グローバルなマネジメントやITも「現われては消えさる飛沫の様」なのか?

第四話 海外進出と撤退のタイミング

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海外進出企業の約4割は、撤退・検討の経験あり

 海外に駐在していると、着任したばかりの方が「今度、こちらに駐在することになりました」と訪ねてこられることが多くあります。4、5年に1度は、東南アジアへの進出が熱を帯びる時期があり、民族移動かと思う程多くの駐在員が押し寄せることがあります。そして2、3年ほどして連絡があり、お会いすると「急ですが、今度は日本に帰ることになりました。後任は今のところおりませんが、、、」と、事実上の撤退をにおわされる場合が多いのです。

 駐在員は生活を安定させるのも大変なので、時の流れは早く、2年など一瞬のように経ってしまいます。そんな中、せっかく進出したにもかかわらず撤退する企業が多いとは思っていても、実際どの程度の期間で何割程度が撤退するのかはわかりませんでした。

 ところが、2014年10月、帝国データバンクの海外進出に関する企業の意識調査レポートで「海外進出企業のうち、撤退・検討の経験がある企業は約 4 割」と約半数は撤退を視野に入れていることが報告されたのです。その主たる理由は、投資した資金回収の目途が立たないというものや、設備投資額が当初の計画より増加したり、現地パートナーのビジネスが事前の期待と異なっていたり、現地の法制度や会計制度への対応の難しさなど、予期しないことが次々と重なってなかなか事業化しないという話などです。

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何年で撤退を考えるのか?

 一昔前には、アジアに進出した企業が10年間も事業化せず、赤字続きであったが今では利益を出しているなどと伝説のような話は少なくありませんでした。日本企業にそれだけ余裕があったのか、どんぶり勘定だったのかはわかりませんが、今と比較すればのんびりしていたようです。

 ベンチャーや新規事業などでは一般的に狙うべきゴールは、「3年単年度黒字、5年累損一掃」といいます。この目標設定はたびたび議論になりますが、海外進出法人の場合ではどうなのでしょうか?

 この質問を、東南アジアの進出を支援する高名なコンサルタントに投げかけてみました。その回答によると、3年単年度黒字という固定概念は全くなく、現在では短期間と思われる2年で単年度黒字を狙う企業が多いそうです。以前の東南アジアでは「5年たって黒字体質にならなければ、、、」という考え方だったことを踏まえると、隔世の感が強いのですが、インターネット関連企業の場合は日本国内でも確かにこのタイムフレームで考えているように思えます。さらに、どのようなタイプの企業がすぐに事業化できているのかを尋ねたところ、最初に派遣された1人から徐々に拡大しようというプランを掲げる企業は、成功することが少ないとの回答でした。最初の段階で、本社から5人ほどの実力あるキーパーソンを投入して一気に立ち上げる企業は成功する確率が高いそうです。

 先の展開が読み切れない海外市場では、人的資源を最初から大量に投入することはなかなか容易ではありませんが、今でもビジネスリーダーに支持されている組織戦略の学際的研究書『失敗の本質』では、再三にわたって「兵力の逐次投入」を失敗の一因と指摘しています。本文を引用しましょう。「ノモンハンでは初動における投入兵力が過小であり、その後も兵力の逐次投入が行なわれたが、圧倒的に優勢なソ連軍を相手に多大な人的損害を累増するのみであった」と、ノモンハン事件での問題を指摘しているのです。70年前の戦争から学ぶことは多くあります。日本人の基本的なネイチャーは戦争中も今も変化していない可能性はあります。やはり戦略を徹底してフォーカスしてビジネスをコミットすることで、可能な限りリソースを投入して短期決戦で勝負する方が、成功への道は近いと言えるような気がします。

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