地図や位置情報に関する情報発信

「第3回 交通ジオメディアサミット」講演レポート(その3)

»

 前回に引き続き、"IT×公共交通"をテーマとしたカンファレンス「第2回 交通ジオメディアサミット」(主催:東京大学 生産技術研究所 瀬崎研究室、標準的なバス情報フォーマット広め隊)のレポートをお送りする。今回は、2020年東京オリンピック・パラリンピック(以後、2020大会と表記)について、乗換コンテンツプロバイダの取り組みについて紹介する。

【セッション2: 乗換コンテンツプロバイダの紹介とオリパラに向けた取り組み】
(司会: 東京大学 伊藤昌毅)

■Future of Transit
スピーカー:Anthony Bertuca氏(Product Manager for Google Transit)

3-01.jpg

 Bertuca氏はGoogleの経路検索サービス「Google乗換案内」の最新機能を紹介した上で、通勤時のトラブルは不確定であり、利用者自身はコントロールできないため、遅延を避けるためにはリアルタイムの情報がカギになると語った。Googleではリアルタイム情報をさまざまな事業者から入手しており、それを経路検索の結果に反映させると、ユーザーはとても満足することが調査でわかっているという。

 さらに、バスのリアルタイム情報を岡山県のバス事業者から得ていることを紹介し、バスの出発時刻が何分遅れているか、その遅れがその後の交通にどのように影響するかが表示されている画面を見せた。

「日本では、鉄道は時刻表通りに動いていますが、バスはそうではないので、バス事業者がリアルタイムの情報を出すというのは重要です」(Bertuca氏)。リアルタイムの情報が交通事業者から提供されれば、機械学習のアルゴリズムを使って位置情報から発着時刻を推定するなど、データを使ってさまざまなことが可能となる。

 Bertuca氏は、現在、世界的な公共交通の標準フォーマットとしてさまざまな企業やエンジニアが開発中のGTFS(General Transit Feed Specification)は、多くの都市に広まりつつあり、Googleは交通事業者に対して、さまざまな協力関係を求めていると語った。

 この協力関係は、交通事業者が一方的にGoogleへ情報を提供するだけでなく、Google側からも、Googleマップで各事業者の情報がどれだけ検索が行われたのかをフィードバックする取り組みも始めている。交通事業者はそのデータをもとに、自分たちが提供したデータがどのように使われているかを知ることが可能となり、サービスの改善に役立てられる。

 「私たちの取り組みは、人の動き、そして都市の動きを変えています。交通事業者のみなさん、ぜひデータをオープンにしてください。そうすることで事業の規模を拡大することができます」(Bertuca氏)。

■ナビタイムジャパンの経路検索とオリンピックに向けた取り組みについて
スピーカー:大西啓介氏(株式会社ナビタイムジャパン 代表取締役社長)

navitime.jpg

 大西氏は、ナビタイムが提供している「トータルナビ」をコアにしたさまざまなサービスを紹介し、走行距離に応じてポイントを付与するサービス「ナビタイムマイレージ」や、日本初のトラック専用カーナビアプリ「トラックカーナビ」、自転車シェアリングサービスとの連携、遅延や運転見合わせの区間を避けたルートを表示する「迂回ルート検索」、ルート検索画面からの飛行機の空席照会・予約、「終電後に帰れるルート」などのさまざまな取り組みを紹介した。

 また、鉄道混雑緩和の取り組みとして、首都圏の電車をシミュレーションして電車の混雑を予測し、ルート検索結果上にアイコンで表示する「電車混雑予測」サービスも紹介した。最近では列車の車両ごとに混雑度を6段階に分けて表示する機能も提供しており、対応路線を順次拡大している。今後はイベント開催などによる近未来の混雑を予測する機能も提供を検討しており、輸送力調整や警備計画、商店の仕入れ調整などの用途に向けて研究中だという。

 このほか、インバウンドの取り組みとして、同社が提供する「NAVITIME for Japan Travel」のユーザーの位置情報をもとに外国人観光客の行動分析に活用している。国籍別の傾向や訪日経験回数別の傾向など、さまざまな分析が可能だという。さらに、国との共同推進事業にも参画しており、日本政府観光局の公式アプリ「Japan Official Travel App」に技術協力も行っている。

■ジョルダン「乗換案内」 ご紹介と取り組み
スピーカー:長岡豪氏(ジョルダン株式会社 執行役員 営業技術部長)

3-03.jpg

 iOS/Android向けの「乗換案内」や「乗換案愛Plus」の立ち上げに関わり、読者投稿型運行情報サイト「ジョルダンライブ!」の企画・運営にも関わった長岡氏は、同社の「乗換案内」サービスについて紹介した。従来の経路検索サービスに加えて、最近では徒歩移動中の利用を考慮し、画面を注視しないように工夫された歩行者向けナビゲーションサービス「行き方案内」も提供開始している。

「ジョルダンの強みは"泥くさい"取り組みに強いこと。乗換案内が始まったころは時刻表のデジタルデータも存在していなかったので、手入力でデータを作成していました。その頃の開発チームが今でも健在で、バスのダイヤ情報も自社の手入力チームで対応できます」(長岡氏)。災害時も駅などに貼り出された運行情報を手入力で反映するなどして、ほとんどのダイヤ情報1日以内で対応できる。「ジョルダンライブ!」については直接的な売上には寄与していないものの、災害時などの投稿がとても役に立っているという。

