オルタナティブ・ブログ > デジタルセラー中山の視点 >

デジタルでBtoBセールスはできるのか!?

IBMがPC事業をレノボに移管したときの営業としての個人的経験

»

昨日、富士通がPC事業をレノボと統合させる方向で検討している、というニュースが流れました。
各種メディアによると、合弁会社に事業を移す計画ということで、これにより、レノボ、NEC、富士通グループとなると国内シェアの40%を上回ることになるだろうというです。

このことについて論評するつもりはありませんが、IBMがPC事業を2005年にレノボに移してから早11年、ここまで環境が変わってきたかと若干感慨を覚えるものがあります。
それに関連して、IBMからレノボにPC事業が移管する際に、営業としてどのようなことを感じたのか、もう記憶が定かでない部分もありますが、すこし綴ってみようと思います。


2004年12月の発表についての記事は、ITmediaのサイトにまだ残されていました。

IBMのPC事業、Lenovoへの売却が正式決定
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0412/08/news030.html
2004年12月8日の記事です。

関連記事として表示される記事のタイトルもとても興味深いですね。
タイトルだけ下記に抜粋してみます(すべてではありません)。

・ デル氏、IBMのPC事業売却に批判的コメント
・ [WSJ] IBMとLenovo、PC事業で合弁へ。ThinkPadは継続か
・ [WSJ] IBM PCの売却先候補Lenovoが抱える問題
・ IBMのPC事業売却交渉――焦点は中国市場とThinkPadか
・PC事業売却はIBMにとって「賢明な選択」か?

わりと懐疑的な論調が多いでしょうか。
10年ひと昔とよくいいますが、IT業界で10年はかなり昔な感じですよね。
このITmediaの記事も今読むとかなり興味深く、考えさせられるものがあります。

事業売却について社員である私が知ったのも、対外的な発表でです。
このような重要な発表は、社員にもまったく聞こえてこないので、メディア発表を見てびっくり、ということになります。
PC事業売却は、やはりかなりの衝撃でした。

当時私は、お客様担当営業でした。お客様担当営業という立場で、製品やサービスを問わずIBMのあらゆるソリューションを提案していました。ハードウェアではサーバー、ストレージが中心でしたが、PCもかなりのウェイトを占めていたのです。
社内発表の際に強調されていたのは、お客様への対応はなんら変わるものではありません、ということでした。これは、対外的にもうたわれていたと記憶しています。具体的には、IBM営業やビジネスパートナーがこれまでと変わらずにご提案し、ご契約手続きができるというものでした。

私もお客様ところに伺って、その旨お話ししました。また、PCを多く買っていただいていたお客様に対しては、PC主管部門のしかるべき責任者が訪問してお客様に安心いただけるように話をする場をセットしたものです。これは、PC主管部門からの申し出によるものも多く、当時私は札幌で勤務していたのですが、労を惜しまずに来てくれました。移行がスムーズに行くように会社を挙げて取り組んでいたのではないかと思います。
PC事業に携わる社員はレノボ社に移ることは発表されていましたので、PC担当者には若干の不安もあったとは思いますが、そのようなことは外には全く出さずに、お客様に理解いただくことだけに集中していたことははっきりと覚えています。

記憶に誤りがなければ、2015年10月にレノボ社に移管されましたが、それまでも、そこから12月までも、今までとまったく変わらずにPCをご提案していました。この間に、もうIBM PCはやめる、というお客様が出なかったことは幸いでした。12月までと書いたのは、翌2006年1月に異動によりソフトウェア担当の営業となり、PCを提案する立場ではなくなったためです。

私が担当していた期間は、契約いただいたPCはすべて売上にカウントされたのでよかったのですが、移行期間を経てそれがなくなり、営業はどうやって売上を確保するか考えていくこととなります。私がソフトウェア部門に異動したことにも現れているかもしれませんが、この後IBMはサービスやソフトウェアへのシフトを鮮明にしていくのです。
なお、2014年にはPCサーバー事業もレノボに売却しています。

事実を淡々と書いただけで、エピソードと呼べるほどの出来事も起こりませんでしたので、面白くもなんともないとは思います。
ただ、ソフトウェア会社の買収を繰り返し大きくなってきていた会社が、存在感の大きな事業をスピンアウトする過程を自己の体験とできたのは、自分にとっては一定の意味がありました。

規模を追うのではなく、収益が上がることを念頭に、強みを発揮できる事業にフォーカスしていく、自分は経営者ではありませんが、営業戦略を考えていく際にも、こうしたポートフォリオの最適化ということをどこかで意識するようにはなりました。

そして、NECに続いて富士通もPC事業をレノボに統合ということに向かうこのとき、IBMの先見の明、決断の速さに、社員としては少し誇りに思うのでした。

IBM 中山貴之のWeb Page (平日は毎日更新中)

53b1db40e568bd1dafef00f61aaa2c75db51f415.JPG
Comment(0)