グローバルなマネジメントやITも「現われては消えさる飛沫の様」なのか?

第五話 韓国企業の駐在員から学ぶこと

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 今、インドネシアは投資ブームに沸いています。インドネシアの日本人駐在員の増加についてよく話すのですが、「データには出なくても、韓国企業の駐在員は日本企業よりも遥かに増加している」と話題になることがとても多いのです。これは、韓国人駐在員増加による市場の確かな潜在性や今後の市場の伸びを感じると共に、今後の競争激化を意味する新興国市場ではとてもよくされていた会話です。

 1990年代、日本の製造業は圧倒的なブランド力や製品品質でアジア市場を謳歌していました。現地デパートに行けば、日本企業の白物家電やオーディオセットがところ狭しと並んでいました。日本からの駐在員もその多くが高級コンドミニアムに住み、幹部社員の奥様たちはテーラーで仕立てのいいカラフルなスーツをオーダーし、アフタヌーンティーを楽しむようなとても優雅な生活をしていたのです。

 ちょうどそのころ、大手韓国企業の駐在員と外部トレーニングで一緒になったことが縁でとても仲良くなり、たびたび食事をともにしていました。彼は、アメリカのトップスクールの大学を卒業していながらとても謙虚で、人の話をきちんと聞く人格者でした。しかし、彼の会社の事業がうまくいかず、急遽、東欧諸国へ転勤になったのです。

 その時点では、韓国企業の駐在手当や住居などは、日本企業のそれと比較すると全然低いものでした。東欧諸国での生活を心配しているかと思いきや、彼は「主要国では日本企業にはかなわない。これから市場開発する東欧やアフリカで頑張るしかない」と語り、覚えたての日本語で晴れ晴れしく「がんばる!」と言って旅立ちました。その後、韓国企業が世界各地で躍進し、自動車、半導体、液晶テレビ、携帯電話などの市場シェアを確実に拡大してきたのは周知の通りです。知らぬ間に、韓国企業はグローバル企業になっていたのです。

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 韓国の大手企業は、現地密着のグローバル経営を標榜していることが多く、現地市場の理解のためには積極的に支援します。例えば、入社3年目以降の社員約数百人を毎年1年間、世界各地に展開する現地法人へ送り出し、語学研修はもちろんのこと、地域市場サーベイ、人脈の形成を実施して、現地文化を理解するためのプログラムを徹底して実施するのです。その対象国も最近では、欧米やアジア諸国ではなく、中東、アフリカ、中南米の国々へ拡大していると聞いています。徹底して現地のニーズを拾い上げることを、DNAに染みつかせるのです。こうして、現地市場を理解したマーケティングが各国で展開されるようになり、ベースとなる製品をその国にカスタマイズするというわけです。

 インドを例に挙げれば、その気候や道路状況に合わせるなどは当然のこと。有名な話ですが、インド人には不可欠なターバンがぶつからないよう自動車のボディの天井を高く改造したり、雑踏ではこれでもかというくらいクラクションを鳴らしつづけるインド人のために、ハンドルに装着されるクラクションのボタンを鳴らしやすく仕様変更したりしているのです。

 話を冒頭に戻しましょう。インドネシアの韓国人駐在員の生活はどうなっているのでしょうか。最近聞いた話でも、動き出した巨大マーケットのリアルな趣向やマーケットニーズを把握するため、現地人の中で生活することを基本にしているようです。ジャカルタも以前よりはきれいになったとはいえ、現地の人たちが住むエリアを高速道路からのぞくと、まだまだインフラが整っていないスラムのような住居エリアが広がっています。ここに飛び込んで、市場を把握するということが自分に出来るのかと自問しても、「若かったらな、、、」とお茶を濁すしかない自分がいます。その間でも、韓国駐在員が近所のインドネシア人と楽しそうに話している姿を思う浮かべると嫌な汗を伴う焦りを感じます。

 その反面、昔より日本人駐在員たちは(勿論私を含めて)、会社から提供される自動車のグレードや年数の比較を駐在員同士でしたり、どの辺りのアパートに住むかで駐在手当の値踏みをしては優越感に浸ったり、駐在員手当の会社への不満を口にしたりする人もいます。韓国企業の方法が正しいかどうかはわかりませんが、市場を理解する方法を探求する不断の努力は続けることが間違っていることは無いと思うのです。

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