、興味のある業界で影響力がある方から学び取るものというはやはり大きく、自分の学びのためにも彼らとお話させていただくという態度は基本的なスタンスとして持っているべきだと思っています。 

③ 学生と企業の双方の態度がはっきりしない

 少し昔の話をすると、新卒の就活市場がウェブをフル活用するようになり、リクナビなどの活用が一気に進みました。これを契機として学生側の「とりあえずエントリーしとこう」という態度が強められ、学生の大量エントリーが一般化しました。このスタイルは今でもなおメインストリームだと言えます。
 これに対して問題意識を抱いている人や頭を悩ませている企業の採用担当者も少なくありません。エントリーする企業が増えた分、自分の会社への選考プロセスへいかに学生を導くかということも悩みの種でしょう。(CRMの弊害のようなものだと考えています。)
 学生側としても本当に行きたい企業の選考を受ける学生が増えるのはできるだけ避けたいところです。なぜなら受ける人が増えれば増えるほど一人当たりにかけられる企業側の時間やリソースも少なくなっていきますし、それが結果としていわゆる「誤差」を生み出すことにつながりかねません。
 しかし、学生も企業も「じゃあ、どうしたら?」というところが本音でしょう。学生側としては新しい方法がもし有効であるならばそれを使いたいが、企業側の態度がよくわからない。だから従来通りの方法が一番無難で、その手法を採用する学生が増えます。
 一方企業は新しい方法を採用しても学生側がついてきてくれるかが不透明で踏み出せない。採用がフレキシブルに行えるところは試験的に行っているのが実情です。
 メインストリームである大量エントリーへの対策として、近年ではリクルーター制度(選考プロセスの前に非公式の面談を設け、そこですクリーニングをかけるプロセス)を復活させる企業も増えてきましたが、これだけでは昔の手法に回帰しただけで根本的な解決にはなりません。
 私も「ソーシャルリクルーティングで万事解決!」という物言いは大嫌いですが、今の就活市場が抱えている大量エントリーの弊害に対する部分的なソリューションには成りうると経験者として感じています。ソーシャルリクルーティングでは以前までのスタイルと比較して企業側が事前に学生と関われる時間の長さとそこから得られる情報の量が大きく違います。また、なにより学生の業種の選好が明らかです。プロセスで評価できるため、従来までの刹那的な評価ではなく、帯の評価ができるようになります。
 また、リクルーター制度と比較すると、継続的なコミュニケーションという点では似通っていますが、学生とのコミュニケーションは基本的にウェブ上なので管理は容易です。
 
 以上3点を挙げましたが、日本におけるソーシャルリクルーティングの歴史は始まったばかりで、LinkedInの上陸などで学生と企業にどのような態度変容があるかは予測しかねる部分があります。
 なにより大事なことは従来の手法を否定することなく、ソーシャルリクルーティングでより誤差を少なくできる部分はこれを用いて補完するという意識だと思います。
 また、今後ソーシャルリクルーティングという言葉の定義自体も更に分化していくことでしょう。すでにその兆候はみられていて、企業が行うソーシャルリクルーティング事業は単にソーシャルメディアを使って募集をしているというだけのものも多い印象を受けます。あくまで評価の手法やプロセスが異なることが重要で、採用方式のラベリングを誤ると生態系全体を毒しかねない懸念があります。
 その啓蒙の意味も込めて、今後も情報発信を心がけていきたいと思います。

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