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「文書」を必要とする4種類の場面とは?

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こんにちは。ドキュメント・コンサルタントの開米瑞浩です。文章だらけの複雑な情報をわかりやすく書き直す技術や、それを人前で話すプレゼンテーションの教育研修を行っています。

先日、ある会社の社員が半期に一度書く業務報告書を読んで一次評価をする仕事を受けたのですが、それを読んで改めて、「報告書」に限らずさまざまな文書を書く必要があること、そしてそれを書くのが苦手で困っている方が少なくないことを感じました。

では、どんなときにどんな文書が必要なのか? そのイメージを伝えるために最近私が使っている図をお見せしましょう。

2015-1015-1.PNG

最下部の「問題のある状態」は文字通り何か「問題」がある、困った状態のこと。たとえば営業車が故障しましたとか、お客様からクレームが来たとか、なかなか商談のアポが取れない、とかです。

「問題」は解決したいですね。解決するためには、「状況を把握」して「方針を立案」して、「作業計画」を立て、図には書いてありませんがそれを実行することで、その問題が「解決された状態」になります。

というわけで、この範囲でおおまかに言って「状況把握」「方針立案」「作業計画」の3種類の文書が必要になります。

たとえば、こんなシチュエーションを考えてみてください。

あるとき、消防署に3ヶ所から同時に火災の通報がありました。出動させられる消防車は2台あります。どこにどう回すべきでしょうか? という判断をするためにまずは状況把握が必要になります。

「A地点は木造家屋の密集地帯の、しかも風上側だ。延焼すると大火災になる恐れがある。BとC地点は郊外の工場の一角、人は住んでいないし危険物もない」

といった、判断の基礎になる情報を整理するのが「状況把握」です。

次に、状況把握を踏まえて「方針立案」が必要になります。

「被害の拡大を防ぐためには、A地点に2台とも回して、BC地点には近隣消防署の応援を呼ぶべきだ。さらに連続放火の可能性を考慮して地域に警戒を呼びかけよう」

こうした方針立案を踏まえて「作業計画」を立てることになります。

「田中チームと佐藤チームはA地点に出動、橋本チームは残って近隣への応援要請と警察・行政その他の連絡を担当」

このあたりが「作業計画」です。

もちろん、これらの情報がいついかなる場合も「文書」として必要なわけではありません。一人の脳内で処理される場合もありますし、10秒だけの口頭説明で済む場合もあります。しかし基本としてこの「状況把握」「方針立案」「作業計画」の区別を知っておくと便利です。というのは、この3種類の文書はそれぞれ違う特徴があり、書くに当たっての注意事項が違うからです。(ただし、今回はどう違うかは省略します)

さらにもうひとつ考えなければならないのが、「クライアント」との関係です。
ここで言う「クライアント」は、「理解や承認を求めなければならない相手」のことで、必ずしも顧客だけでなく、上司の場合もよくあります。

「クライアント」に対しては「方針」を説明しなければならず、その前提として「状況」も説明を求められることが多いのに対して、「作業計画」は必要ないことがあります。

そこで、特に状況把握や方針立案に使う文書は「自分が考えるため」と「クライアントへの報告・提案のため」の2種類の使用場面があります。
前者の文書には情報量の豊富さと正確さが重要な場合が多いのに対して、後者の文書ではそれが逆になることが多いものです。そのため、クライアント説明用の文書は別に作ったほうがいいケースが少なくありません。

【まとめ】
「文書を必要とする場面」には大まかに下記4種類がある。
 「状況把握」「方針立案」「作業計画」・・・これらは自分が考えるため
 「報告・提案」・・・これらはクライアントへの説明用

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