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デジタルコンテンツ流通の潮流を見据えて

ニューヨークタイムズとKindle DXのセット販売

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アメリカではニューヨークタイムズが既存の紙媒体の読者に対してAmazon Kindle DXとのセット販売を始めたようだ。既存の読者にこのようなアプローチがあった。ヨーロッパではIREX社の電子ペーパー端末でフランスの新聞などが同様のセット販売をしているが、今回のニューヨークタイムズの場合はより低価格でそれなりの読者を掴むような気がする。一番目のイメージが読者へ送られた広告チラシだ。Kindlenyt_4AmazonでKindle DXを買うと$499、そしてThe Newyork Timesは月額$13.99なので年契約だと$167.88、合計で$666になるのをKindle DXだけの価格$499で契約することができるというものだ。チラシには$200お得と書いてあるが詳細は不明。

次のイメージはAmazon USのサイトでのその他のアメリカの新聞の価格だ。Picture_1_3<月額600円から1200円位で購読できる。日本の高い新聞の価格に慣れている我々には大変魅力的だ。一方、アメリカではもともと紙の新聞が安いので、このKindle価格でも高いという意見はある。また内容的に、紙の新聞のすべてが閲覧できるわけではなく、例えば、グラフや表が無かったり、Classified AD(求人や貸家などの広告)が無かったりして新聞の魅力に欠けると言われたりしている。

日米の新聞業界の違いはいくつかある。広告と記事の比率、その内容、宅配の比率と宅配業者(新聞販売店)との関係などだが、やはり一番の違いは書籍雑誌と同様に再販売価格指定の有無だろう。その地域の特性に応じて販売業者は自由に価格を決めることができる。基本的には量を捌けるところはマージンを押さえて販売することができるし、逆の場合はしっかりマージンを取ることを考える。これは何事でも販売の基本の筈だが、これが書籍、雑誌、新聞になるとおかしなことになってしまう。

アメリカのこういった動きが新聞社にとって最善の策であるかは分からない。全体として価格水準が下がり、広告収入が減りといった事態は十分に予測される。だが、それでも各新聞社はあらゆる手段を試行錯誤している。その試行錯誤の自由度を日本の出版社や新聞社はどう見るのだろうか?「馬鹿なことをやっている」と言った声も聞こえてくる。本当に馬鹿なことなのであろうか?私はそうは思わない。

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