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抽象化ってどういうことなんですか?

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先日、SEプラス株式会社のSEカレッジにて「ロジカル・コミュニケーションのための情報整理術」という講座を担当させていただいた時のことです。

「グループ化しよう、というのは抽象化しろということでしょうか?」

という質問がありました。

「グループ化」というのは要するに「似たものを見つける」ということです。たとえば

「日本では、春はさくら、夏には七夕、秋にはもみじ、冬は雪など四季折々さまざまなテーマの祭りがあります」

という文からは

春・夏・秋・冬 : 四季

さくら・もみじ : 植物

といった「似たもの」が見つかりますね。こういうふうに「似たもの」を見つけて「名前をつける」、つまり四季とか植物というグループ名をつけてやるのが、ロジックを整理するときには非常に重要なので

「文章を注意深く何度も何度も読んでグループを見つけてください」

と私はよく力説しています。

と、そこに「グループ化しよう、というのは抽象化しろということでしょうか?」という質問をされて、はたと考え込んでしまいました。

確かに抽象化と言えば言える・・・でも完全にイコールでもないような気がする・・・

ということでしばらく考えまして、このほどこれに関係するあれこれの整理がつきましたのでここに書きます。

まず、この話の全体像はこんなイメージです。(クリックで拡大します)

capture181220-165314-1168.png

具体物に対して「形は?」とか「呼吸は?」といった個別属性にだけ注目するのが「①属性抽出」で、そうして属性抽出してみると「②似たものが見つかる」ことがあり、それを手がかりに「前提状況→要求事項→実装型」などを考察すると「③概念化」できることがあります。

「概念化」と「抽象化」という用語の使用実態を見てみると、「概念化」は主に③に力点のある形で、「抽象化」は①に力点のある形で使われている場合が多いようです。

ただ、どちらの言葉もきっちり定義されてはおらず、境界線がハッキリ決まっているわけではありません。概念化の意味で抽象化と言っているケースも多いので、実際にこれらの用語を使っているのを見かけたら、どんな意味で言っているのかをこの図に照らして確認してみるといいでしょう。

私が「グループ化」と言っているのは主に②のところまでで、③は含めておりません。最終的には③も必要なのですが、そこは難易度が高いので後まわしでいいからまずは似たものを見つけよう、ということです。

ではまた。

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