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東日本大震災からローカル鉄道を復旧させるべきか

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東日本大震災における各ローカル線とJR東日本の対応について、また今後の鉄道の役割についてまとめた本。全体的にJRに対して否定的なスタンスであるのは割り引く必要があるものの、鉄道を単にA地点からB地点まで乗客を輸送する手段と定義することなく、地域における多面的役割を担っているという言説は示唆に富む。



震災と鉄道 (朝日新書)
震災と鉄道 (朝日新書)

この本のなかに挙げられていた、盛岡~宮古~釜石を結ぶJR山田線のポテンシャルについては頷ける。イーハトーブの里として風光明媚な塩の道=宮古街道から三陸海岸に抜ける路線は、スローな展望列車などで巡るには非常に魅力的である。首都圏から盛岡駅までは2時間半でアクセスできるので、宮沢賢治や柳田国男の物語と併せて巡る旅を企画すればウケるように思う。



一方でJR東日本という巨大企業にとっては、ドル箱である首都圏の鉄道での収益力を強化していくことが事業者としての利益に適い、駅ナカビジネスを推進したり首都圏での私鉄各線との競争に勝つことが至上命題となっている。黒字企業のJR東日本は山田線のような赤字路線を復旧させるのにも自主財源で行なう必要があり、赤字路線を復活させるのは及び腰であるという。



地方都市の駅前商店街の衰退などという問題と、JR民営化は密接に関係している。民間事業者として赤字のローカル線の本数を減らしていかざるを得なくなり、実際に北海道ではかなりの鉄道が廃止されている。また、新幹線が各地へと延伸することで、並行して走る在来線は第3セクターとなって、日常的に利用する地元客にとって割高な切符を購入せざるを得ない状況となっている。



国土の均衡な発展を唱えて日本中の鉄道網を整備する計画をつくった1970年代から約40年、現実に整備が進められた結果、交通インフラでは大きな格差が生まれている。計画ありきでこのまま効率化を進めていってよいのか、東日本大震災という自然災害を契機に、再び考え直すべきタイミングに来ているのだと思う。
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