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外資系ITベンダーの社長、なぜIBM出身者が人気?

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日本ヒューレット・パッカードは12月中旬、都内のホテルで新社長の記者会見を行いました。1日付けで社長に就任したのは、日本アイ・ビー・エムに20年以上在籍し、アウトソーシングや金融システム事業を担当した小出伸一氏(49歳)です。

これまで社内からの昇格が続いた日本HPも、いよいよ外部から、しかも日本IBMの出身者を招へいしました。これで主要な外資系ITベンダーの社長は、ほぼIBM出身者によって占められたことになります。12月17日版のITmedia Podcast「マンデー・エンタープライズ」では、この話題を取り上げてみました。

サン・マイクロシステムズの末次朝彦氏、日本オラクルの新宅正明氏、SAPジャパンの八剱洋一郎氏など、外資系ITベンダーの社長がIBM出身者によってほぼ占められているのはご存じのとおりです。ちなみに、デルのジム・メリット社長もIBMコーポレーションで16年間働いています。

小出氏は、HPに招かれた理由のひとつとして、「IBMでグローバルな経営手法を学んだ」ことを挙げています。小出氏は1999年、米国本社に出向し、同社の経営を立て直したルイス・ガースナー前CEOの下でコーポレートストラテジーを担当した経験を持っています。日本IBMの社長レースでも好位置に着けていましたが、2005年4月にソフトバンクテレコムに移り、副社長兼COOを務めました。

記者会見もほぼ時間切れになった最後の質問で、フリーランスの大河原克行さんが「影響を受けた経営者は?」と絶妙な質問を振ったところ、小出氏はガースナー氏とソフトバンクグループの孫正義社長の2人を挙げ、前者からは「選択と集中」の戦略を学び、後者からは「変化に対応するのではなく、変化を引き起こす経営」を学んだと答え、自身に期待されているのも、グローバルとローカルのバランスだとしています。

小出氏は、日本HPの印象について、「外資系でありながら、日本の風土を理解し、日本における企業価値を高める経営が行われてきたことを尊敬していた」と話しています。日本市場の特性に合わせたOEMビジネスはもちろん、「メイドイントーキョー」と呼ばれる、国内でサーバを組み立てる体制は、品質や納期にうるさい日本の顧客には好評です。後者は特に前任者の小田晋吾社長が米国本社を説得し、こだわった施策でもあります。

コンシューマー分野で競合が激しい日本市場では、その売り上げは大きくエンタープライズ製品やサービスに依存しています。グローバルの売り上げに対する日本のそれの比率も5%程度とそれほど高くはありませんが、小出氏は、「企業経営の課題を解決するソリューションで、まだまだ成長できる」と自信を見せます。

売り上げの約半分を占めるサービス事業についても、コンサルティングからSaaSまで全方位で参入するのではなく、日本HPらしさを見極めながらサービス戦略を立案したいと話しています。日本ではまだまだ、ITは丸ごとベンダー任せ、という企業が目立ちますが、「アプリケーション資産のライフサイクル管理にしても、丸抱えでは顧客の力を削いでしまう。顧客が主導権を持ち、ベンダーをコントロールする関係が望ましい」とし、小出氏は言外にIBMとの違いも強調しました。

日本市場に変化を引き起こすことができるのか、大いに期待したいと思います。

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