地図や位置情報に関する情報発信

「第3回 交通ジオメディアサミット」講演レポート(その2)

»

 前回に引き続き、"IT×公共交通"をテーマとしたカンファレンス「第2回 交通ジオメディアサミット」(主催:東京大学 生産技術研究所 瀬崎研究室、標準的なバス情報フォーマット広め隊)のレポートをお送りする。今回は主に、本イベントのメインテーマである2020年東京オリンピック・パラリンピック(以後、2020大会と表記)への取り組みに関するセッションの内容を紹介する。

【セッション1: オリパラに向けての交通・輸送の準備状況について】

■東京2020大会の輸送と交通マネジメント
スピーカー:神田昌幸氏(東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会輸送局長)

2-01.jpg

 神田氏は、2020大会の交通・輸送の準備状況について解説した。選手や運営スタッフ、メディア、ボランティアなど大会関係者の輸送については、専用バス(約2000台)とフリート(セダンやワンボックスなど約4000台)での輸送が中心となり、観客の輸送については、公共交通や一部専用シャトルバスでの輸送が中心となる。さらに地方会場では、パーク&シャトルバスライドの活用により、一部マイカーでの来場も可能にする。

 神田氏はリオ大会での取り組みも紹介した。リオ大会では、関係者を輸送するために「オリンピック・レーン」と呼ばれる大会専用レーンや優先レーンが設置されたほか、開会式前日・当日やトライアスロン競技当日、閉会式翌日を休日化した。また、観客を輸送するために、BRT(連接バスを用いたバス高速輸送システム)や地下鉄4号線など、新たな公共交通システムも導入された。  

 このような事例を踏まえて、2020大会では、大会関係者の交通についてはTDM(交通需要マネジメント)及びTSM(交通システムマネジメント)や、交通規制、首都高や一般道を組み合わせたORN(オリンピックルートネットワーク)の構築などを行う。また、観客の交通については観客の需要の分散・平準化や鉄軌道の終電延長などの措置を行う。神田氏は、「大会運営ではどうしても輸送手段に注目しがちですが、その大会輸送を可能にする交通環境を実現するために"交通マネジメント"をどのように展開するかがポイントとなります」と語った。

 2020大会の課題としては、「過去に大会で設置されたオリンピックパークやメディア村が存在しない」、「選手村や競技会場、IBC/MPC(国際放送センター/メインプレスセンター)などが臨海部に点在する」、「大会開催期間は夏季の行楽シーズンで混雑しやすい」ことなどを挙げた。こうした状況で、もし大会時に交通対策を実施しなければ、現況の約2倍近くまで渋滞が悪化することが想定されており、都市活動への影響を最小限にしながら大会輸送を安全・円滑に行うため、交通マネジメントによってそれらの両立を図ることが不可欠であると語った。

 神田氏は、輸送に関わる推進体制を紹介した上で、交通輸送技術検討会の中間報告としてまとめた提言として、「より良い交通環境下における大会輸送と都市活動の両立」、「交通需要を適切に抑えた賢い交通行動の促進」、「道路の交通システムマネジメント」、「入念な準備と柔軟な対応」、「レガシーの提起と継承」という5つの基本原則を紹介した。

 さらに、2020大会の交通マネジメントとしては、TDM(交通需要マネジメント)による交通量削減を行った上で、道路の混雑が予想される箇所では、料金所での流入調整などによるTSM(交通システムマネジメント)によって実効的な交通のコントロールを行う方針であると語った。

 この方針に基づいて、道路交通では休日並みとなる平日の15%程度の交通量減の実現を目指し、鉄道などの公共交通については局所的な混雑への対応などにより、現状と同程度の運行状況を目指している。そのための施策としては、公共交通輸送マネジメントとして「輸送力の確保」「観客の需要分散・平準化」「一般利用者の需要分散・抑制」の3つを組み合わせることにより、安全で円滑な観客輸送を実現する。

 そのために2020大会に対応した輸送アプリの開発も検討している。アプリ内でルート検索の推奨外部サービスをいくつか提示し、ユーザーが選択できる形にするとともに、外部アプリ事業者には大会特有の情報を提供していくという。

2-02.jpg

 この方針に基づいて、道路交通では、休日並みとなる平日の15%程度の交通量減の実現を目指し、鉄道などの公共交通については、局所的な混雑への対応などにより、現状と同程度の運行状況を目指している。そのための施策としては、輸送力の確保や観客の需要分散・平準化、一般利用者の需要分散・抑制の3つを組み合わせることにより、安全で円滑な観客輸送を実現する。

 さらに、2020大会に対応した輸送アプリの開発も検討しており、アプリ内でルート検索の推奨外部サービスをいくつか提示し、ユーザーが選択できる形にするとともに、外部アプリ事業者には大会特有の情報を提供していくと語った。

■東京2020に向けた、オープンデータを軸にした交通情報システム構想

スピーカー:太田恒平氏(株式会社トラフィックブレイン)

2-03.jpg

 太田氏は、神田氏が語ったTDMはレガシー(遺産)になるとして、それを実現するためには、人々の伝達手段を電話や会議などの伝統的なコミュニケーションから、チャットやテレビ会議などに移行させる必要があり、2020大会は保守的な企業が変わるきっかけになると述べた。

 一方、大会期間中は普通の生活者や物流が抑制対象となるため、それらを支える交通の確保が課題となり、とくに物流と大会が交錯する臨海部は危機的状況にある。太田氏は、そのようなときこそ交通規制を考慮した迂回ルートを検索できるナビアプリの出番であると語った。

 また、利用者に対して「お願い」をするのには限界があるとして、強制的に規制を行ったり、混雑料金の徴収などの経済原理に働きかけたりするのもひとつの手であると語った。

 そのためにはスマートフォンを使ってリアルタイムの混雑・渋滞情報を取得するなどの取り組みが必要となるが、一方で、Googleなどの経路案内サービスは出入口情報の精度が低いことや、通行規制が反映されないことなどの課題がある。鉄道についても、切符の購入が煩雑で予約しづらいという課題がある。

 太田氏はこのような課題を解決するために、リオやロンドンの大会においてリアルタイムの交通情報をオープンデータ化したことを例に挙げて、2020大会でもオープンデータを推進し、Google乗換案内やYahoo!路線情報、NAVITIMEなどの既存アプリにオープンデータを提供して使ってもらうべきだと語った。

 しかし、現状では多くのデータがクローズドで有償であり、公共交通ではリアルタイム性が弱く、道路では逆にJARTICやVICSなどリアルタイム情報しか用意されていないことなどが課題となっており、このような課題に対処する担当も不在である。太田氏は、日本の交通情報システムが過去、世界でも最先端を走っていたことを振り返り、「オリンピック・パラリンピックに耐える交通情報システムをレガシーとして残すために、キックオフできないかということで、今日の会を開いた次第です」と賛同を呼びかけた。

 講演後には、太田恒平氏が司会となり、東京 2020 オリンピック・パラリンピック競技大会 交通輸送技術検討会の座長を務める政策研究大学院大学 教授の家田仁氏と神田氏によるショートディスカッションも行われた。

2-04.jpg

政策研究大学院大学の家田仁氏

Comment(0)

コメント

コメントを投稿する