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共創でマーケティングを変える!

エンゲージメントのマーケティング活用意義 3

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前回に続き表題の件を。

2. その企業やブランドのコミュニティで、独特のグルーブ(高揚感)を作ってくれる

今後ブランドの差別化はコミュニティだとも言われます。野球の話で恐縮ですが、ファンは球場(リアルなコミュニティの場ですね。)で好きな球団の応援あるいは叱咤激励を行い、プレイをしている選手も含め独特の高揚感(グルーブ)が生まれ、実力以上の力を発揮し、勝利に結びついたりします。まさに共創ですね。

コミュニティにはこの高揚感が生まれるかどうかで成否が決まると思われれます。ハーレーダビッドソンのコミュニティはこの最たる例で、みんなでつるんで走り、イベントに集まるという行動は独特の高揚感を生み出し、それがブランドの形成に繋がってもいます。高揚感のある顧客は他人に熱を持ってそのブランドを語り、口コミをしてくれます。ソーシャルメディアは熱の伝わりやすいメディアです。アップルの新製品を発表前から語り続ける顧客やファンの熱っぽさは投稿を通じても感じます。熱っぽさが故にその投稿はより共感を得たりするため、より口コミで伝わりやすくなります。 

3. 商品開発や改善のアイデアをくれる

4. 一緒に商品開発をしてくれる

 共創の一つのゴールはやはり商品開発ということになりますが、成功事例は多くありません。代表的な事例として無印良品のくらしの良品研究所My Starbucks Ideaがありますが、いづれの企業も会社のカルチャーに顧客や社会との共創文化が根付いており、その施策としてシンプルなこれらの仕組みを導入しているわけです。

My_starbucks_idea

くらしの良品研究所は無印良品の思想が埋め込まれています。すなわち、「三方良し」の近江商人の考え方です。売手、買手、世間の3つのステークホルダーがすべて満足する商売のポリシーですね。このサイトでは無印良品の商品訴求はほぼありません。代わりに無印良品が考える世間よし、例えば、緑のあるくらし、郊外のショッピングモールが町を壊す、種を考える、などのコンテンツがしっかりとした読み応えのあるエッセイとして掲載されています。これらは無論彼らの商品開発のもとになっているわけですが、ニーズを顧客のWantに置くだけでなく、このような社会的な課題にも立脚しています。(この辺りはポーターのCSV:Creating Shared Valueにも通ずる考え方なので、いずれまたの機会に深く取り上げたいと思います。)そして、これらに対してファンはFacebookなどのSNS IDでログインし、コメントを書き込めます。これらはこのくらしの良品研究所にも即時掲載され、かつ、自身のSNSのフィードにも拡散され、SNSにつながっている知人に無印良品のコンテンツと自身の考え方が広がっていきます。このようなファンの声を傾聴し、商品開発の方向性を検討しています。また、このサイトに有る「ご意見パーク」にはファンからの様々な要望、意見が寄せられ、それに対しての無印良品の対応や検討状況が開示されています。これには顧客のニーズがダイレクトに寄せられており、かつオープンな環境なので、企業のそのニーズへの取り組み状況なども開示されることになり、賛同者なども現れ、商品開発や改善、再販などの共創状態になります。

これもこの手の事例として必ず取り上げられるスターバックスの課題解決コミュニティ、My Starbucks Ideaでは、商品の開発アイデアや店舗で欲しいファシリティ(例えば店舗へのWiFi設置はこのコミュニティから産まれたと言われています。)などが投稿され、それに対してファンが投票を行い、多くの指示を得たものはスターバックスが検討を開始、その状況をサイトにもアップしています。

このような話をした場合に出てくる話があります。すなわち「顧客のいうことを聞いて実際に商品化したところ売れなかった。」「Steve Jobsはリサーチをしなかった。」ここには3つのポイントがあります。

  1. 顧客の声が必ずしも正ではない。作り手の思いが重要。ただし、その思いを初期の段階から共有、共創することにより、よりよい商品になる。
  2. リサーチやアンケート調査とは質が違う。つまりロイヤルティの高いファンとの共創であって、パネル調査ではない、ということです。
  3. Jobsは最もAppleの製品を愛していたし、どうあるべきかをユーザーとして考えていた。彼が亡くなったときAppleファンは最良のファンと最良の経営者を失ったのです。(余談でした)

従来より消費者の意見を取り入れた商品開発プロセスはありましたが、ソーシャルメディアの出現により、よりダイナミックに、より安価にこのプロセスが実行できるようになったといえます。

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