グローバルなマネジメントやITも「現われては消えさる飛沫の様」なのか?

第三話 東南アジア女性社員が躍進する背景

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東南アジア女性社員が躍進する背景 私がシンガポールで営業部隊を率いていたときは、15人のスタッフの中で11人が女性でした。大規模システムを販売するITの営業職でしたから、相当大きな歩合給の要素をもつ営業部隊です。東南アジアでは、女性が営業職や管理職としてはつらつと働く姿はごく自然なものです。日本国内では今でこそ女性の管理職への登用が進み始めていますが、内閣府男女共同参画局の調査白書によれば、2012年段階で部長職は4.9%。シンガポールの企業では一般的に、マネージャは女性が30%前後と言われています。この段階でも十分進んでいると思いますが、ことIT系企業ではマネージャの50%程度が女性であると思えるほどです。

 女性の営業であっても、深夜まで提案書作ったり、お客様との接待に積極的に出かけては何軒も付き合ったり、週末のゴルフにランチだけでも突撃参加するといった、日本で言う「一昔前の常識外れの猛烈型セールスマン」のような行動をします。歩合制の給与がそうさせるのかもしれません。売るためにはどんなことでもする、本当にそういった意気込みでした。そのようなセールスでも、家に帰れば育ち盛りの子どもがいたりします。しかし、家にメイドさんが常時いて、子どもの世話や部屋の掃除、洗濯、そして全てのシャツをきれいにアイロンする、買い物時の荷物持ちなどの全てをしてくれます。加えて、食事は基本的に外食ですませるアジアの生活習慣や食文化が、女性の自立を大きく手助けしています。

 更に、女性の歩合給セールスに共通する点があります。それは、ご主人の職業です。シンガポールは小さい街で、歩合給セールスの女性やその家族とばったり遭遇することがありました。そのときにご主人と軽く挨拶するのですが、とても大人しく、まじめそうな人ばかり。派手な原色のスーツや高級ブランドを着こなす女性の歩合給セールスとは全く違う、地味なファッション感覚でした。金色のロレックスや派手なネクタイをして、いい加減なことを言う男性歩合給セールスとは明らかに違うタイプの人たちです。

 何人かの女性セールスにご主人の仕事を尋ねると、銀行の中でも最も堅実な長期信用銀行だったり、政府機関の中で水道関連の整備をしていたり、軍関係の経理部門にいるなど、今後とも絶対に欠かすことができないような業務ばかりでした。とても固く、安定している仕事です。実はこれは、たまたまそうなっているわけではありません。夫婦のどちらかが安定した職に就くことで、そのパートナーは、大きなインセンティブを持つ給与カーブの歩合制で営業職に意識的に就いているようです。東南アジア域内では、同様の傾向はどこの国でも見受けられます。

 これはまさに、夫婦でリスクシェアリングやポートフォリオマネジメントを実施している状態です。とても合理的で納得できるものであり、ご主人が固く安定した職に就いている営業は現に、とても高い成績を出し続けていました。ご主人の給与で生活の固定費を全てカバーし、女性営業の給与はボーナスと見なして、全てを貯蓄や投資、子どもの教育費に回していたようです。そして、私の部下の社員のご子息は、イギリスの一流大学に進学されました。

 シンガポールでの女性の活躍には、このような背景があります。そう考えると、また違った面で女性社員の頑張りを見るかもしれません。また、日本でも女性社員の管理職登用についていろいろ議論されてきていますが、シンガポールとは比較する環境が異なり過ぎます。日本では、時短勤務の女性社員が、通常勤務の社員に後れを取らないように、業務時間も最大限に集中し、退社時間になると猛ダッシュして子どもを迎えにいって、ご飯作って、洗濯や家事をいろいろやっている日本の女性の方がどう考えても勤務の質も量もシンガポールの女性を遥かに凌駕していると思います。根本的な課題を理解し、サポートしていかないと、日本でも女性社員の管理職登用など簡単に考えられるべきものでないなと思ったりしています。

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