R0010411タイトルで言いたかったことは人間の精神活動というものは身体のあらゆる場所で行われているということだ。デジタルでの知的生産活動を考える時どうしてもこのことが頭をよぎる。

作曲家も頭だけを使って作曲している訳ではないらしい。古典でも現代のポップスでも新しい曲を書くとどうしても自分のスタイルというものが現れてくる。それがその作曲家の才能であり個性と呼ばれるものになるのだが、そういったスタイルは癖と呼ぶこともできる。バッハにもモーツアルトにもベートーベンにも癖があった、始めての曲でも少し聞くだけで、「ああこれは誰だ」と推測が可能だ。同様にB'zでもサザンでも同じことで曲はたくさんあるがどれもそれぞれの個性、癖を明瞭に聞き取ることができる。問題はそういったスタイルまたは癖がどこから生まれて来るかということだ。もちろん脳の中から生まれる部分もあるが、それと同じくらい身体の各パーツから生まれて来る。

ジャズの演奏などは顕著だ。チャーリーパーカーにしろジョンコルトレーンにしろ演奏に見られるスタイル(癖)は明らかに手先を中心とする身体全体から生まれている。演奏家(ジャズの場合は同時に作曲家である場合が多い)の身体に染み付いた癖から特徴あるパッセージや和音が生まれている。山下洋輔はこれを手癖足癖と言った。ドラムやベースの動きに合わせてセッションするには脳を通らない反射神経で音楽を創っていくことになるということだ。拳だったり肘打ちで演奏する彼のスタイルが生まれた。

変な話になったが言いたかったのは、コンピュータやデジタル機器を使って文章にしろデザインにしろ音楽にしろ創作する場合、キーボードやマウスや各種のデジタイザーを使うことになるが、そういったツールを使う場合でも同じようにスタイルや癖が生まれて来るのだろうか?。。。ということだ。。話が拡散するので文筆活動だけに絞って考えると、つい十数年前まで、紙とペンでしか書けない、書かないといった作家がたくさんいた。最近でも少数派とはいえいるはずだ。その時その作家の書く内容に変化はあったのかなかったのか?しばらく前までいろんな作家がそういったことについて発言していたような気がするが、最近はそういったことは話題にもならなくなったようだ。

その作品を読むとなると、紙に印刷した書籍を使うのがまだ主流の方法だ。コンピュータ上で読むボリュームも時間も大きくなったが、まとまった作品となるとやはり書籍という紙にインクのシミがついたものが主流だ。村上春樹の1Q84を紙の書籍で読むのと電子化されて例えばKindleで読む場合とで違いはあるのか?電子ペーパーだとほとんど紙と同じ質感を出しているものの同じではない。また実際に頁を捲る感覚や手に持った感じなど分厚い紙の書籍と比べるとまったく別物と言える。

人間が目から入った情報を脳のみで解釈しているのであれば、紙でも電子ペーパーでも大差ない筈だが、実際には人間はおそらく手でも読んでいるのだろう、というか2千年以上人間はそうやって書物を読んで来た。聞いた話では京極夏彦は自分の作品が本になる時に文章が頁間で切れることを嫌い必ず頁の終わりで文章が終わるように校正させると言う。これなどは今後主流になるはずのePubフォーマットでリフローする形式の電子書籍ではかなり難しい作業となる。つまり本を読むという行為が単に紙が電子機器になるという変化以上の変化をもたらすような気がする。どちらがいいとか悪いとか言うことではなく、違うということだ。

長くなったのでこの話はまたつづく・・

なるい

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成井 秀樹

成井 秀樹

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DRMソリューション、KEYRING.NETの開発およびSaaSによる提供を行う。DRMエバンジェリストを自認。

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