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文章構造化ワーク:SSIDとは

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「複雑な情報をわかりやすく書けない」悩みを解決するドキュメント・コンサルタントの開米です。

今回は、無線LANで使われる「SSID」という用語についての説明文を見てみましょう。

【課題テキスト】
 無線LANを利用する機器は、無線LANのアクセスポイントに対して名前の通り無線で接続しますが、接続可能な範囲にアクセスポイントが複数あることがあります。有線LANの場合は「有線」ですから接続先は物理的に配線がつながっている1ヶ所に限定されますが、無線の場合は配線がないため、複数のアクセスポイントのうちのどれに接続するかを選ぶ必要があります。SSIDはアクセスポイントに付与される名前のことで、無線LANを利用する機器の側でSSIDを指定することにより、特定のアクセスポイントを選んで接続することが可能になります。

Aさんのご相談:こういった技術解説文、文章だけだとどうしてもわかりにくいので、図解を入れようと思うんですが、箇条書きならなんとかなるんですけど、図を書くのはどうにも苦手で・・・
開米:箇条書きは大事ですよ。いきなり図を書こうとする前に、箇条書きにしましょう。上の例文の中から、「これは説明する必要がある」という内容をできるだけシンプルな箇条書きでいくつか抜き出してみてください。
Aさん:うーん、と、こう・・・かな

(1) 無線LANを利用する機器からは無線LANのアクセスポイントに対して無線で接続する。
(2) アクセスポイントにはSSIDという名前がついていて、無線LANを利用する機器の側から複数のSSIDのうち1つを選んで接続を確立する

開米:おお、いいですね~。でも、(2)がちょっと長いので、2つに分解してみてください。
Aさん:じゃあ・・こんな感じ?

(2-1)アクセスポイントにはSSIDという名前がついている
(2-2)無線LANを利用する機器の側から複数のSSIDのうち1つを選んで接続を確立する

開米:そうそう、そんな感じ。できるだけ、「一文で1つのことだけを言う」ようにすると扱いやすいです。

開米:その上で、(1)もちょっと変えて・・・こうしましょうか。

(1) 無線LANを利用する機器から無線で接続可能な無線LANのアクセスポイントは通常、複数ある。
(2) アクセスポイントにはSSIDという名前がついている
(3) 無線LANを利用する機器の側から複数のSSIDのうち1つを選んで接続を確立する

開米:そして、まず(1)のイメージだけを図に書いてください。
Aさん:(1)だけですか? じゃあ・・・こう?

2015-0501-SSID-1.PNG

開米:おお、そうそう、いいですね! じゃあここに (2)を足しましょう。
Aさん:こんな感じ?

2015-0501-SSID-2.PNG

開米:おお、悪くないんですが、そのままだと(3)を書き足そうとしたときにちょっと困ります。
Aさん:(3)を書き足そうとすると・・・・・・・・・あ、そうか。じゃあ、こうすれば?

2015-0501-SSID-3.PNG 

開米:それだ! それでいいですよ!
Aさん:やった!?
開米:やりました!
Aさん:おお!!!

開米:念のため、最後の修正の意図を説明してください
Aさん:複数のSSIDのうち1つを選ぶ、とあるので、SSIDを区別しておかないと特定するイメージが出ないな、ということでSSID1,2と名前を変えました。利用する機器のほうに同じ名前を書いて「接続先を特定する」ことを示し、「つながっている」イメージを表すために、点線を実線に変えました。
開米:完璧です!
Aさん:よっしゃあああ!

【本日の要点】
■初めにできるだけシンプルな箇条書きを書く
■箇条書きの中から、全体構造を表している1つをベースにして少しずつ書き足す

最初に(1)だけを表した図を書きました。そしてそのイメージは最後まで残り、(2)や(3)はそこに加筆・修正する形で書き込まれました。こういうふうに、「全体のイメージを作る、ベースになる一文」を見つけると、格段に書きやすくなります。

そのためにも、「初めにできるだけシンプルな箇条書きを書く」ようにしてください。その中から、「全体のイメージを作る一文」が見つかることが多いからです。

(今回の記事は、技術評論社から刊行した「<文章嫌いではすまされない! > エンジニアのための伝わる書き方講座」掲載の事例を元に再構成しました)

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