 オリンピック・パラリンピックに向けては、インバウンド向けの「乗換案内」サービスとして、13言語に対応した「Japan Transit Planner」を提供している。また、バリアフリーの対応も進めており、駅構内の案内サービスとして、駅構内のルートや設備をデータ化し、車椅子やベビーカー、キャリーケース利用者をサポートする「駅案内マップ」を提供している。観光分野については、観光DMOと連携して、瀬戸内の移動をサポートする観光情報サイト「瀬戸内Finder」にサービスを実装し、瀬戸内海の内航の旅客航路にはほとんどすべて対応している。

 2020大会については、会場に行きやすい情報提供や、特別なルートへの対応、検索データを用いた行動分析などのサービスを提供する予定で、未来の予定を推測することの価値は高いと考えており、インプットする情報を増やして、経路検索エンジンの柔軟性を高めて、混乱のない移動をサポートしていく方針だ。

 また、同社は、全国710社のバスデータを取り扱う「公共交通データHUBシステム」を7月に発表した。同システムでは、ジョルダンのサーバーからGTFSデータを配信するもので、「標準的なバス情報フォーマット」に興味はあるものの、どのようにすればいいのかわからない事業者を支援していくプラットフォームを目指しており、データ作成・変換、データ提供の窓口の集約などのサポートをジョルダンが行う。事業者の負担を軽減させるため、データの有償提供にも対応している。

■「駅すぱあと」 2020 東京オリンピック・ パラリンピックに向けて
スピーカー:山本直樹氏(株式会社ヴァル研究所 取締役開発本部長)

3-04.jpg

 山本氏は、ヴァル研究所の歴史や、同社が提供する経路検索サービス「駅すぱあと」について紹介した上で、2020大会への取り組みとして、「複合経路検索サービスの実現」と、「動的情報の集積とリアルタイム検索の実現」の2つを挙げた。

 同社は複合経路検索サービスとして、シェアサイクルと公共交通をミックスした経路検索サービス「mixway」を5月にリリースした。これまでの「駅すぱあと」は駅やバス停を出発地や目的地に指定していたが、mixwayでは駅に行くまでのファースト・ワンマイルや、駅に着いてから目的地までのラスト・ワンマイルを自転車で案内できる。マップ上からシェアサイクルのポートを確認することも可能で、利用可能状況をリアルタイムに結果に反映する。

 オリンピック開催期間中には鉄道やバスの混雑・混乱が予想されるため、それ以外の選択肢として、シェアサイクルなど他にもさまざまな選択肢があることにユーザーが気付くきっかけとなるサービスを目指している。このmixwayは現在、都内10区と札幌市内にて実証実験中で、シェアサイクルの拡充やカーシェア、ライドシェア、オンデマンドバスなども計画している。

3-05.jpg

 一方、「動的情報の集積とリアルタイム検索の実現」については、ヴァル研究所の子会社が提供するクラウド型バスロケーションサービス「BUS CATCH」と、ヴァル研究所の位置情報サービス「SkyBrain」を組み合わせて、「ダイヤが乱れて、どの系統や便に乗って良いかわからない」「災害時などに交通機関が運行しているかわからない」といった利用者の不安を取り除き、このような課題を解決していきたいと考えている。

 とくに、利用者の移動をサポートするためには、遅延情報だけでは不十分で、交通事業者の動的情報を集積し、到着予定時刻など、利用者に必要な情報をベースにしたリアルタイム検索を実現することを目指している。そのためには、検索結果にリアルタイム情報を反映させる方法だけでなく、リアルタイム情報を加味した経路検索を実現することにも挑戦していく方針だという。データ形式については、できるだけGTFSリアルタイムに統一していく方針としている。

 セッションの締めくくりとして、東京大学の伊藤昌毅氏が司会となり、今回のイベントの登壇者が壇上に並んで、「東京2020の交通のためにいまやるべきこと」と題したディスカッションが行われ、活発な議論が交わされた。

3-06.jpg

【セッション3:バスデータの世界】

 続いてセッション3では、エンジニアの高野孝一氏がダイヤ編成支援システム「その筋屋」や、現在開発中のGTFSリアルタイムに対応した自由デザイン・デジタルサイネージ「その看板」を紹介。続いて、中津川市役所 定住推進部定住推進課の柘植良吾氏が、「定住を推進するために公共交通にできること ~経路検索の充実に向けた取組み~」と題して、市のコミュニティバスと市内を走る民間の路線バスGTFSデータを柘植氏自身が作成し、Google検索を可能にしたことを報告した。

 最後に、公共交通利用促進ネットワークの伊藤浩之氏、青い森ウェブ工房 代表の福田匡彦氏、バス停情報研究家の佐野一昭氏の3人が、「アメリカ公共交通調査の旅」と題して、米国のバス停やバスターミナル、デジタルサイネージ、空港の案内表示などの状況を報告した。また、株式会社構造計画研究所や永井運輸株式会社などによるライトニングトークも行われた。

3-07.jpg

Comment(0)

コメント

コメントを投稿する