オルタナティブ・ブログ > e-Day >

ITの取材現場からインサイトを伝える「エンプラ」編集長ブログ

OracleのBEA買収、「ドミノ」倒しのように業界再編を加速

»

前回のエントリーで展望した子年のITトレンドのうちのひとつ、「M&Aのさらなる加速」が、年明けわずか2週間で現実となりました。

米国時間の1月16日に伝えられたOracleによる大型買収です。巧みな買収戦略で成長を遂げてきたBEA Systemsですが、ミドルウェア市場の成熟が進む中、Oracleの傘下に入ることを決めました。OracleがBEAの株式を1株19.375ドルの現金で買い取る形で行われ、買収総額は約85億ドルに達します。「17ドル以上はビタ一文払わない」と凄んでいたOracleですが、BEAが主張する21ドルに歩み寄った格好です。

昨年秋のSAPによるBusiness Objectsの買収(48億ユーロ、約8000億円)やIBMによるCognosの買収(約50億ドル)がまだ記憶に新しいのですが、今回の合意は、業界再編を象徴する大型買収と言っていいでしょう。1月21日版のITmedia Podcast「マンデー・エンタープライズ」でも取り上げてみました。

巧みな買収戦略でブルーオーシャンを航海したBEA

BEAが産声を上げたのは1995年。ミドルウェアの会社を立ち上げるべく、NovellからOLTPモニタのTuxedoを買収したのが始まりでした。当時、Sun Microsystemsで働いていたアルフレッド・チュアングCEOも共同創設者として参画しました。ちなみにBEAの「A」は、彼のファーストネーム、アルフレッドの頭文字です。

3年後の1998年にはWebLogicの買収によってアプリケーションサーバ分野に大きく舵を切り、見事にJ2EEサーバのパイオニアとして成功を収めました。買収によって礎をつくり、そしてまた買収によって獲得した人材や資産をうまく次の事業の柱としてきたチュアング氏の経営手腕を高く評価する声をしばしば聞きます。

2005年の半ば、IBMやOracleの追い上げが厳しくなり、オープンソース陣営に対する評価も高まってくると、「SOA」(サービス指向アーキテクチャー)のためのソフトウェア基盤である「AquaLogichttp://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0506/13/news078.html」を発表しました。当初は、基盤と呼ぶには欠けているピースが多過ぎましたが、すぐにポータルソフトウェアのリーディングベンダーであるPlumtree Softwareを買収、そして2006年に入るとBPMベンダーとして知られるFuegoを買収し、空白だった領域を積極的に埋めていきました。

アプリケーションソフトウェアを再利用可能な部品(サービス)に変え、それらを組み合わせてシステムを構築する手法であるSOAとBPMは、極めて高い親和性があります。SOAでは、業務に合わせて再利用可能な粒度で部品化します。これはアプリケーションの部品化であると同時に、仕事のやり方の部品化でもあり、BEAがSOA基盤ソフトウェアにBPM製品を加えたのは、理にかなっていたのです。

最近では、Web2.0技術も取り入れ、ユーザーがダイナミックにアプリケーションをマッシュアップできる仕組みも提供しようとしていました。

企業を成長させるには、既存のビジネスを改善したり、その延長線上で新商品を開発する方法もあれば、M&Aという方法もあります。BEAは巧みな買収戦略によってエッジが利いた技術や製品を獲得して自社の既存技術と組み合わせ、他社に先駆けて「ブルーオーシャン」と呼ばれる未開拓のビジネス領域に取り組んだベンダーと言えます。

しかし、ミドルウェア市場の成熟と業界再編という大きな潮流の前に、ついに他社に統合されるという道を選択したわけです。こうした流れは、さらに加速するとみられます。

ちょうど今、わたしは「IBM Lotusphrer 2008」の取材のため、フロリダ州オーランドに来ています。Oracle、Microsoftとミドルウェアの領域で三つ巴の戦いを繰り広げているIBMも、WebSphereファミリーと、DB2をはじめとするデータマネジメント製品群の統合強化に動く可能性があります。

IBMがSMB向けサーバソフトウェア企業を買収

また、Notes/Dominoを擁する同社のLotus部門が先週末、カナダのNet Integration Technologiesを買収したことを明らかにしています。IT管理者がいない小規模事業者向けに、管理の容易な電子メールやファイル管理、オフィススイートなどを提供する非公開企業です。IBMはNet Integration Technologiesの技術や製品をベースとし、先ずは小規模事業者をターゲットとしてSaaS市場への参入を図るとみられています。

こちらは、企業向けに「Google Apps Premier Edition」を売り込むインターネット検索の巨人、Googleへの対抗策を打ち出した格好です。

今さらわたしが指摘するまでもありませんが、M&Aは企業が成長するための重要な手段です。一連の買収合意によって、それを改めて認識させられます。

Comment(0)