オルタナティブ・ブログ > ITは手段、エコは目的 >

日本を環境立国にするために、ITベンチャーを飛び出して起業しました。

日本人を幸福にしない、日本の住宅事情

»
日本人の暮らしにとって、住宅はもっとも大きな買い物と言われています。3-4000万円する住宅を購入するために住宅ローンを組み、退職金まで含めて生涯設計するために年功序列と終身雇用という制度が守られてきました。この企業が家庭を守る制度は、経済が右肩上がりの場合には有効に機能していましたが、長らくの低成長時代に突入した現在においては絵に描いた餅でしかなくなっています。

20130429-00029437-r25-001-1-thumb.jpg
日本の住宅は欧米諸国に比べてかなり寿命が短いことをご存じだろうか? 平成8年に国土交通省が試算したデータによれば、日本の住宅が平均築26年で建て替えられるのに対し、アメリカは築44年、イギリスは築75年。日本の住宅はなぜこんなに寿命が短いのだろうか?

「日本が高度成長を遂げた時代に住宅ローンが創設され、多くの国民が家を持つ時代に入りました。そうしたニーズを満たすために住宅の大量生産が求められるなか、安価で質の悪い資材を使った、質の悪い家も多く建てられ、結果として日本の住宅寿命が短くなるきっかけとなったように思います」(良質住宅促進協議会理事長の澤田升男さん)


日本の住宅の寿命が短いのも、まさにこの住宅ローンという金融機関の都合と、規格化された建売住宅を販売したいハウスメーカーの思惑が一致しているからこその理由です。実際に金融取引上において、一般住宅の償却期間は30年程度に設定されており、住宅ローンを返し終わった瞬間に住宅は資産としては計上されなくなります。退職金などで一時的に収入が上がると納税額も増えますから、一般的にはそこで転居や建替えの需要が起こるわけですね。


アベノミクスという金融政策によって、一時的に円安に振れ、金利上昇等の副作用が起こっています。賛否両論ありますが、これまでにない形での金融市場への介入を行なっていることは事実であり、それがグローバルな経済環境においてどのような作用を引き起こすのか、誰も分からないのが現実なのではないでしょうか。

日本人を待っていた浅い眠り
変化が起こったのは3年ほど前だった。さしたるきっかけもなく国債価格が下落し、金利が上がり始めたのだ。最初はなにが起きているのか、誰にもわからなかった。経済学者の中には、ようやく長いデフレから脱却できると、この現象を楽観的にとらえる者さえいた。

 そうこうするうちに、物価が上がり始めた。最初はガソリンと野菜で、国際的な石油価格の高騰と冷夏が原因とされたこともあって、まだ人々は比較的落ち着いていた。物価の上昇自体も急激ではなかったため、経済評論家たちもニュース番組で、日本経済復活に必要なマイルドなインフレが起きているのだと解説した。


最悪なシナリオを想定すると、超円高が起こります。日本経済を支える製造業は海外に移転し、失業率は急上昇するとともに住宅ローンの貸し倒しリスクも顕在化することでしょう。最悪でなくとも、低金利な住宅ローンを設定していた銀行にとっては、長期金利が上昇することはビジネスモデルの崩壊を意味します。高齢者の金融資産を低金利で運用するという、収益力としては最低レベルの経営を行なっていた銀行にとっては、アベノミクスのような物価や金利上昇の動きはそのまま経営環境の悪化を意味します。


また消費税などの税率が上がっていけば、銀行にとっての比較的優良顧客であった富裕層の海外への資産移転も顕在化してくるでしょう。そうなると、銀行の自己資本率が低下していき、BIS規定を守れない銀行も出てくるかもしれません。信用不安が一気に起こる可能性があります。


とまぁ脅かすようなことをつらつらと書いてきましたが、何が言いたいかといえば企業と政策と国民が三すくみのような形でこれまでの社会システムを変えられない状況というのは、坐して死を待つようなものです。どこかに強い作用を生み出すようなことをすれば、別のところに影響が及ぶことは当たり前で、その結果は予想はできても確実なことは言えないわけです。そうなった場合に強いのは、自分の判断力を養って自らの方針を決めるという、当たり前の真実です。


少なくとも個人的には、住宅ローンのような自らの判断を鈍らせるような足枷は必要ないと考えていますし、実際にそのオプションを選ぶことはないでしょう。同世代の友人がタワーマンションを買ったとかいろいろ判断を迫られる時期になっていますが、ちょっとそこにリスクを取ることはできない立場です。将来的な資産(にもならない)を得るためにストックを増やすのであれば、目の前のキャッシュフローを最大化させて自分のやりたい事業を行なうことが、起業家としては必要な判断だと考えています。


結果的には、どこにでも住めて、自分の好きなライフスタイルが送れて、必要最低限なモノに囲まれて暮らすことが自分に合っている生活のサイズだと分かってきました。実際に田舎で月1万円で一軒家が借りれてしまうような条件を知ってしまうと、もはや都市での生活には戻れないと実感しています。


早晩、この住宅という人生最大の買い物が日本人の暮らしや働き方を制約する価値観は変わっていくことでしょう。それがハードに起こるかソフトに起こるかによって、対処の仕方が変わってきます。願わくばソフトランディングで、なるべく1つの家を長く使いながら、中古でもキチンと流通するような世の中になっていくことが、結果的には日本人全体の幸福量を上げていくのだと思います。




Comment(0)