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シリコンバレー駐在のIT商社マン、榎本瑞樹(ENO)が綴る米国最新ICTトレンド

【速報】今年のVMworldはクラウドコンピューティング一色

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Vmworld

VMware主催の「VMworld 2009」が8月31日~9月3日の会期で開催され、サンフランシスコのMoscone Centerには世界中から1万3千人が押し寄せることとなった。昨年の1万5千人には届かなかったものの、この経済状況を考えると驚異的な結果と言えるのではないでしょうか。(日本からの参加者は80名程度とのこと。)

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会場エントランスには、Cisco Unified Computing Systemが動展示としては、初のお披露目となり、EMC、HP、NetApp、XsigoSystems(I/O仮想化)と連携した巨大な仮想データセンタ環境が構築されていた。

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16ラックものCisco Unified Computing Systemがプレゼンス高く展示

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NetApp,EMC,HPも横並びに展示

それでは、初日、2日目に登壇したCEOのPaul Maritz氏、CTOのStephen Herrod氏の講演内容を紹介し、非公開セッションであった同社のクラウドコンピューティングへの取り組みコンセプトに少しだけ触れてゆきたい。

Mariz氏は、冒頭に「IT投資の70%がメンテナンスに費やされている現状で、新たなインフラ投資はわずか5%」となっていることを課題として挙げ、企業のデータセンター管理の複雑化が進行している現状を述べた。そして、「これらの複雑性を解消するのが、仮想化技術である」と強調。続いてVMware製品の進化を振り返えりながら、仮想化技術の発展と同社のビジョンを、「VMware社は、サーバー統合から始まり、インターナル/エクスターナルクラウド、更には自律型コンピューティング(自動化)まで実現してゆく」と力強く語った。

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データセンタプラットフォームの変化

VMWare社のクラウドコンピューティングへの取り組み

・次世代の仮想データセンターは、「ソフトウェアメインフレーム」になり、完全に自動化された自給自足になる。そして、ソフトウェア・メインフレームの中には、「サービスカタログ」が入る。

・このサービスカタログを利用可能なクラウドサービスは現在登場していないが、ソフトウェアメインフレームの中で、ISV各社が開発、テスト、そして管理を行う「Javaエンタープライズ・アプリケーション」となる。

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VMware社の提唱する「サービスカタログ」

先月発表したSpringSource社の買収は、同社のクラウドへの取り組みコンセプトに大きな影響を与えている。ユーザー企業は、SpringSource開発フレームワークを介して、各ISVによって開発されたアプリケーションを必要な時に必要な分だけ自由に利用できるようになるというもの。

VMware社から出資を受けたTerremark社を始め、RackSpace、AT&Tなどのホスティング事業者、通信事業者などのクラウドサービス事業者を巻き込みながら、インフラのみならずアプリケーション開発プラットフォームを提供してゆくことになる。これにより同社は、プライベートクラウドと各事業者の提供するパブリッククラウドを連携させ、シームレスなハイブリットクラウド環境を実現する上で、重要なポジションにつくことになるだろう。

この取り組みは、VMworld開催の1週間前にAmazonより発表されたXenベースのプライベート仮想データセンタである「Virtual Private Cloud(VPC)」ともろに競合することになる。VPCは、IaaSベースでは実績No.1のAmazon EC2内のプライベートセグメントで、ユーザー企業はVPNで接続できセキュアな環境が提供されている。つまり、Citrix社やOracle社などXenベースの仮想化ベンダーをベースにプライベートクラウドを構築したユーザー企業は、VPCとのハイブリットクラウドを構築してゆくことが予想され、ますます競争激化してゆく。また、これらの標準化作業も進んでおり、異なるクラウド間を管理するスタートアップ各社も台頭してきている事実もあり、ハイブリッドクラウドを導入が加速することが予想される。

vSphereを中心にエコシステム形成に注力するVMware

クラウド環境に最適化された「vSphere4」の紹介では、1000もの認証サーバー、1000ものストレージ製品、300を超えるネットワーク製品がvSphere4に対応しており、強固なエコシステムを形成していることを強調した。また、日本ではまだ販売されていないようであるが、利用している仮想マシン単位で課金情報を表示する「Chargeback」、仮想環境上でのキャパシティプランニングを実現する「CapacityIQ」、仮想ラボ自動化ツールの「Lab Manager」など同社の管理ツール「vCenter」の機能拡張をデモにてアピール。

そして、開発者向けの新サービス「vCloud Express」も発表された。これはVMwareを基盤とする仮想化プラットフォームと連動するクラウドベースのアプリケーションを実現するもので、企業内のプライベートクラウドと社外パブリッククラウド間の連携をさせることが狙い。(事業者側はVMwareの仮想化プラットフォームに限る。)

デバイスの呪縛から解き放たれるユーザーセントリックなデスクトップ仮想化

そして、デスクトップ仮想化「VMware View」の紹介とともにHP社が登壇し、同社のSANソリューション「LeftHand Networks」を活用したデモが行われた。新製品の管理ツール「Insight Control for VMware View」も発表。これは、vCenterからInsightが管理できるようにユーザの利便性を向上したもの。前日のパートナー向けのPartner Exchangeにおいても、VMware Viewは協調されており、Citrix Xen Desktopにリードされるデスクトップ仮想化市場の巻き返しを狙っている模様。

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今年中にPC over IPを実装したVMware Viewをリリース

また、VMware ViewにPC over IPプロトコルを実装したデモも披露された。これまで仮想デスクトップOSがWindowsであればRDPを使う必要があり、動画などの再生には向いていなかった。しかしながら、これにより仮想デスクトップのOSの種類にかかわらず、リモートデスクトップ接続が可能になり、技術的にも動画や3次元CADもストレスなく利用できる。

今回の一連のVMware社からの発表で感じたことは、パブリッククラウドを展開するホスティング事業者や通信事業者を取りこみシームレスなハイブリットクラウドを全方位で抑え、「クラウドコンピューティング=仮想化技術」を知らしめたい模様。エンタープライズ市場のサーバー仮想化はひと段落し、データセンター市場へターゲットを移しているとも言える。

また、同社の管理ツール(vCenter)のエコシステムをどんどん形成させ、尖ったテクノロジーをもっているスタートアップ企業を最終的には買収し、vCenterへ組み込んでゆくという戦略も安易に予測できる。(アプリ仮想化のThinstall社、ライフサイクル管理のDunes社の買収もそのパターン)

一方で、AmazonやGoogleなどの先行するクラウドサービス事業者は、ハイパーバイザー等の仮想化技術を一切利用していない。独自の分散コンピューティング技術を駆使したサービス展開をしている。果してどちらがクラウドの勝ち組になるだろうか?今後が楽しみである。

次回は、展示会場の「Innovative Zone」のユニークなスタートアップ企業を紹介します!

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