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地方都市のおじさんが思う「家族と仕事とお勉強のワークライフバランス」

婚活戦線に勝ち残るための戦略的意思決定 〜大胆不敵な決断〜

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 選択肢が多くなると、判断が停止してしまう可能性について、以前触れた。多属性意思決定における判断停止の問題は、一般の消費に限らず、人生を左右する問題に直面するときにさえ、起こりうるだろう。

 望むものの永遠のパートナーになかなか巡り会えない婚活市場についても、経済産業省は調査しているのが驚きである。やや古いデータだが、経済産業省「少子化時代の結婚関連産業の在り方に関する調査研究」によると結婚相談業・結婚情報サービス業の市場規模は、600億円、事業者は全国に4,000弱あり、60万人の会員が入会しており、その男女比は6:4だそうだ。
 提供サービスも、仲介、データマッチング、ネット上でのコミュニティー運営などあるが、パーティー開催など付随サービスで付加価値提供しているとのこと。

 コロンビア大のRaymond&Sheenaらが発表した2006年の論文「GENDER DIFFERENCES IN MATE SELECTION: EVIDENCE FROM A SPEED DATING EXPERIMENT」では、お見合いにおける男女の選好の違いについて実験の結果として、意思決定における留意点のとある示唆をしている。そもそも、米国でお見合いがあるのか?との議論もあろうが、実験は次のように行われたようだ。

 まずは、参加者(被験者)の確保が必要である。実験と称しながらも、コロンビア大の大学院生へのメール、チラシを配賦し Speed Dating event へのオンライン登録を依頼した。なんと同大学の総大学院生の約5%が申し込んでいる。被験者は登録者から出身国や専攻(25%はビジネスっていうのも興味深い)などを配慮して抽出している。
 イベントは、大学近くのレストラン/バーで開催とし、それっぽい音楽を流しながら、1 on 1 で座るテーブルセッティング。ナンバータグを付けた男女は、4分間の会話の時間が与えられ、インターバルの1分にて「今後も会ってもいいかなぁ」と思えば、手持ちのシートに記載されている相手の番号にチェックを付けるというもの。双方が、OK(チェックを付ける)している場合のみ、翌日、双方に相手のメアドが送られるとのこと。2002年から2004年にかけて10数回行われてきた実験の結果はこんな感じらしい。

Women put greater weight on the intelligence and the race of partner, while men respond more to physical attrac- tiveness. Moreover, men do not value women's intelligence or ambition when it exceeds their own. Also, we find that women exhibit a preference for men who grew up in affluent neighborhoods.

 本論を読むとこのあたりは、既存研究で示されているとのことで、女性は、男性に対してインテリさ(知性)と人種(出身国)に重きを置いており、一方、男性はルックスに反応するとのこと。さらに、男性は女性に対して自身よりまさるインテリさや野心を評価せず、女性は男性が成長した環境(特に裕福さ)に対して関心を高くもっている傾向がみられるとのこと。

 面白い点は、ここからである。

Finally, male selectivity is invariant to group size, while female selectivity is strongly increasing in group size.

 本論を読むと、男性は、お見合いの規模に影響を受けないが、女性はお見合いの規模に強く影響を受け、その規模が大きくなるほど、マッチする割合が低くなるという結果である。パーティーが15組未満であるときは、男女共に会話した半分の相手には好印象を持ち、とりあえず(?)チェックをしたとのことだが、パーティーのサイズが大きくなると、男性には傾向の変化はないが、女性はチェックした割合は1/3に低下したと報告されている。

 つまり、この実験では、女性においては、多くの男性と会うと選択の意思決定に変化が見られたというのである。この変化が、より慎重になったと言えるのではとの見方もあるようだが、先行研究からの流れでは選択肢の増加による意思決定の麻痺と示されているようだ。
 この実験では、男女の差について扱っているものの多属性があたえる意思決定の停止については、性別問わずして報告がある。

 少なくとも、婚活にあたってのパーティーにおける戦略的意思決定について、そのパーティーの規模が大きいときは、いっそのこと、”最初に出会った半分の人としか話さない”と腹をくくった「後半はたぬき寝入り作戦」位の思い切りが必要かもしれない。

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